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「データ」はやっぱり大事!でも…

最近、「データの大事さ+α」を痛感する出来事が2つほどありました。まずはその出来事の紹介から

Episode1 大事なのは「知っている」ことよりも「データを見て知ること」

これは弊社の今年最大の失敗でしょう…。お客様の厚情に救われた部分でもあります。

とある会社で物流オペレーションの改善に取り組むことになりました。販売促進や利益やコストの管理には自信のある弊社ですが、倉庫内の人の動きの改善や道具(マテハン)、あるいは倉庫管理システムなどは実は過去に一例も実績がありませんでしたので、古くからご協力をいただいていたこの分野の専門家をお客様にご紹介し、プロジェクトを先導していただくことを企図しました。

しかし、いろいろなやり取りののち、この専門家の提案はお客様経営陣にて不採用となってしまいました。理由は「何をどのように改善するか」について現場見学だけでは一般論しか提案者が話せなかったため、経営者に「改善できる」という具体的見通しを与えることができなかったからです。ご提案いただいた会社にも、プロジェクトの進め方が悪くてご迷惑をおかけしたし、お客様には時間を取らせて恥ずかしい思いをしました。いや、始まってしばらくしてから実はこの失敗に気づいていたのですが、「その筋の専門家だから何とかしてくれるだろう」という私らしくない期待をしてしまい放置してしまったのです。NDAを結んでデータ分析をして提案をする、ということを言おうかとも思ったのですが、そういう感じの人たちでもなかった…

というわけでその間、私は…この会社では商品コードや分類コード、メーカーコードなどの整備状況があまり良くなかった(これも今改善中です)のですが、受注データを10万レコード(直近数か月分)ほど拝見して、これを手作業で全て集計し直し、何がどのくらいの頻度で出荷されているのか?や1回あたりの品目数や数量の分布、何アイテム程度が実質的にピッキング対象となっているのか?小ロット販売の利益への貢献と作業とのバランスなどのデータの整理をやっていました。各種の分類コードを振り直すところから始めて、あちこちに散在する売上、原価、在庫、そして発送費のデータをVlookupで結合して…ですので、結構面倒ではあったのですが、こういうのは得意です。そもそも、このお客様に限らず、中小企業では「使えるデータがある」なんてことはまれであり、こうした変革の根拠とするデータは自分で手で作らなくてはいけないし、精度は限定的であることを承知で使うものであることは、物流も他の変革と同じでした。

データが明らかになり、レポートを数回に分けてするにつれて、実は、「何を作業場の近くに置くべきか」「在庫補充のスピードはどのくらいが必要でそのためにはどのような配置がよいか?」「どのようなピッキングリストの帳票レイアウトが必要か?」などの基礎的なことは実はそこから次々と「当然の結果」が導き出せるものでした。そう、ここまで自分がやってから、そこから先を依頼すればよかったのです。

そこから先とは、陳列を高密度化することやラインを柔軟にするための道具を「カタログ」から探して負担軽減のための動作マニュアル化することなどです。

結局データをきちんと分析すれば、「大まかな構造」はその中に答えはあったのですが、そこを当初の私は「未知の分野への恐れ」を感じてしまい、深く入り込まずに、「専門家」に投げてしまおうとしていたのです。昔ならばそのやり方で「過去に実績があるからこの人に任せよう」という判断もありだったと思うのですが、現代において、ちゃんとした経営者を説得するには、そうしたデータを整備し、それに基づく提案が必要が必要だったということです。ちょっと自分の弱さが出てしまった、と反省した出来事でした。

Episode2 データは何のため?

上の例の続きです。ジャンルや商品コード、色コードなどが体系化されていないだけでなく、粗利管理、在庫管理、原価管理なども販路毎、調達先ごとにバラバラ…というのは、別にこの会社に限らず中小企業では珍しくないことです。一応私、20代のころは上場家電店でこうしたPOSシステムにまつわるデータ設計などもやっておりましたので、この辺は得意ですので、どうすれば一元管理し、更新手順を整理できるかはお手の物です。

問題は、その先にあります。実は私がそんな偉そうなことを言わなくても、経営者も担当部門の責任者もそんなことが世の中で行われていることはわかっていたはずです。この担当の方、相当賢いです。それなのにこれまで実現していなかったのはなぜなのでしょう?

それは怠惰なのではありません。少人数で事業を推進する中で、事業責任者の優先順位は①日々の出荷と②仕入れ、それに③価格調整を確実にこなすことであり、彼自身は賢明であるが故にそれを勘(あてずっぽうではなく、過去の経験からの判断)で行っても概ね正解に行きつけたのです。「自動化」のための設計と企画を行って投資稟議を上申するということがこの会社では従来評価されてこなかったという「社風」の問題もありました。

幸いなことに売り上げは人気商品を得て伸びていたので、この①~③の3つをキチンと行うことで大きな問題は表面化しなかった。部下の残業も抑制することに成功していた。EC事業において大事なのは、「検索に引っかかること」「在庫があること」「他社より安いこと」の3つです。この3つを徹底できれば、あとはできるだけコストを掛けないことが正解である可能性は高く、短期的、局所的にはこれが最適だったのです。逆にもし、仕組みも作らずに商品コード体系だけを複雑化していたら、残業は増え、集計は手作業で毎回違算がでていたことでしょう。彼の「見送り」という判断はそれを踏まえたものだったのです。

ところが、どこの馬の骨ともしらぬ「コンサル」を経営者が連れてきて、手を突っ込み始めたら、「追加で少しづつしか良くならないこと」のために、膨大な手間を掛けなければならないようなこと(データ管理体系の整備)」が必要だと言い出したので、自分は与えられた責任を忠実に果たしているつもりが困ったことになったと思ったことでしょう。

何がこの違いを生んだかというと、「事業のビジョン」を経営者が最近になって変えたことが、事業責任者やその部下に十分浸透していなかったということです。

具体的には、経営者は、「今後毎年売り上げを大幅に伸長させる(そのために広告も商品数も大幅に増やす)」「ただし、人件費は必要最小限しか増やさない。それは自動化要素を増やすことだし、需要変動に対応した人的配置も行うことである」と思っているのですが、担当者は、現状での現有人員での最適化を目指していました。その経営者の視点に立った時には、データ管理の仕組みを自動化し、判断と変更すら自動化するためにコード体系の見直しが必要になっていたのですが、そこの「ビジョン」の共有、そのビジョンに基づく行動計画の立案と共有という点が浸透していなかったためにこのような差異が生まれていたのでした。

「どんなデータが必要なのか?」は、どんな事業ビジョンを実現しようとしているのか?それをどうやって実現しているのか?に従って決まる事項です。この場合、「データ整備をしろ」という指示だけをするのは、危ないマネジメントで、きっとうまくいきません。在庫回転率や売れすぎを商品別、分野別、メーカー別に判断し、対応を半自動化できる仕組みを作って、それに基づいて、商品政策も物流合理化も比較的短い周期で修正し続けることで、限られた在庫で利益を伸ばしながら、商品数を増やし、効率の良い広告運用を実現する。これによって売上、利益を伸ばす。という具体的イメージが共有されていることが必要なのです。

この経営者の方もそうですが、最近の若い経営者は、「データ」と「論理」に基づいて「きちんとした判断」をできるだけしたい、という方がずいぶん増えてきました。これには、長年これができない上司に苦しんできた私は「人類の進歩」を感じているのですが、それに伴い、「ビジョン」の明確化と浸透ということが重要になってきます。

データは判断を導きますが、人を動かしてはくれないのです。

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