昨日の映像撮影対応とは別のお付き合い先の支援で、今日から3日間は今年の新設法人のテックベンチャーの国内初展示会への出展と来場者へのご説明対応をしています。今週は暑い中、連日体力勝負です。
弊社は一般には展示会活用には慎重な方針です。きちんと見せるためのパネルや什器、装飾まで含めると100万単位で費用がかかる割には、集められる名刺がほとんど決裁者ではないし、その名刺の関心度も低く、終了後の電話・メールフォローをしても、大して有効なアポにつながらないことがほとんどだからです。
出展しても大企業の目立ったブースの周辺にあまり目立たないブースを出しても、巨大ショッピングモールの隣の個人商店みたいな様子のブースでは
差別化してインプレッションを当たるのがなかなか難しいというのもあります。
中小企業はまず、出展に際して、「直接的な売上促進効果は薄い」ということはきちんと認識しておくべきです。主催者側は、メディア資料として、「〇万人来場しました。」「来場層は決裁者がこんなにいます。」という資料を出してきますが、ご自分が来訪する際もそうだと思いますが、大企業の目立ったブースには人は集まりますが、一コマだけのあまり装飾もないブースはどの展示会も閑散としています。それに来場する人の多くは、情報収集目的、というのですが、「トレンドを把握する」ことはしても、「自社の課題を解決するものを探し出す」という態度では来ていないことに依存します。
もっとも最後の点は展示会の種類にもよるようで、以前、かなり大きな規模の町工場の加工技術の展示会に参加した際には、来場者の何組かが、自社製品に必要な加工技術について具体的に探し、質疑応答している場面を見ました。そういう「実用技術」があり、その選定が技術の現場中心に進む(稟議書を出されても上層部はあまり理解できない)ようなものは、展示会の即効性があることを目の当たりにしました。また、展示会のセグメントが小さければ小さいほど、こうした「狙いを持った層」の割合は増え、大手企業の力の入れ具合は下がります。たとえば、「総務・経理・人事EXPO」よりも、「契約書の管理」に絞ったイベントの方が、自分の持ち駒が「契約書の管理」であるならば、即効性を期待できるということです。
もちろん、自分たちの技術・製品の中にユーザーにとってわかりやすい訴求ポイントがある場合には、それを大きく書いておけば何とかなります。今回はそういう意味では小さな市場セグメントで割と強い訴求ポイントがある製品の展示会なので、少し期待していいのかと思っています。
では、中小企業が展示会に出展することは本当に経営的意味は一般的にないのでしょうか?それは、準備と目的次第だと思います。そして、即効性のある売上以外の目的をどこまで持つか、という点に関わって来ると思います。いろいろな業種・商品で展示会をやってきた中で、展示会を活用して意味があった、と思うことや意味が出やすいパターンをご紹介したいと思います。
1 業界(同業)での知名度を上げる
エンドユーザーに直接認知してもらう、というのは関心層が少ない、あるいは競合がある中では難しいのですが、業界内では比較的容易です。展示会では類似する出展内容はだいたい近接してブースの位置が設定されます。その関連業界に積極的に挨拶して回るのです。特に若い企業や中小企業の新規事業の場合、業界内での知名度、人脈が弱い会社が多いです。そして、そうした「インナーサークル」が持っている情報がないと法制対応すらままならなかったり、インナーサークルにいれてもらわないと彼らから敵視され排斥される、というようなことが起きがちです。そういうのも嫌がる経営者も多いですが、多くの業界ではそうした「内輪の論理」が厳然としてあるのであり、業界団体とその団体が行う展示会がそこへの入り口になっています。
全て自前主義ではなく、販路開拓、業務提携といった機会もこうした展示会での出会いから始まることもあります。あまり自分のニーズがわかっていない、ユーザー候補の来場者よりも、製品や技術に関する予備知識が備わっている同業界やその業界の売り手・買い手の方が、製品の細かな特徴や強みをよくわかってくれます。
ならば、展示会に出展来客対応もそこそこに周辺のブースを挨拶して回りましょう。ちなみに私が本日からお手伝いする際、ご依頼主さんはよくわかっておられて依頼いただく際、「みんな周辺のブースに行きたいから、その間、いて対応してくれる人が必要なのよ」と言われていました。「この人、やるべきことをわかっているなあ」、と思いました。
2 製品開発のマイルストーン、全社統合のゴールとして
