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会社を存続させたいですか?―オペレーショナルエクセレンス 最終回

9月中旬から始めたオペレーショナルエクセレンス特集は、前回までで「手順」のご説明は終わりました。長らくお付き合いをいただきありがとうございました。

実は私、上村は自分が勤めていた会社が消滅するという経験を4回しています。いわゆる経営破綻が2回、清算が1回、売却が1回です。このいずれでも代表取締役や取締役、CEO、あるいは経営〇〇室で役職者でしたので、いずれの責任も免れうるものではなく、「自分のせい」であるとも思っています。もちろん、当時から執着心をもって今回ご紹介のようなことや財務、あるいは営業の改善に取り組んでいて、成果も決してなかったわけではありません。それでもなお、会社が存続し続けるのは、私にとってはとても難しいことでした。そして、その最後にはいつも仲間や部下の憤りを思いっきりぶつけられました。私は、「実務・経営の経験があるコンサルタント」ではあるのですが、その実績はこのように決して褒められたものではありませんし、そのことを隠すつもりもありません。それは、「つぶしてはならない」という強い気持ちを相手に方にもわかっていただきたいからでもあります。

自分で執行することには距離を置き、よその中小企業に口出しするようになってからも、「会社がつぶれて、犠牲者がでないようにする」ことが私のこの仕事に携わる動機です。その中で正直多くの会社に対して思うのは、決して営業も財務も盤石ではないのに、なんとなく今年と類似の来年が来て、そのまま存続できると思い込んでいる経営者が実に多いということです。そんな資金計画、売上の安定性では何かが起きるとすぐに倒れてしまいますよ、と言ってもなかなか分かってもらえない、行動しない姿勢に、自分の会社ではないのに焦り苛立ってしまい、そしてまたあんな嫌な思いをしなきゃいけないことが怖くなってしまうのです。

そんな中、今年その「何か」が起こりました。人類の歴史を顧みれば「疫病」は最大の災害なのですが、それでも世界の多くのエリアで半年にわたってまともに営業ができない、ということが起きるということは私も去年の今頃は全く想定していませんでした。しかし、企業経営には、こうした大きな突発事項が起こりえます。また、こうした激変とは別に、じわじわと起きる変化も1年ごとに見ているとあまり大きな変化という気はしませんが、それを10年単位で見てみると経営計画の中ではあまりに過小評価していることにいつも驚かされます。会社はその大きな厄災があろうが残り続けることが必要です。また、10年先の社会でも生き残るために時代に合わせて変わり続けることが必要です。それなのに、人はどうしても平時の感覚で「安全」を図り、変わらぬ平和な日々にそこに立ち止まろうとします。

存続するためになぜ「オペレーショナルエクセレンス」なのか?

その中で、今回大型特集にオペレーショナルエクセレンスを取り上げたことには明確な理由があります。それは、「自社内で完結して必ず経営者のあなたの意志でできることだから」です。本当は、何か不思議なことが起きて売り上げが毎年どんどん伸びていけばそれで会社のほとんどの問題は解決できてみんなハッピーになれます。そして、高度成長期から減速したとはいえ1991年頃まではそういう時代でした。今の日本の経営マネジメントの「空気」は明らかにそのころの「何とかなる」感をまとっているのですが、実際には売り上げはもう伸びない時代に突入して30年が経とうとしています。

売上はもう昔のように「何か不思議なことが起きて増える」ことはない、むしろ放っておくと少しづつ減る時代です。その中で売り上げを増やそうと思っても、競合も頑張っていますし、顧客も購買抑制、単価抑制に必死であり、確実性をもってこれを実現できる方法論というのはない(あったらみんなやるに決まっている)のです。

同様に、「効果がある広告」も実際には誰も保証できない(何回閲覧されたかはwebではわかりますが、それがどれだけの売り上げ増効果があったかは実は誰にも分からないし、大した効果がないことが多い)ですし、画期的な技術開発も限られた資金と人材の中では決して「実現性が十分ある」経営計画ではありません。これらをやらなくてよい、というわけではありませんで、経営強化のためには様々な策を試行錯誤する必要があるのですが、実現する蓋然性は低い、見通せない策なのです。その中でオペレーションの改善だけは自社内のことなので、社長がその気になれば確実に実現できます。そして、そこで少しでも時間とお金の余裕を生み出し、それをこうした「不確かなことの試行錯誤」へ投下していかなければ、実際には中小企業にはそんな試行錯誤の余裕もない低利益率のまま、危機に瀕することになります。

だから、最初にやるべき改革は「オペレーショナルエクセレンスを目指すことである」というケースが多いのです。

失敗を重ねる気概を生むものは何か?

