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チェンジマネジメントの遂行管理は「指示の仕方」が8割

 中小企業の社長の戦略の立案と遂行のサポートをする、という事を続けているとそのうち、社長が指示したことのフォローまでしていることがあります。変えることの大変さは、「企画すること」ではなく、「遂行すること」にあります。そのためには、弊社が社長の機能拡張パーツであることは仕方がありません。

 中小企業では、何か新しいことに取り組もう、変えようとするとその指示の出元も、チェックと判断もすべて社長、ということに、特に初期にはなってしまうことが通例です。
 本当は、初期段階からビジョンを共有し、その分野で実力のある若手に権限移譲して…という事ができればよいのですが、中小企業はそうした組織構造ができていないから中小企業のままなのであって、そこを突破するには、社長かリーダー社員化に突然変異が必要です。社員に変異を呼び掛けても、そう簡単には変わらないので、社長が自ら行動を開始して、ついてこようとする社員をピックアップするしかありません。

ところが、当たり前ですが、「変える」ために基本的なデータ提出や作業を指示すると、それは大抵は今までにやったことがないことです。今までにやったことがないからやりたくないし、わからない、だからやらない。その循環をたたなくてはならないので、「社長の指示」としてやるしかありません。そして、その結果、こんなことが起きます。

  • データがないと数日たってから報告してくる。ないのは分かっていて「作れ」と言っているのに。
  • 何とか集めたデータも、「判断するためのデータ」が収集されていないし、データの精度も目的を理解していないので作成されているので必要なものに達していない。
  • 期日が迫ると、項目的に「近いもの」を出してくるが、すぐに利用できるようなデータ形式になっていない。どこかからダウンロードしたまま。
  • 言われた項目が項目名だけに近い状態で書かれているが中身がない状態の報告書が出てくる。
  • 利益云々の意見ではなく、面倒だからやりたくない、という気持ちが如実に現れた意見が出てくる。
  • 「あとは自分で考えて」という感じで写真だけが大量に送信されてくる。

 そうそう!あるある!と思った経営者の方も多いと思いますが、これは当然のことです。社員が20人いれば、そのうち、1人が社長の意図をわかってくれればいい方でしょう。他の人は、大抵「日常の自分のタスクをこなして、早めに帰って、給料がもらえればよい」とおもっているし、そういう組織にしてしまったのはほかならぬ経営者自身で、自分の築いた組織の良性の(はずの)「安住感」に復讐されているのです。

「どうすれば意識改革できますか?」という事はよく聞かれますが、①外部から意識改革できている人を連れてくる。②20代を抜擢するのどちらかをお勧めしています。基本的に人は変わりません。その変わらないことを前提に使わなければならない際の実用的な方法を考えましょう。

1 何かを依頼する時には、十分細分化して、伝えましょう。そして、それをどういうものを求めているのか?「スケルトン」「雛形」を実際に自分で作って、具体的に依頼しましょう!

 まず、全然違うものが出てきてしまうという問題に対しては、日ごろ慣れている業務では以心伝心的な対応ができたとしても、新規事業や変革に関してはそれは効かないと覚悟して、あとは調べて埋めるだけ、というところまで、半ば自分で作ることが必要です。項目はもちろんですが、データソースや単位、計算方法などを全部教えないと結局2度手間になります。
 だったら自分でやってしまった方が早いのですが、社員を改革に巻き込む、という意図がある場合は、たとえ試行錯誤することになったとしても、このようにすることが「必要なプロセス」であることが多いのです。

 そして、そのためには、一つ一つのプロセス、依頼範囲が比較的小さく、その期日も1,2日程度の短いものであることが重要です。もし、2日以上になる場合には、中間チェックで違うことをやっていないかを確認することは重要です

 結局、部品を細かくして、その部品の品質を良くしていかないと、全体の品質はたくさんの部品のうち、一番品質の悪いところによって決定されてしまいます

2 いつまでに誰が何をやるかを可視化する

 もう一つ、重要なのは、遂行管理です。依頼したけど、依頼された方は「日常作業で遅れています」と言い、依頼した方は、依頼したことも忘れている、というようなことが特に「社長のミッション」では多くみられます。経営者が誰に何を依頼したか、は中小企業では(秘書もいませんから)他の誰も知らないでいますので、まず自分で管理する必要がありますし、プロジェクトの進んでる感を出すためには、これらが可視化されていることが必要です。
 この管理をEXCELでやっている会社もありますが、ちゃんとやると大抵翌月には破綻しています。具体的には、結局全員で長時間ミーティングして一個一個更新して、その場で「次は何をする」を書き込み、その追記によって行の高さが限界値になり、全体が見えにくくなっています。 Excelで、文章を表形式にしても、使いにくいことは経験があるでしょう。

1で依頼サイズを十分小さくするように言いましたが、その時には、その次には何をやり、何と合流して、何を判断する、というようなプロジェクトの進め方が依頼する経営者の中にはすでにあるはずです。それをあらかじめ形にしておくことが重要です。これを見える形で依頼することが重要です。これを実際に実現するツールとしては、(無料でも使えるものとしては)Trelloが代表的で私も愛用しています。

3 「こっちはやらないで、これをやれ」と明確に指示する

通常、こういう組織で担当者に依頼すると、ちっちゃなことでも2日、そこそこの規模だと1週間かかると回答してきます。この「週間単位で考える習慣」こそ、変化のためには打破しなければならないものなのですが、そのためには、日ごろたくさんやっている「お金を生んでいない作業」をやめるという指示が必要です。多分、会議の半分以上はいらないし、報告書作成作業の半分もいらないでしょう。結果も出ていないのに、日報を書くのも悪習です。(結果を分析するのは必要なことですが)。そういうのはやめてしまってよいから、これを見積もりの半分の時間でやれ、と言えるのは、経営者だけです。

いかがでしょうか?

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