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終わりなき改善の道―オペレーションエクセレンス⑭

前回は「できない人」への対処について「暴論」をぶたせていただきました。公開後は結構なアクセス数でして、身の危険を感じておりますww

前回合わせて取り上げるつもりで、これについて言及を漏らしていました。

19 余剰となった社内リソースで最適化した工程への配置から外れた人は、いったんは非専門性の業務の派遣、外注の廃止と内製化に回す。(派遣・外注の廃止)

読んでその通りです。(翻訳、プログラムのコーディングなど専門性の高いもの以外で)派遣社員がやっている業務のうち、本来の業務の進行や品質にクリティカルではない(良くない言い方をすれば雑用)し、専門性もいらないものをやっているというケースが実際には多くあるようです。これらは廃止できるはずのものも多いのですが、それに抵抗があるならば、派遣契約を終了させ、社員に内製化してください。これは前回の「仕事がないと放置しろ」よりもだいぶやりやすいはずです。また、乱暴な言い方をしますが、そのための「派遣」契約だったのですから。

いったんこれで収支は改善します。そして、もう一つの意味は、「雑用は派遣にやらせればよい」という日本の新しい常識(昔は雑用は女子にやらせればよい、でしたがそれが使えなくなり男性優位社会を既得権益とする支配層の中ですり替えただけです)を壊し、「そんな係はいらない」へ移行するということです。この「使えない」層は実は男性が多いはず、多分半分以上です。それでも「雑用」に回してしまえばよいのです。

残りの業務への対処

オペレーショナルエクセレンスの次のトピックスに移ります。

20 売上の残りの20%(業務量の7,80%)を占めるものを上の流れで大幅に改善できそうで、かつ価格改定できるものと、他社に有償譲渡等して廃止するものとに分けて実行する。

このシリーズの最初の方(掲載したのは9月28日)で、21個の命題のうち、最初の1個はこれでした。

1 業務のうち、売上の80%を生み出す上位のものを洗い出す。(おそらくそれは全業務量の2,30%)

そして、この80%の改善を徹底的にやる、ということをここまでやってきて、概ね整理をつけたわけで、その間放置されていた残りの20%に対処する時がやってきました。

残りの20%のうち、結構なものは、幹の部分の80%と同根だが便宜上別にしていたようなものも多分あったことでしょう。最初にざっくり分けたので、今見直してみると、「あれ?これ別の業務にするのが適当なんだっけ?」みたいな議論がでてくるものが多くあるでしょう。それは自然なことだと思います。そういうものは、「あそこで用いた手法を適用すればこれも自動化、整理できるよね」という箇所がすでにある状態になっていることでしょう。

一方で、「なんだこりゃ?」と久しぶりに見直してもやっぱり言われてしまうような業務も残っているわけで、当時は「自分がとってきてやったんだ」とばかりに威張っていた営業もこの数か月の社内の空気の変化に、その業務が処断の対象として見つけられないことを心の中で必死で祈っていることでしょう。

基本的はそうした業務は社内に残す意味はありません。本流の業務の「枝葉」の整理の個所でも述べましたが次のような対処になります。

  • 本流業務と同じ形態で顧客に渡し、顧客側で加工(値下げ)
  • 上と同じ形態で他社に提供し加工は他社で行う形で業務を譲渡・売却
  • 廃止

営業は2番目を選びたがるでしょうが、顧客は実は1番目の方がいいことも多い(費用が下がるので)のも以前お話ししたのと同じです。ここで重要なポイントがあります。2,3を選ぶかどうかは、理論的には、その業務が、たとえばデータベース整備や設備投資などの80%の業務との「共通インフラ」整備関連費用と、加工販売のための「追加的な限界費用」がどのような割合であるのか?と深い関係があります。実は、こうした「小型業務」も分析してみると、ほとんど共通費用で、追加的な加工費用は小さい場合は、その業務を失うことによる売り上げの減少は費用の節減を大きく上回ってしまうということが多くあります。

このようなケースでは、この「一見合理的な」話を重視して判断すると、結局短期では「何も変えない」という結論になります。そして、「枝葉の業務は増やすことが最適」という方向へ進み、再び社内は複雑化の道を歩み始めます。これは、「人件費」「設備投資」は「固定費で変えられない、減らせない」という立場に立っての判断であるわけですが、中期的な企業構造という観点から「減らせる」費用ととらえると結論は変わってきます。製造業では製造設備費用(5年程度以上のの減価償却が発生していることやリース契約での支出が確定していることが多い)の占める割合が大きいケースが多いですが、その他の産業では、多くのケースで圧倒的に人件費の費用に占める割合が大きく、その次が業種にもよりますが賃料というケースが多い中で、この二つは、「2,3年のスパンでは変動可能、除去可能な費用である」という立場に経営者は立ち、それが可能な事業の仕組みを多く組み入れないと「構造調整」という選択肢は取れないのです。そして、この2つが「変動可能である」という決定ができるのも経営者だけで、他の中間管理者にはできないものです。人件費を固定費ととらえる日本の伝統芸は現代において時代遅れになりつつあるのです。

