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2021年を振り返る、そして2022年へ②

というわけで、前回に引き続き、2021年をきぼうパートナー的に振り返ると題してお送りする記事の2回目です。前回はこちら

今回のテーマは次の二つです。

3 上場ゴールラッシュと「投資家転身」に思う

4 再構築と再生のために


3 上場ゴールラッシュと「投資家転身」に思う

 今年は昨年にも増して非常に多くの上場(主としてマザーズ)が実現しました。経営陣を知っている会社もいくつかが上場しました。今年は一年で120社を超えており、この水準は、2000年、2006年に次ぐ日本の歴史上3番目に多い数字です。

 この数年、ベンチャー企業に対しては、大企業のCVC的投資、そして国内でも分厚くなってきているVCの金銭面の支援、ベンチャー支援をビジネスとするセクターへの参入増加あるいは大企業や行政が後押しするアクセラレーションプログラムなどが充実し、ベンチャー企業を中心とするエコシステム(関連企業が儲ける仕組み)が整い、ベンチャーにとっても勝負をしやすい環境が整備されてきました。そして、120社が十分多いかというと、実はアメリカでは毎年1000社前後が上場していますので、それに比較するとまだまだ全然少ないとも言えます。しかし、この「エコシステム」は、「上場すれば経営者と株主に多額の現金が入り、その分け前に与れる」ことが前提です。
 ちょっと待ってください。上場して株主から資金を集めるのは、会社の投資規模を拡大し、市場シェアを拡大するためだったはずです。

 そして、上場により巨万の富を手にした創業者は、今度は自らが投資する側に回り、新たなサービスを支援する側に回り、全体としてベンチャービジネスがさらに盛んになるという循環も見られます。上場により富を手にすることは、決して悪いことではありません。それが事業推進の一つのモチベーションとなっていることは間違いないですし、それだけのリスクを背負ってストレスに耐えてきたことへの見返りでもあります。お金持ちになって、自分と周囲をハッピーにし、経済を活性化することは社会的役割であるとも思います。
 そして、上場に関連するコンサルフィーや手数料に群がる「上場屋」は悪しき存在というだけではなく、単独では体制整備や準備がやり切らないベンチャー企業を上場させるという目的に最短距離で走らせてくれる存在であるのは間違いありません。ただし、それが「形だけ整える」ではなく、本質的に株主から信頼できる企業づくりに寄与していれば、の話であり、実際には中身が伴っていない形作りの事例も多い。

 そして、上場した会社のうち、この先どれだけの会社が事業を継続的に発展させ、新たな株主の負託にこたえてくれるのか?というとこれまでの結果を見るに暗い気持ちにさせられます。日本にとって必要なのは、「上場というビジネス」ではありません。旧来の大企業を凌駕し、世界の市場を席捲し、雇用と納税を実現する「スーパーベンチャー」、第二のマイクロソフト・Googleを我が国から生み出していくことです。上場経営者が経営者のまま投資家にもなる、というのは、創業会社に情熱を失っているのか?と心配になります。得た資金で一気に世の中を変えて行って欲しいものです。

 そんなものなのかもしれないが、収益基盤と財務や人事の会社の基盤がしっかりしていないままに、あるいは上場で得た資金の使い方をきちんと見極めないうちに、周囲の上場屋の引いたレールに乗せられて上場に駆け込み、結果として株主や取引先、そして従業員に迷惑を掛ける例はいままで枚挙にいとまがありません。それほどまでに経営戦略は難しいものであり、そういう私も自分でやれるのか?というと絵は描けても、組織のドライブも含めてやれる自信はない(あれば自分でやればよいのですから)のも事実です。

 最近ではあまりそういう言い方もめったに聞かなくなりました。しかし、上場とは誰もが株を買えるようになるために「安心な商品(会社という商品)」であることを公的に証明された存在であるはずであり、そのために「経営の品質保証」が求められています。そのためにはかなりのコストもかかりますし、制約も受けます。上場後も、こうした「価値」をきちんと主張し続けられる会社はこれまでのマザーズ上場企業を見ても決して多くありません。
 もう少し「上場」はその場の利益ではなく、「メガベンチャーを推進するためのブースター」であるよう関係者が協力していく必要があるのではないでしょうか?

