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毎年恒例!2021年を振り返る①

というわけで前回の前置き編につづいて、毎年恒例、「きぼうパートナー的今年を振り返る」をお送りします。前回はこちら

今年のテーマは1か月ぐらいいろいろ考えていたのですが、なるべく独立したものを選ぶつもりで次の4つにしました。ただ、この4つとも根っこはつながっています。それは、「これからの日本」、そして「変わりゆく日本人の意識」です。

1 原価上昇と値上げ、賃上げ

2 人出不足とリモートワーク そして「女性活用」

3 上場ゴールラッシュと「投資家転身」に思う

4 再構築と再生のために


1  原価上昇と値上げ、賃上げ

 12月の企業物価指数は、9.0%アップと1980年にこの統計が始まって以来の上昇となりました。この主因は原油・天然ガス価格の上昇だと報道されていますが、それに加えて円安。年初来のコンテナ価格や国際的な鋼材価格の高騰、電気料金の上昇など様々な要因が重なっています。
 この報道を見る限り「一時的な要因」であるかのように見えます。確かに中国、アメリカでのコロナ禍からの景気回復により市場の需給がひっ迫したという面はあるようですが、それでは、数か月後にこれらの水準は元に戻るのか?と言うとそうはならないはずです。こうした世界規模でのコストアップは、海外では比較的速やかに販売価格に転嫁され、同時にそれにより企業の利益水準が向上し、これに伴い労働者の所得水準が上昇することにより購買力の上昇として吸収されていき、価格は定着していきます。

 なぜ、昔は1500㏄の新車が200万円以下で買えたのに、今は300万円するのでしょう?安全装備が充実したから、という説明を信じますか?それは、世界的な水準では、300万円が買い手にとって十分妥当な金額となり、かつ生産者にとってその販売価格が各種コストを勘案して妥当な水準となったからであり、日本の消費者だけがそこから取り残されている、ということです。同様に小麦も、鋼材も魚介類も、コンテナ価格も上がったまま容易には下がりません。ただし、石油だけは歴史的に見ても中東に増産余力がある中で北米のオイルシェールを横目に価格維持策を取っているだけに比較的弾力性があります。

 したがって、このコストアップは、その分「以上に」販売価格に転嫁する一択です。中途半端はよくありません。しかも、できるだけ速やかに、です。そうしなければ、自らの身を細らせ、手遅れになると販促策を打つお金もだせなくなってしまいます。そういう中小企業は本当に多い。

 しかも、政治的要因から賃上げが強く要求される情勢が続き、各種助成金・補助金でも「賃上げすると増額する」という支援策が行われています。賃金の下方硬直性や解雇制限を維持したまま、いくら政治がこれを要請しても有効性が十分ではないのは過去の政策的経緯からは見て取れますが、そこにも少しだけ変化の兆しがあります。生涯所得が「自分の頑張り」とは関係なく、「どこにいるか」で決まっている、という事実は若者にも広く知られるようになってきました。頑張ったって給与水準の低い会社にいてはいつまでもたかが知れていて、給与水準の高い会社に転職しなければ人生は開けないということを、今の若手の上位層は認知しています。

この状況をチャンスと見て、今、「ベンチャー企業」と呼ばれる企業は軒並み給与水準を上げて、大企業の若手エース級を獲得する動きを強めています。まあ、「手当」も含めて比較するとまた事情は変わってくるのですが…。「ベンチャー」の給与水準は、大企業の平均値を超えたという統計も出てきました。そして、1で見たように、「ベンチャーという生き方」はかつての日本人の大企業信仰を大きく揺るがせています。この動きは、早晩エース級を引き留めるために大企業もまずは一時金等を用いて厚遇をせざるを得ない状況を生みます。もちろん、一律で上げていては利益水準を落としてしまうので、メリハリを付けざるを得ず、そのために「成果主義」が一層増えていくのです。
 一方で、実質的に移民、外国人労働者に頼っていた労働集約的産業でも昨今のコロナ禍での来日困難で人手が不足しています。これも「いずれ緩和する」と期待している産業界の声も多く、それが入国緩和要望にもつながっているようですが、なかなかそうもいかないうちに日本と他国の労働輸入産業との賃金格差は縮小してきており、確保のためにはこちらも賃金を上げていかざるを得ない状況になっています。

 結果として経費だけでなく、人件費も上がり、製品価格に転嫁せざるを得ません。その動きはすでに大企業を中心にかなり広がっています。先日は大手スーパーチェーンの低価格PBの食パンが一気に20円も上がっていました。


 では、値上げするとどうなるのか?販売数量は少なくとも一時的には落ちるのですが、利益水準は実はそれでも増えていて「利益なき繁忙」から少し抜け出せる状況も散見されます。それほどまでに、今までの日本企業は、「チキンレース」の呪縛から逃れられないでいたのです。
 ただし、多くみられるのは、競合製品があるのに特に何もせずに単に値上げすると、一気にシェアを落とす、という現象です。それが怖くて誰も値上げをできないでいるのですが、その敗北を回避するには、「誰に向かって」「どんな価値を訴求するのか?」というマーケティングの観点です。「ただ安いだけ」の製品が「ただ高いだけ」の製品になっては売れないのは当然であり、少数派でもいいから、特定の層にはちゃんと魅力的に思ってもらえ、「高い理由」がわかってもらえるものにする必要があるのです。
 ということで、2021年は、中小企業もマーケティングをきちんと考えなくてはならなくなってきた、その転換点の年となったであろう、というのが一つ目のポイントです。