また、どうしても利己的な「個別対応」をやめさせることで、結局ベース商品の競争力を強化する(枝葉を切り落として幹を太くする)という方向性を社内に示して実際に実行していくためにも、ほかにもそのようなニーズがあると思うならば「本商品に機能を追加して、業務を廃止」を第一の選択肢にし、それをプロモーションのポイントにし、個別の顧客のことをいうだけではなく、訴求可能な新市場に徹底して訴求させるという一連の動きを指示することが良いのではないかと私は思っています。そういう「面倒なこと」を要求されて、取り下げるような営業の要求はそもそも考慮に値しないことです。

このような判断基準を設けると、多くのケースで残りの2割の業務は、一部は8割の業務に統合され、そして多くは自然となくなっていくのです。その間、売り上げは最大1割程度減る可能性があります。しかし、人件費は残業代と人員の「自然減」(と言いつつ嫌なことをしてしまっていますが)でそれ以上に減り、品質改善で手戻りやクレームは減る、利益がでて、採用から実践投入までの期間は短くなり、主要なポジションの給与は上げられるので、より良い人材が外部から応募してくるようになる、という状況が実現できるはずなのです。

「持続可能な」の実現

大きな試練を乗り越えて、新しい、より望ましい安定を手にして会社は平穏を取り戻すことでしょう。

「成果主義」がギスギスした人間関係をもたらす、と懸念する人も日本には多くいますが、中国の職場がみんなそうか?というと、上司への部下からの評価をめぐる合理性・説明責任の要求は激しい傾向にありますが、職場の教え合う、助け合う光景は別に日本と変わりません。というか日本がそれほど「協力的」だとも私には見えません。部門のミッションの達成のため、協力しあうのはどの国でも普通に見られます。そのような批判は「毛唐を恐れる」無知に近しいものです。

これで一件落着。創世記のノアの箱舟は長く続いた大嵐の後、新天地にたどり着き新たな人口増が始まるのですが、そのスタート点に立った、と言えるとよいのですが、そうでしょうか?安定した経営状況が続くならば私の仕事はここまでなのですがそうはいかないのです。市場では顧客のニーズも、使用可能な技術も常に変わり続けます。競合も自社を見習い強化を続けています。

社内だけを見ていても、今回は力業で改善を進めましたが、それでもやっぱり細かなミスは発生します。また、やっているうちにもっと改善できる手順は見つかるはずです。けれども人間というものは、それを取り込んで工程を改善しようとはせず、ミスがおこり、不便な工程を明日もまた繰り返そうとします。「なるべく考えない」「今の作業を減らす」ことを選ぶのが人間というものなのです。

だからこそ、最後、21番目の命題はこれです。

21 上の流れを毎年1回程度最新データで見直す。手順は3か月に一回アップデートする。アップデートへの貢献は評価する。

改善義務が制度としてあること、そして、ミスが起きたら、「改善策を提出すること」や「手順書を見直し書き換えること」「手順を改善すること」を制度としてルール化し、業務時間の計画にも明示的に盛り込むことが必要なのです。これは、たとえば、四半期の末尾の平日午前3日間をこのためだけに確保して、事前に計画を出させる、というように「義務」だけでなく、「時間の確保」もルール化してください。そして、やった結果を必ず全部提出させチェックしてください。そうしないと、結局後回しや、「やったふり」になります。これだけは「残業命令」しても必ずやらせる、という姿勢を徹底し決して逃げさせないでください。

その際にも以前の繰り返しになりますが、「費用対効果」の視点は必要です。目的は「クレームを0にすること」ではなく、「費用を減らし売り上げを増やすこと」です。費用の減らないクレーム対策はやる必要はありません。

また、業務全体の構成見直しは四半期ごとは大変すぎますので、毎年一回程度行うことにします。今回、1では「社内のデータ整備が行き届いていなければ、とりあえず手作業でいいから、売上だけでいいからリストアップしてみる」というところから業務を整理しましたが、次は、「業務コード」、「部門別業務別(商品別)採算」の集計の仕組みを作る余裕があるはずです。

オペレーショナルエクセレンスを実現するうえで何が一番大事かといえば、「個人の情や世間の古い常識ではなく、「利益」という数値を基準に全員が行動することです。そのためのデータ管理は非常に重要であり、同時に、「データに基づいて判断する」「過去ではなく、今から先の利益への貢献で評価する」ルールを管理者を中心に徹底する必要があります。必要なのは主観的な「意見」ではなく、「根拠となるデータ」です。そこで初めて「どのような会計データの管理が必要なのか?」「それをどのようなスピードで集計することが経営的に必要なのか?」という「会計管理」(多くの場合、システムの話ではなく、社内の管理のコード体系や入力フローの話なのですが)が意味を持ってくるのです。

というわけで21個の「オペレーショナルエクセレンス」実現のステップをここまでご説明してきました。いかがだったでしょうか?なるほどと思ったが、自社でどうすればよいという方のために、次回もう少し補足したいと思います。

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