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「高い技量」で人を選ばない理由

先日、ある顧客のweb関連業務でページ作成の外部スタッフを登用することになりました。私のところに、人材系の協力会社から候補者リストをいただいたのですが、高い技量を持つと一目でわかるAさん(男性、20代)と、技量はAさんほどではないBさん(女性、40代)とでどちらを起用するかという局面がありました。単位生産量当たりの費用面では両者は大きな差はありませんでした。もちろん、当初のアウトプットは、Aさんの方がスピードは上でしょう。

経営者からは、選定と遂行管理を私に任せるというお話があったので、私はBさんの起用を決めました。実力主義の信者と思われている私の選択として意外でしょうか?実は、合理性を徹底的に考えてこの選択にしました。


 Bさんにお願いすることにした理由は二つあります。
 一つ目は、このサービスのターゲットセグメント(ペルソナ)に対してBさんの属性がピタリであったこと、そして、対象サービス群にBさんが「当事者として関心がある」と事前にコメントしていたからです。

 納品物を素早く、小ぎれいに作るという点では、Aさんの方が失敗は少ないので、私が、WEB製作会社の営業だったらAさんを選んでいたでしょう。しかし、今私がやらなくてはならないのは、対象サービスの売上を伸ばすことであって、ページを最小コストで納品することではありません。
 対象サービスの売上をどう伸ばすか?というときに必要なのは、「センスのいい小ぎれいなページ」ではなく、そのページを見たターゲットの直感的な「納得」そして「共感」を得られることですし、そもそもそこに行きつくのに、「何で検索するか?」です。そこを追求していくのに、適したパートナーはBさんである、というのが私の考えです。

 2つ目の理由は、生産性をあげる仕組みを作るのに、実はAさんよりもBさんの方が良いパートナーではないかと考えたことです。たしかに、短期的・直接的な生産性という点ではAさんの方が確実で、Bさんでは経営者には不安が残ります。この業務は今後数百ページにわたり制作が行われる計画があるため、わずかな生産性の差でも大きな時間とコストの差となってしまうので、初期の見誤りは大きな失敗になりかねません。その点については、次のように考えました。

  1. そもそもこの業務を「高度な技量を要する業務」には仕上げない。世の中にたくさんいるレベルの技術を持つ人の中から、今回のようにマーケット的に適性のある人を必要に応じて複数人登用して短期的に実務開始できる業務にする。だから、「誰にもできない高度なこと」「独自のセンス」は排除する。
  2. 生産性は、個人の技量ではなく、仕組みとしての分業と標準化で実現する。すなわち、基礎調査、データ整理などの地道なデータ収集と、美観を求めるページ作成の担当分離や、ページ構成の標準化と流し込みツールの用意などで行う。

 ともすると、「高い技量」を経営者は選びがちです。しかし、事業を拡張するには、5人体制、10人体制で同じことができる仕組みを用意することが必要であり、そのためには「誰でもできる仕組み」の中で、「粘り強く基本的な営業を続ける」チームを作る必要があるはずです。webサイトの場合、それは写真の加工や、タイトルや文章の細かな改善などの作業です。その点で「当事者意識」のある「普通の人」を選ぶというのが、弊社が立てた戦術です。

 事業会社で1億円ならば天才の個人力で作れても、10億円はそうはいきませんで、組織で遂行するものです。そのモードチェンジができない中小企業(このクライアントはそれよりはだいぶ大きいのですが)は、多くあります。最初から、拡張可能な仕組みで事業を構築するためには、当事者意識があり、ターゲットに近く、標準的な技量を持つBさんの方が適任だ、と私は考えたのです。

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