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営業とマーケティング スモールビジネスとベンチャー

 私事ではあるが、きぼうパートナーは、創業2年半、個々の顧客の財務や営業の仕組みを作ることを手作りで一つ一つ対応してきた。もちろん、これは私にとってもとても勉強にもなったし、人脈や信頼を積み重ねることができたとも思っている。こういう仕事の仕方を「スモールビジネス」と世の中では呼ばれることが多い。
小さくても強いビジネスはあるし、小さいからこそ、品質の平均水準は維持しやすいという面もある。それで事業が中長期で持続可能であり、数は少なくても、その少ない顧客にきちんとメリットを感じてもらえているならば、スモールビジネスとしてのありかたは非難されるようなものではない。

 日本の中小企業の大半は、スモールビジネスである。日本では従業員10人未満の法人が全法人の3/4を占める。個人事業主形態を入れれば、この割合はもっと上がる。
スモールビジネスのオーナーは口では「新規事業で拡大を」「大口の顧客獲得をテコに上昇トレンドに乗りたい」というものの、実際にはやることはいつまでも変わらない。だからよほどのことがない限り、結果も変わらない。少しずつ大きくなる法人が少しと、少しずつじり貧になる法人がうんとたくさんあり、スモールビジネスはスモールビジネスの中で、新しい参入者が生まれ、それなりの数が毎年淘汰されていく。

 これに対して、「ベンチャー」「事業家」と呼ばれる人達は、アイデアや技術を核に、世の中に大きく展開し、やがては売上や雇用を大きく拡大することを目指そうと考えている。言葉の定義にそういう意味があるわけではなく、その傾向があるという話である。
現時点での人的資源管理や財務管理だけを外部から見ていると実は状況は「スモールビジネス」と大して変わらないのだが、考えていることは全然違う。この二つは混同されることがあるが、目指す世界が違うだけでなく、アプローチも全然違う。
 そして、ベンチャーは大部分が比較的短命で消え、ごく少数が大成功をおさめ、歴史に名を遺し、一部は、スモールビジネスとして存続し続ける。誰しも社会的に死にたくはないし、その際の迷惑を考えると躊躇する「良心」もある。それもまたスモールビジネスのオーナーがベンチャーになり切れない「常識人」でもあることの証明でもある。世の中の多くの人が便利になるサービスを広めることは賞賛されることだが、ベンチャー的であること自体が賞賛されるというわけではない。

 きぼうパートナー自身も、実はハンズオンでのコンサルティング事業は、ビジネス展開のベースを作るための手段であり、そのうえで、とあるサービスの構築を目指しているベンチャーだったはずなのだが、御多分に漏れず、目の前のお客様への対応(これが面白いのだ)に夢中になって、「世界征服」の夢がおろそかになっていた。

 そのハンズオン事業の中で、歴史ある、基盤のそれなりにしっかりしたスモールビジネスをいくつも見てきて、売上増、事業革新を伴走して実現しようとしているのだが、やはり、そうした事業主たちもスモールビジネスに慣れてしまうと、ベンチャー的行動、強烈な市場志向、拡大意識を組織としてとることができなくなっているという様子をいつも目にする。それは経営者だけではない、いやむしろ経営者が目覚めようとしても、社員の方がもっと変わらない。その現状維持思考は経営の様々な側面に現れるのだが、特に顕著に表れるのが、「営業」に対する考え方である。

ベンチャーでは、自分たちのアイデアや技術に対して、ある一定のマーケットのニーズ(ペインという言い方を彼らは好む)はあるはず、という仮説を元に、それを顕在化させ、そして適用し、解決する方法を用意し、小規模なテストと改良作業を行う(最近はこれをPMFと呼ぶ)。その段階で、サービスやその売り方を洗練させることができたと思えれば、そこからはお金をかけて大胆にアクセスを踏み込む。営業体制や広告、あるいはサービス提供のための設備投資などである。
 もちろん、営業が無力というわけではないのだが、そこには、確実にマーケティング志向が存在し、ターゲットに対する製品、価格、販促や流通策のMIXの同時遂行が明確に意識されていることが通常である。まあ、今持っているチャネルや認知がないので、それらをつくるためにはそうならざるを得ないし、それすらなければ、早々に失敗してしまう。

 ここの手法では、本当に一定の市場シェアが実現すれば、企業規模と結果としての事業価値は相当大きいものになる。ただし、実際には苦しみぬいて見つけた手法もまた、あてが外れることの方がはるかに多い。
 その成功の可能性を見込んで、つまり1%の確率で1000倍になって帰ってくるか、5%の確率で10倍になって帰ってくるが、94%の確率で0になるというようなことにお金を出してくれる人がいて、この人たちはベンチャーキャピタルと呼ばれる。銀行はこんなことにはお金を貸せない。

 本来ならば、このマーケット志向の取り組みはMBAの教科書に書いてある「基本」であり、スモールビジネスでも同様のはずである。むしろ今ある事業の生み出すキャッシュと銀行の与信を利用できる分、ベンチャーよりもはるかに有利なはずなのだが、実際にはスモールビジネスの多くはそうなっていない。自分の目の前の顧客、紹介を受けた顧客を個別撃破し、少しずつ積み重ねていく。その一個の顧客を獲得するために、見積もりを個別対応し、さらにはサービス自体も個別対応する。それが当然だと思っているし、もっと言えばそれ以外のやり方を知らない。
 それ以外のやり方をやってみても、当初は費用はずっと先行してしまうし、試行錯誤も続くので、効率指標は当面悪いため、ちゃっとやってはすぐ結局元の個別撃破型に戻ってしまうが、それではなかなか成長しないので、「少しずつでも成長すればよい」と自分を納得させてしまう。しかし、獲得するのと同じくらいのスピードで顧客は失われていく。それは市場には競争があるし、市場が縮小傾向にある以上、顧客自体も淘汰の波に洗われていて、消えていくからである。

以前、「オペレーションリサーチ特集」でも何度か言及したが、そもそも日本のスモールビジネスは利益率が低すぎるビジネスを放置していて、その余資では十分なチャレンジができない状態である。それを経営者もわかっているので、成果が見えないとすぐにアクセルを緩めて、守りに入らなければならないという意識が強いのである。

ベンチャーからすると、この状況はホントうらやましい。

ベースとなる売上でとりあえず来月の資金繰りは心配せずによく、それなりに知識と業務スキルのある社員が既にある状態、そんな状態から考えることを始めることができるなんて、ベンチャーにとっては夢のまた夢である。

最初に戻って、弊社の話。

これはそのまま、自分自身への批判でもある。このままではいつまでたっても、スモールビジネスのままである。スモールビジネスの人に、マーケティング思考をを取り入れて、成長を取り込むことを提案している自分がこれでは説得力がない。

2021年はこの状況を変えていくことにした。詳報は後日また、こちらでお知らせすることになるでしょう。

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