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中小企業専門コンサルの難しさ

 弊社を含め、世の中にはたくさん「コンサル」を名乗る人はいるが、中小企業相手に本当に成果、つまり事業を伸ばした実績や、問題を解決した実績を持つ人は少ない。というか、私自身あまりそういう人に会ったことがない。今、頭に浮かんだのは、たった一人である。
 私の知る限り、「中小企業をやっている」というコンサルタントの多くは、月一回程度、表面的に言いたいことを言って、話を聞いて宿題を出して帰っているだけである。これでは、ほとんどすべてうまくいかない。

 どうしてこうなってしまうのかは明確な理由がある。経営者側がそれを知らないで、外部コンサルを値切って値切って起用すると短期間ですぐ失敗が明らかになる。そして、中小企業で外部起用に失敗すると、それが経営者への信認に直結するダメージになる。例えば、「社員の方が市場を良く知っているのに、それを信用せず適当な外部の人を連れて来て、さんざんかき回した上に、何も成果はなく、お金と時間が浪費された」というような印象が社員に定着し、次にその会社で外部の知見を活かすことが難しくなってしまう。

 おりしも事業再構築補助金でも、「外部の専門家活用」や「認定経営革新支援機構のプロジェクト期間中の伴走」が求められている。計画を立案・遂行する企業側も大変だが、受ける側も沸き立っている傾向にある。しかし、そのコンサルは本当に任せていい先なのかどうか、少し落ち着いて考えてみた方がよい。
 そして社内はどのような遂行体制を用意するべきなのか?弊社の宣伝じみてしまう部分もあるのだが、その辺を整理してみたい。

①中小企業は社内にリソースがないので、おのずと改善支援はハンズオンにならざるを得ない

 概して中小企業の方が大企業よりも、残業も多いし、給料も低いし、明言してしまって申し訳ないが従業員の基礎的思考力やアウトプット能力も低い。そして、少数の優秀な人に非常に大きな負荷がかかっている。(これは大企業でも同じではある)。コンサルタントというと、「診断的なことをして、何をやるべきかを示して、実行をチェックする」というように、コンサル側が自己定義しているケースが多いように見受けるが、中小企業でそれをやっても、実行役がいないし、仮にやってくれても、あまり良いアウトプットが得られず結局やり直さなくてはならない。

 経営者の方も、そういう社内の状況を理解しているので、経営者は実は、求めているのは、「指針を教えてくれるコンサル」ではなく「スーパー遂行担当」であることが多い。これをかっこをつけて言うと「ハンズオンコンサルティング」というのだが、何のことはない。改善業務の業務委託である。このようなやり方では、1社あたりの工数がとても多くなりがちである。

 しかも、大企業と中小企業では組織の動かし方が違う。
 大企業は方針が決まるのに時間がかかるが、いったん決まってしまえば一定期間はそれを前提にできる。それに対して中小企業では何事もトップの判断ではあるのだが、その判断はしょっちゅう変わるし、微妙なバランスの上に成り立っている。
 また、大企業は比較的組織の上の決定は正として遂行される傾向があるが、中小企業は概して、「合議制」であり、指示に従わない、という事が多く起きる。そのほかにも、組織の性質が根本的に異なっている。
 その辺を理解して、それを前提に施策を立案し遂行できる人は、大企業出身ではなかなかいない。

②しかし、支払い意思額=認められる効果額は低い

 ①のようなことを前提に、まともに、その会社の経営者と社員の考え方や持てる能力を理解し、伝票レベルでのデータを把握し、具体的な問題に対処しようと思えば、どんなに要領を得た能力の高いコンサルでも、週1日程度は、その会社のことに専従的に時間を割いて、データをいじったり、書類をまとめたり、あるいは現場で一緒に過ごしたり、経営者と昼食にいったり…という時間が必要である。
 そもそも、そのデータを0から作ったり、システムからアウトプットしたりすることも、その「担当コンサル」の仕事であり、頼んでおくと社員が送ってくれるというようなことは期待できない。
 簡単にできる成果から順に出していくにしても、それでもその会社のメカニズムを理解した施策を打ちだせるようになるには、試行錯誤の上、2,3か月はかかってしまう。

