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なぜ工場と事務で同じ工程管理をしないのでしょうか?

これからオペレーショナルエクセレンスの話を始めるわけですが、最初に数週間に及ぶ長い話の結論の一つを最初に言ってしまいましょう。

工場の工程と同じように事務室の事務もすべて管理しましょう。

工場では品質とコスト、安全などの観点から次に何をどの工具を使ってどの強さで取り付けるのか?や、取り付けた後にどの項目をどのような基準で検査するのかがすべて決まっています。決まっているからこそ自動化でき、自動化できるからこそ、低価格化できるのです。

どこに工具があるかもわからないし、手順は個人任せ、品質検査は、「ちゃんと見といてよ」と上司に言われて、「ちゃんとちゃんと」と唱えながら周囲を眺める、そんな工場が今の世の中に生きながらえるわけがないと思いませんか?

なのに、なぜオフィスの作業はその低レベルな状態で放置されているのでしょう?この質問に、多くのコンサルタントは、「可視化できないから」(目に見えないものは共有も制御も難しい)という答えをします。それではなぜ、「可視化できない」のでしょうか?もっというならば、「なぜ可視化しようとしないのでしょうか?」やろうと思えば、やれるはずです。動画に録るとか、一生懸命文章に書いてしゃべりで補いのを録音するとか、いくらでも方法はあるはずなのに、それをやろうとしないのはなぜなのでしょう。

今日はその辺をまず明らかにしたいと思います。

なぜ、事務仕事は「なんとなく」でいいことになっているのか?

①システム思考の欠落

その一つ目の原因は、日本人が、学校でも会社でも、社会の仕組みを「システム」として捉え、それを個別のプロセスに分解して解明する、理解する、その結果として制御するということをトレーニングされる機会がないということにあります。

世界の現代の社会科学では、プロジェクトマネジメント、交渉、あるいは接遇でさえ、プロセスを分解してその個々の小プロセスの品質やコストをコントロールすることでトータルを制御するアプローチが基本にあります。オフィスの営業も、企画もこうした制御が実際には可能です。ところが、日本ではその方法論を知らないでも役職に付き、指導できてしまうケースが大半であり、「知らない人が偉そうにしている」し、そのため評価基準にも組み込まれないので、「知っている人」がセクションのリーダーとして抜擢されない、むしろ方法論より根性論で評価される状況が続いていることにあります。

大学でも教えないし、こうしたことを解説する書籍もたくさんあるが、それも不勉強で読まない、それでも「年数がたてば管理者になれる」という仕組みに現況があるのです。

しかし、読んで納得している人も少しはいます。しかし、彼らもそれを制度化、ルール化しようとはしません。そこに次の原因があります。

②付加価値を生まない「真心」

二つ目の原因は、「個別に都度考えて真心こめて対応することが正しい」という思い込みです。職人魂とでもいいましょうか…もちろんそれで会社の多くの「普通の人」がある程度の習熟をすれば顧客が感動とまではいかないまでも納得してもらえる品質のサービスをでき、その余計にかかった対価を相手の顧客から十分回収できるならばこれは否定できないでしょう。仕事はすべて「費用対効果」で考えるべきです。そして、そのような「真心を込めて接客したらビジネスが大成功した」が世の中にあふれかえっているかのような幻想を我々はテレビや上司の昔話から聞かされてそれを目指すべきと思い込んでいます。

しかし、そんなことが本当であったら、こんなにも人減らしやワーキングプア問題が起きるわけがありません。それは池井戸潤先生が語られるような「物語」ではあっても、現実には多くの人は「その場で考えて対応する」ことで十分な対応品質など維持できません。また、その考えて試行錯誤しながら対応する部分に顧客が追加的に何かを支払ってくれることもありません。口では文句を言いつつも、結局一番対応のよいところではなく、最低限安心できる範囲で一番安いところでみんな買うのです。

だから何度も何度も同じことを繰り返し、習熟して改善していってコストが低減した効率的な状態、無駄を省いた状態を維持しながら顧客に提供しなければ、利益など出るはずもない、という現実を直視しなければなりません。

しかし、そんな「機械のような働き方」でよいのでしょうか?

③人は制御してはならない?

最後に三つ目として、日本では「人を制御」することをしてはいけないと思い込む人があまりにも多いことです。「人は機械ではない」とよく言います。確かに経営が難しいのは、理論通りでは人は動かないというところにあります。しかし、それは指示命令をしてはいけないということではないし、合法的な指示であれば、それに従わなくてよいということでもありません。

その対極で凄みや怖さで威圧して従わせることがこれほどまでに陳腐化しているのにまだそれに頼ろうとしている層も多くいます。これは制御ではなく、迫害であり、昔は通用したかもしれませんが、今は反発され通報されるだけです。それでも後を絶たないのは、「合理的な説明、必要性を論理的に説明して納得させる」だけの知識や言語能力を持たない者を「頑張ったから」と管理者のポジションに付けているからです。

今の世の中、多くの人が対人クレームやミスに怯えながら働いています。まるでミスをしたり、クレームが起きると会社が終わるかのように組織が騒ぎます。これもおかしいと思うのですが、そんなにクレームが嫌なら、ミスが起きにくいと検証された工程をベースにすればよいのです。

「比較的安全」と確認済みの作業をする中で、心理的余裕が確保されて、同じ作業の反復であるので、比較的速やかに効率が上がり、自分の管掌範囲の限られた範囲の中で改善点を見つけるということはできるようになり、いくつかある注意すべき点への対応能力が向上します。暗中模索でやるよりも範囲とルートを限定された方が、多くの人はよっぽどやっていて楽しいし、多くのことに気付けるのです。

そのためには、いったんは、「これをこのようにやりなさい」「かけてよい時間はここまでであり、完成品のチェックはこれに基づいて行いなさい」と指示をして、そのトレーニングをさせればよいのです。それが正しい「指揮命令」であり、その範囲で起きた品質不備は、個人の責任ではなく、指揮命令者が用意した「工程」に責任があります。これは私が言い出したことではなく、「トヨタ式」としてあまりにも有名な考え方であり、これを事務、営業にも導入して成功している会社やそれを支援する組織は世の中に実際にあります。

しかし、そう言われると経営者であるあなたはこう反論するでしょう。「実際、今ある業務はそんな画一的処理ができるものではなく、その現実の問題に対処しなければならない」

でも、本当にあなたの会社はそんなにバラバラなことをしているのでしょうか?実はそうではないはずであり、幹と枝葉に分けて整理できるはず、と会社のことを一番よく知っているあなた自身がよくわかっているはずです。その「幹と枝葉をわかるように整理する」ところから、オペレーショナルエクセレンスへの道は始まります。

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