2022年、東京証券取引所は、銘柄を新しくプライム、スタンダード、グロースの3つに再編します。グロースもしていないし、そもそも経営内容もよくわからないグロース銘柄がたくさん出てしまうことでしょう。そして、その原因の少なくない部分が「上場」自体にあるのではないか?という気がしてなりません。

そして、本当に、事業の成長のために必要な投資資金は、初期から上場を約束しなければ得られないのでしょうか?そうではないケースもたくさんあったように思います。それを知らずに歩みだしてしまってがんじがらめになってしまったというケースも見てきました。地歩を固める段階からVCを入れなくてもよいような価値向上提案を私はしていきたいと思っています。

4 再構築と再生のために

 その一方で、コロナ禍で痛んだ企業の維持、再生のため、昨年来、膨大な「コロナ融資」が行われました。多くの対象会社で据え置き期間(最大3年だが銀行から1年を提案されているケースが多い)が終わり、返済が始まっています。もちろん、1年半程度で収益力が大幅に改善している事例など多くはありませんので、これから徐々に資金残高が減っていく企業が増えていくことでしょう。

一方で一度変化した需要構造は元には戻らない部分が多くありますので、雇用調整助成金などが終わってしまえば、助成金で大量の営業外利益を出すようなことはできなくなります。そして、予想されていた事態ではあるのですが、今頃になって徐々に増えていく「コロナ倒産」。これは2022年、これから本格化します。

そこから遅れること1年、今年は「事業再構築補助金」や「事業承継支援」など、これまでの事業を見直すということをやっていくことが求められる機会が増えました。21世紀の世の中で疫病という災害にあって、国はその時々で税を投入し、産業の維持と再生を応援してくれています。事業再構築補助金には弊社もいくつか関わらせてもらったのですが、「事業戦略、事業の軸の転換を真剣に考え具体化する」ということを初めて本気で取り組んだ経営者を多く生んだという意味では意義があったことだったと感じています。

 しかし、これを十分生かせることが中小企業の側でできているか?というと、現場で見ていると、「もともときちんと普段から考えることができている人」はこの機会を生かせているのだが、実はこの人たちはそんなに危機的というわけではないことが多いのです。その一方で危機的な人は考えることも挑戦することもできず、補助金も人任せなら計画も人任せ、という事例をたびたび目にしました。もちろん、前者はお手伝いしますし、後者は淘汰されるしかないのですが、そもそも私のところに情報が届かないものも含めると世の中の圧倒的多数の「社長」が後者です。もちろん民主主義の日本ではそうした方も一票を持ち自分に有利な投票行動を行いますので、政治はこれまで、そして菅政権の終焉とともにまた再度これからも、この層を死なせない策を打ち続けていくのだと思います。それは私たちの選挙での選択であり、国の歴史の積み重ねであるので、いかんともしがたいものです。

 しかし、経営力の低い経営者が再生産されていくことは止めていく必要があります。若い人は起業に熱心というイメージをお持ちかもしれませんが、それは「サービスや商品づくり」の話だけで、人とお金のめんどくさい部分をどうにかしていく、ということに対する基礎的素養を身につける、ということについては昔よりももっとできなくなってきている人が増えているようにも思え、憂慮しています。これらは、ネットでメールして済むようなものではなく、お願いし、言い聞かせ、それでもやらないことを見込んでバックアップ策を考えて、と理屈以上に実践が面倒なのですが、そのことを軽視しすぎていると思います。
 今年一年、様々な再構築・再生の場面を見て思うのは、「きちんと人とお金をマネジメントできる技術と精神的な靭性をもつ人材を大量に育成し、現場に投入していく必要性があるということです。

2022年は大企業から中小企業まで、今年をずっと上回る「再構築」の嵐が吹き荒れることでしょう。2年前から世の中は大きく変わってしまいました。その中で、「強いもの以外はやれない」という選別が進み、中抜きが進み、需要減への対応調整が急速に進むでしょう。そして、前回見たように原価はあがり、人手は不足します。

 様々な政府援助で延命できていた時代は終わり、経営者が自分で風を受け、舵をとらなければ会社という船は難破してしまう時代が2021年の後半から静かに始まっているのです。来年も忙しくなりそうな予感がしています。

 経営者の皆さん、皆さんの2021年はいかがでしたか?最後は少し背筋が寒くなるような話をしてしまいましたが、同時にこういう時代は「順位が入れ替わる時代」でもあります。あの巨大企業が株価対策で分割を余儀なくされる時代です。そういう時代は、チャンスでもあるはずです。

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