 そうなると、おのずと1社あたりの単価は月額で少なくとも20万円を超えるような額にならざるを得ない。赤字では、コンサルもやっていけない。
 そして、その20万円という額は、大企業の部長級ならば、意思決定可能な額ではある。また、大企業ならば、そのセクションの課題に対して1,2%の改善を実現するだけで元が取れる額である。しかし、中小企業の多くは、必要不可欠であるはずの税理士への月額5万円の支払いでも「もったいない。なんとか減らせないか?」と思っている。しかも、中小企業の場合、一つの改善ポイントの影響額(たとえば、一事業の売上高や人件費)が大企業に比べて格段に小さい。たとえば、コンサルの報酬が年300万円でその倍の600万円の効果を、年7000万円の経費が掛かっている事業で実現しようとすると、経費の削減率は9%以上が必要である。この9%という数字は、一側面をなでるように見えている表面だけを改善するだけでは到底到達できないものであり、組織と業務の抜本的改善が必要になる。つまり、コンサル側にとっても格段に難易度が高い、「ずっぽり入り込まないと」(なぜか、こういう言い方をハンズオンコンサル界隈ではする)できないのである。

 弱気なコンサルは、「年100万円改善すれば、6年で600万円だから、参画による投資回収率は200%だ」という言い方を経営者にするが、中小企業経営者は、そんな6年ものスパンで事業をとらえていない。悪く言えば近視眼的、よく言えば?一年一年が勝負だと思っている。その辺のスタンスの違いも、中小企業経営者からみたコンサルへの不信の原因である。

③ちょっとしたことでも「全社的取り組み」にならざるを得ないし、なりがちである。

 大企業にはたくさんの事業があり、そのうち、一部の事業の製販いずれかのさらに一部の機能を改善したい、という要望が各セクションのリーダーから多くあり、各「機能」の専門家が活躍しうる。しかし、中小企業では、ある一つの改善ポイントが社員のかなりの割合に影響し、そして社員の行動変容を要求することになる。当然、社内の反発も広範に発生し、そこでの経営者のリーダーシップも要求されるが、意外にそのリーダーシップが弱いケースが多い。(このようなケースは弊社も避けて通りたいケースである。)

 そうでなくても、「全社的取り組みになる」ということは、単にその機能だけでなく、人事、財務、広告宣伝、技術、物流など各機能の統合が必要になるということであり、施策で大きなインパクトを出すためには、そのような機能を同時並行的に活用せざるを得ない。しかも、各機能に余力が小さく、多くケースで未成熟であるため、そこへの外部リソースの具体的補強も必要になってくる。
 そして、何よりも、経営的な視点にたった経営者への提言と、経営者に代わって現場へのアクションが必要になる。

 しかし、多くのコンサルタントは「単一機能のプロ」ではあっても、「経営全般の経験」は薄いし、ましてや「中小企業の経営の経験」「経営者の孤独の実感」はないので、その辺の機能が期待できない。

もちろん、そうした「全社業績」へのコミットは責任が重い(受けるコンサル側からしたら気が重い)ものであるし、それを短期で成果をだそうというのは、重労働にならざるを得ない。数もなかなかこなせない。



 中小企業が、コンサルを含む外部リソースを積極的に活用するようになることは、私も賛成である。イノベーションは概してヨソモノによってもたらされる。しかし、こうした「思惑の違い」が経営者と社員と、外部要員のフィット感を喪失させている、ということはあまり知られていない。

 これからまた事業再構築補助金が進行していくと、あちこちで「使えないコンサル」論が噴出するのではないかと危惧している。その指摘は、当たっているケースもあるが、そもそも「何を要求しているか?」が最初から食い違っているというようなケースが多い。
 人は自分の経験したもの以外への想像力はなかなか働かないものである。中小企業で外部の人員を起用する際には、こうした点からその人を評価してみて、完全にマッチしないまでも、その後の進行においても留意しながらプロジェクト運営を進めることが必要である。

もちろん、言っている弊社はこれらを十分踏まえてプロジェクトを進めているのだが、これができる人はそう多くないので、大変の案件を辞退しなければならない状況である。かといって、平均値が下がるような補充をしては台無しであるので、そこも悩みの種である。

 私は、中小企業の方がやっていて面白い、と感じるが、一般的には、中小企業の方が金にならず、しかも難しい。中小企業の経営者は、そういう厳しい場に置かれていると思うし、またそれを認識したうえで社外の人材を起用していく必要がある。

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