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映像、動画が効果的なわけ-国際成人力調査から-

明日は、お手伝いしている会社の大型機器の設置と試運転の様子を、一眼レフで写真と動画を取る作業を一日対応予定です。カメラは個人的趣味なのですが、三脚も新調しました。先日、インターネットがビジネスモデルの可能性を大きく変えているのに、ビジネスの古いリーダーはまだ、それに気づいていないというお話をしました。

そんな大層なことを論じなくても、インターネット初期、90年代の「ダイヤルアップ接続」で早朝深夜の割引時間帯に接続時間を図りながら調べ事をしていた時代を知る者からすると、豊富な画像、そして動画を用いて表現することができる、ということは夢のようなことです。「百の言葉より一の映像」、「論より証拠」です。

これはなかなか、頭のいい経営者にはわかってもらえないことではあるのですが、通常の論理的な物事を文章や図で説明してもそれを概ね意図したとおりに理解してくれる人はどのくらいいると思いますか?実はこのことを調べた統計があります。「国際成人力調査」(PIAAC)と呼ばれるもので、これに関するニュースは皆さんテレビでご覧になったことがあるかもしれません。その時の説明は、「日本人の理解力は読解力、数的対応力とも国際水準を大きく上回っている」というものであったと思います。それはたしかに間違ってはいません。その調査結果と問題例はこちらの文部科学省のwebサイトで確認することができます。以下は2013年に公表された最新の本調査からの紹介です。

http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1287165.htm

細かな説明をし始めるとこの解説だけで10回ぐらいの記事になってしまうのですが、なかなか興味深い統計です。問題例を見るとわかるのですが、どの分野の問題も私からすると、ごく簡単です。しかし、優秀だと宣伝している日本でさえも、読解力は500点中275点以下、半分程度以下の正解しか出せない人の割合は日本でも27.7%もいます。(ちなみにイタリアは7割が275点以下)、数的思考力は36.3%の人が275点以下です。問題例を見てみると、なかなか社会常識を見るのによい問題揃いでよくできた調査だと感心します。そして、「こんなのもまともにできない奴、採用できないよ」と経営者の方はきっと思うでしょう。しかし、これが現実です。文章を読んで落ち着いて推論する、ということができる、ということは決して「当たり前」のことではないのです。

この調査には第三の領域として、「ITを活用した問題解決能力」という調査があります。この問題も比較的容易であり、メールソフトや表計算ソフトを業務に使用していれば簡単なものばかり…のはずですが、日本はこの調査はOECD加盟国の中でかなり下位です。そして、恥ずかしいことに、「調査拒否」が15.9%もいて、ポーランドに次いで多い。ICTコア不合格:ICTの導入体制ができていない対象者というのが10.7%いて、これは断トツ最下位(数字上トップ)です。コンピューター経験なしという人が10.2%、全然答えられなかったレベルの人が7.6%それぞれいて、IT活用に関して門前払いレベルの人が合計で44.4%もいるのです。調査を実施したOECD加盟国(このIT活用の調査を実施していない国もある)の中でこの値は最低です。

もう一つ、この調査、そして、この内容に関連して、あるいはこのブログや普段の私の主張の根拠となっているものとして、これらの調査が年齢別にどうであるか?という分析が調査結果の概要(差異ほど掲載したリンクから閲覧できます。)の14-15ページに掲載されているのですが、これをそのまま画像で、次に引用させていただいています。

ITに関しては、時代の変化という要素があるため、年齢が上がると急降下することの原因はある程度分からなくはありません。しかし、基礎的読解力、数的理解力においても35歳をピークに、結構な規模で下落する傾向が明らかです。

ここまで長々と統計調査の説明をしてきましたが、何を言いたいかと言いますと、「書いたらわかる」「読めばわかる」は「人口の1/3以上には通用しない」ということです。そして、若い人はまだましで、年齢とともに、その「わかってくれない度合い」は増していきます。

そして、人は自分が賢いかのようなふりをしますが、かなりの割合の人が実は読んでなどいないし、読んでも理解できていないし、理解できたと思っても実際には行動できない人は決して少数ではない、ということをこの調査問題(実際にアウトプットしなさい、という良問です)と統計結果は表しています。

私自身、この調査結果を実感しています。私の周りにいる経営者やリーダーは半分は、めっちゃ頭のいい人、もう半分は上の「読解力やアウトプットを期待できない人」です。実際、今回映像撮影に行く仕事の依頼主も後者です。ただし、それで後者をバカにしているか、というとそんなことがありません。実際問題、前者の会社は伸びていて、後者は衰えているか?というと実はそうではなく、むしろ逆で結果がよいのは、「バカな経営リーダー」(わかりやすい言い方をしてしまいますが)のほうです。そして、社会的に正しいのは、株主と従業員に報いる後者です、よね?私はこれを、「大衆の現実をよくわかっている人が営業手法を考えているか?」の差だと考えます。

もう一つの加齢変化については、35歳、40歳を過ぎて本や講演などから新しい刺激を受けて吸収しようとする人は本当に少ないし、新聞ですら読まなくなり、「ぼーっと生きている」状態に人はなりがちです。若いころに相当優秀だった人でもその傾向が出てくる人もいます。そういう人は、会社や会議で、ひやひやしながら「わかったふり」「やっているフリ」をしてごまかしつつ60歳(それが65歳になってしまいつつありますが)まで逃げ切ろうとしています。私自身も、その衰えを自覚し,抗うための工夫をしているのが実情です。しかし、そうした層が実際には、企業でも決済権を持ち、消費者としても可処分所得を有しているのです。これはいい悪いの問題ではなく、経営者が直視し対処すべき市場の現実です。

私が商品説明プレゼンを作っても、事業計画を作ってもこの動画の依頼主は理解する気力も見せませんで、「おおすごいねー」という印象を与えただけでしたが、その一方で、今回映像、動画は作ろうと言ったのは、「言葉でつらつら書いたって誰も見ようとも思わないし伝わらないからさ」ということをよく理解しているからです。逆に言うと、いままでの文字ベースのwebサイトでは、対応することができなかった1/3以上の層に対して、ブロードバンド時代の動画、画像を用いることでようやく訴求の対象とすることができるようになった、という言い方もできるかもしれません。新聞からテレビがメディアの主役の座を奪ったように、文字ベースのサービス案内は、webの広帯域化によりその主役を映像による表現に譲りつつあります。

最近では、スマホでも高画質の画像、映像を撮影できるようになりましたし、YouTubeを見るとイフェクトを駆使し、印象的なスーパーインポーズを入れて綺麗に作成している人がたくさんいます。そこまで手が込んだものを作ろうと思うとすぐには習熟できず、プロに頼むとそこそこの費用がかかりますが、おそらく今多くの中小企業で必要なのは、マニュアル替わり、提案書替わりの映像であり、長さはできるだけ短い必要がありますが、あとは適切な説明文字が入れられればよいものでしょう。それならば試行錯誤でなんとかできるはずです。実はYouTube自体の機能でも基本的なことはできます。

と、「文章なんて大して読んでもらえないんだから映像、画像を活用したらいい」という長ったらしい文章を書いた私は一体どうすればよいのでしょうか?

とりあえず明日は、設置や稼働を見るのも実は初めてなので、素材を撮影しながらシナリオを考えようと思っています。

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