変化を取り込み先頭を走るには、多くの情報収集と学習、たくさんのお金にあまり響かない失敗が必要です。こうしたビジネスバイタリティのある人間はどうしたら育ち、得られるのでしょうか?逆に言えば、「言われたことだけを時間内いっぱいかけてきちんとやればよい」と思っている人はなぜこうなってしまったのでしょうか?

これはこれまでの教育環境や経営者や上司がそのように強制してきたからそうなったのであり、あなたを含めた経営者の責任でもあります。特に多く目につくのは、「正解でなければ不利益を被る」という学習が染みついていることです。経営では多くの問題で正解は分かりませんし、見えている正解とは異なる方向へ突っ走っても、それが別の正解であると暫くしてからわかることもあります。大事なのは、正しいことではなく、どこかへ行きつくまで走り続ける強さです。よく例えるのですが、同じ3日後に同じ到達点に立っていたとして、1回でそこに到達してそこにとどまっていた人と、99回失敗して最後の1回に到達した人は、結果、つまり評価は同じです。では、どちらの方針がより到達点に至る可能性が高いか?というと、並みの人にとっては、明らかに後者の方が実現する確率が高いのです。不格好なものが出来上がろうが、あるいは周囲や多少は顧客に迷惑を掛けてすら構わないから、「できないこと、知らないことをやってみる」ことが「いいね」と言われる環境と制度を用意することは今の日本の経営者の最も大事な仕事なのではないかと私は考えます。逆に言えば、守旧の人を高く評価してはいけない、その仕事は安定していて変える必要がないというならば、機械か外注に移してしまえばよい。

「視点を変える」指示の仕方

もう一つこの関連で、経営者の社員への誘導の仕方で特に顕著に目につく問題があります。それは、「全員が全部の業務で2~3%改善しろ」という指示の仕方です。指示の仕方というよりも経営者自身がそう思っているというのが実情でもあります。それを今日からこう変えてください。

「一年で全体の20%の業務に対して50%生産性を改善しろ」

この言葉には2つ意味があります。一つは2,3%の改善なんて競合や市場の変化に飲まれて給与の改善にはつながらないレベルである。あるいは金利が上がれば、そんなレベルの改善に投資はできないということです。

もう一つの方がより重要であり、「一部でよいから、今までとは違うレベルの生産性を実現しろ」という命題が、今までのやり方の改良ではない、技術革新や自動化の必要性を生むということです。

なぜ、日本のオフィスのIT化が立ち遅れているのか?ということの理由は、経営者が「人を減らして自動化しろ」と命じないからです。逆にこうした経営者の下では、事務作業のできる人よりも、自動化工程を設計し実現できる人が社内に必要になります。そのような人材を常駐させる必要があるような状況にならないことが、日本で低効率の大手SIerが失敗プロジェクトを多数産む土壌になっているのです。多分こうした指示の仕方をすると、「プログラムのできる人が社内に必要」というような結論にいたります。「システム構築は外注するもの」というのは日本だけの誤った常識であり、日常のものは中小企業でも企画や設計は内製化するのが他の国では普通です。その辺も「日本の経営の常識が間違っている」点です。

このシリーズで見てきたように、オペレーショナルエクセレンスの実現を阻む最大の障害は、「人の感情や言動」です。経営に携わると、それまでに比べて「ひとはいかなるものか」について思いを巡らせる機会が多くなるものです。その中で、決して言っていることをそのまま信用せず、能力や日常の活動速度をベースに期待できる範囲を判断する、という醒めた目がなければ構造変革は成し遂げられません。ひとは事実ではなく、「こう思われたい」ということを口にするものであり、「頑張る」という言葉だけでは、結果はでないのです。しかし、その一方で、失敗を恐れないどころか楽しんでしまい夢中になって試行錯誤するような時間や仲間が、会社が変わる過程では社内に時々見受けられるはずです。それもまた人というものの尊さであり、会社経営の面白さでもあると思っています。私自身、こんなに失敗を重ねてもそれでも経営に興味があるのは、そういう「人が輝く瞬間」が好きだからです。

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