販売体制の整備には、製品本体の開発のほか、製品パンフレットや販促資料、それに代販体制などいろいろなことを分担して整備しなくてはなりません。しかし、往々にしてこれらの準備は遅れがちです。特に周辺販促物やトークなどは後回しになりがちで、これがないまま営業に投入してグダグダになる、という例はたくさんあります。これらは決して簡単なことではありませんが、「やらないとその日、自分が困る」ことでないと人はその仕事を後回しにしがちです。
それならば、「〇〇EXPO にて初お目見えさせる。その際には資料やトーク、商品ロゴなどすべてを完成させ、それを用いて説明する」という意思決定をして、整備を指示しましょう。そうした、「全社一丸でゴールを目指す」という機会は、組織に漂う倦怠感を一掃し、組織の前に走り出す感じを参加者に実感してもらう良い方法です。理屈っぽい理念よりも、そうした「前進していることの実感」の方がよほど社員のロイヤリティを高めます。そして、自分が説明するのに不便する、恥ずかしい、他の社員に遅れると迷惑をかける、ということが明らかになる状況を作り出す良い機会です。
3 ちゃんと招待状出して商談のアポを切りましょう。
社員が展示会が嫌になる理由の大きなものは、目の前を通る大勢の人に「いらっしゃいませ~〇〇です。どうぞご覧になっていってくださ~い。」と一生懸命声をかけるのに、全然ブースに来てもらえず成果は上がらず、足は疲れるし、なんだか徒労感だけが残るからです。
無名の中小企業が出展しても、誰も見向きもしないのは仕方がないことですが、その事実を社員一同確認することは、せっかく2の取り組みで盛り上がった機運を消沈させてしまうものです。それを防止するためには、その場での商談を数社はちゃんとアポしておきましょう。椅子とテーブルはもちろん必要です。そのために、「その場で初めてご披露できる〇〇の実物があります。」というような「行く理由」が絶対に必要です。
これも小売業では常識ですが、人の誰もいないブース(店舗)に人は来ません。誰かがブースで話を聞いていて、そして商談している状況は、集客のためにも必要なのです。店員は通常は店舗から一番遠い駐車場に車を止めますが、閑散としているの時には店の前に止めて客がいるふりをしたります。サクラです。それと同じことです。展示会に出展すると、主催者側から送付用招待状が沢山もらえますが、ただたんに郵送するだけではだめで、すでにお会いした見込み顧客に個別にアプローチして「〇月〇日の〇時に××さんがお越しになる」という状況をできるだけ連続して埋めて置くことが、展示会での商談成果、それに加えてブースを活性化し、社員に「成功感」をもってもらうためには大切なことです。
ちなみに中国では、日本の数倍の規模の展示会場、展示会が主要な都市にはあり、どんな展示会でも、その場でどんどん大型の商談が決まっていきます。それは、その場にいけば、売り手も決済権者がいて、買い手も決済権者が行くので、数社まとめて商談でき効率的である、という経済性に加えて、展示会での数字の積み上げを売り手はかなり経営計画上重視しており、値段が出やすいと思われているし、実際、そのような雰囲気を演出しているからです。「展示会」というより、「市場」「商談会」なのです。
大手の「きれいなだけ」のブースを羨ましがっていないで、中小はそのような方向性を徹底したらよいし、その集客のためには、周辺の出展社も、競合すらも利用すればよいのではないでしょうか?
4 ロゴ、映像、カラーコントロールは大事
私も昔は大手に綺麗なブースに比べて、自分のブースが見ずぼらしく見えて嫌でした。でも、これって工夫次第です。もちろん、パネルやパンフレットの準備は必要ですが、通りから見えるよう映像を流すだけでも、アイキャッチは全然改善できます。また、壁面や長机に、コーポ―レートカラーや商品ロゴのカラーと同じ色の安い布を買ってきて、画びょうで止めるだけでも、ずいぶん統一感のあるブースになります。
再利用できるものならばよいのですが、展示会の什器屋さんが作るものは意外に再利用が困難です。第一、中小企業では、どこにしまっておくんだ?次いつ使うんだ?また、何十万も出店費用使うのか?という問題がでます。最初の段階での現実的な対応は、多分、商品名やロゴをプリントした布とパネルぐらいまでです。
何のために出展するんでしたっけ?中小企業が幅広いエンドユーザー層に強い認知を与えるなんて、大それたことを望んでも失望するだけです。まずは業界での認知、そして準備のマイルストーン、担当社員の一体感と既存の顧客候補とのあなたを交えた商談の場、と限定しそこでの確実な成果を出していく、ということを私はお勧めします。