 そのように、値上げに成功した会社だけが、広告投資が可能になり、賃上げが可能になり優秀な人材を他社から吸収でき、拡大路線を再開できるのですが、その「どうやって値上げすればよいのか?」のノウハウが日本企業には失われて久しいのです。私は困っている経営者の方にこう言っています。「まず、何月から上げると宣言して、そのあと対策を出せ、ただし、値上げ幅×今の数量×3か月は値段以外の対策費に使ってよい、と言ってください。」そして、セグメントを絞り、チャネルやプロモーションを見直していくことをやり直していくのです。

2 人出不足とリモートワーク そして「女性活用」

 1でも触れましたが、どこもかしこも人手不足のお話しばかりです。少し前までは、この話は実質的には「任せるに足る中核人材候補がいない」という話であり、頭数が足りない、という話ではありませんでした。しかし、今は「頭数が足りない」話がだいぶ増えています。本当に足りないならば、堂々と「時間当たり利益」(=生産性)の低い業務から順にやめてしまえばよい話なのですが、そういうとまた「この取引先は可能性がある」だのと個別の事情を言い出します。可能性があるならば、今その可能性を発揮させろよ、と思うのですが…

 そして、そんなに必要ならば新規募集の給与水準を上げればよいのですが、それもやろうとしない。既存人員とのバランスが…とまた言い訳をする。既存人員の中で新規人員よりも優秀な人だけ同じ水準にすればよいし、その分だけ製品価格を上げるしかない、というのが1のお話です。何も変えなければ事態は変わるわけがありません。

 そんなさなかに新たな要素が加わった一年でした。
 本当にあったお話です。コロナ禍で会社がリモートワークになったので、自然豊かな地域に引っ越したITエンジニアが、緊急事態宣言の終了とともに、会社が通常勤務体制に戻したので(某外資系IT会社です)、退職して日系企業でリモート可の会社に転職しました。
 この方が個人的に変わった方なのかという話はあると思いますが、すんなり国内大手に転職できるところを見るとスペック上はまずまずの方なのでしょう。もともと「優秀な人はなかなか市場に出てこないので、条件交渉でも優位であり、企業間でも取り合い」になっているところに、選択条件の一つとして「リモートワーク可」が加わったということは間違いありません。

 この「リモートワーク可」ですが、秋の緊急事態宣言の終了後に、大規模に導入していた企業で大幅に縮小する動きがでました。これは、旧来型日本企業だけでなく、外資大手ITでも見られた動きでした。リモートワークの生産性低下のデータがあったのかどうか大変興味深いのですが、今のところ、このことに関するプラスマイナスの分析のデータは見つかっていません。(ご存じの方おられたらお教えください)
 ただし、データとは別に職場における「非言語コミュニケーション」が決して小さくない意思伝達量を占めていることはよく知られていることであり、「意志の伝達」に支障をきたしていた管理者や社員がいたことは想像に難くありません。しかし、それは、「リモートワークの縮小」によって改善すべきことなのでしょうか?私は、リモートワークの社員を操作することに全く不自由を覚えていません。多分それは、「意志を言語にしたり図表にして伝える」ということにかなり高い能力を持っているからだとおもいます。そして、同様に、こまめに成果と障害を報告するタイプ(このタイプはほとんどが女性社員)は、次の成果へと導くことができ、いつまでも黙っている社員は放置していて、成果は上がっていません。

 結果で評価を四半期、半期で行い、成果を出す人を引き上げればよいのであり、言語化が苦手な上司、部下を一同に集めてサポートすることが効率的というわけではない(こういう人は、結局集まってもあいまいな指示、報告しかできず、成果としての最終結果を出すに当たらない「補助人員」にしかなれない)と思います。つまり、「上司」「部下」の要件にこの2年で、「言語化能力」という要素が重要度を増したし、そのことが広く認知されたということです。
 この言語化能力は、実は、会社の日本人同士の上司部下という関係だけでなく、増え続ける「外国人スタッフ」への伝達。あるいはオープンイノベーションスタイルでの外部組織との連携という点でもハブになるリーダーの重要な要件であり、令和の重要スキルなのだと思います。

 そして、今年も話題になった「女性活用」。共同参画ではなく、この言い方をわざわざしているのは、「雇用主」側の立場を反映しているつもりで意図的です。森さんが東京五輪組織委員会を「女性がいると会議が長引く」と言って辞めたのは、今年の2月の話です。「わきまえない」女性が社会を変えていく流れは今年も続きましたが、会社の実情は、決して女性に働きやすいものになってきているとは言えません。それは、「時間が固定的」「場所が固定的」であることが、未だに女性の役割視されている「子供の面倒」との両立を難しくしているからです。
 そう簡単に社会は変わりません。しかし、自分の会社を変えることは経営者ならば可能です。

 私が参画している会社でも、最近では女性の方が遂行意識が高く、かつ事務処理スピードが速い、という事例が多くなっています。これは、おそらくですが、「大企業はまだまだ『優秀な男性』を選好している」(表立ってはそんなことは言わないが、社員全員が一年間の産休を入社後5~10年に続々取得するような事態を回避する必要性が大企業の人事にはある)ことに対して、本来ならば、そこで大企業で採用されていてもおかしくなかったり、あるいは出産を機に辞めることを余儀なくされた優秀層の女性が、中小企業に来てくれているからなのではないか?と思っています。

 中小企業にとって、「女性活用」は大企業に対抗しうる武器なのです。そして、そのためにはそれを可能にする制度設計を行う必要があるのであり、短時間勤務正社員、フレックスや業務委託での短時間の柔軟な作業委託。あるいはリモートワークなどを福祉ではなく、競争戦略として取り入れていく必要があるということです。


長くなったので、2021年を振り返る③④は回を分けてアップすることにします。

 

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