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中小企業はEC化の進捗にどう臨む?

「コロナで大変」という業界がある一方で、あまり目立って声をあげないものの、ネット販売関連は夏以降もビジネス服を除いて好調を維持しています。日本のEC化率は、経済産業省の調べでは毎年0.5%程度のゆっくりとした上昇にとどまっていたのですが、(引用元はこちら)今年は明らかに加速しています。

これが市場が拡大しながら、EC化率が上昇しているのならば、店頭市場・対面市場の規模はあまり変わらない、むしろ拡大しているということもあるのですが、困ったことに多くの産業でそうではなく、EC化率の上昇は店頭・対面市場の縮小を伴って起きています。そして、このEC化の進展は、「自分には関係がない」と思っている方にも着実に影響が及びます。たとえば、今年はアパレル分野のECの伸長が目立っています。これは、大型ショッピングモールのアパレル店の閉店が増える、という直接的影響だけでなく、そこで使われるハンガーや什器の業者、プライス類の消耗品の業者の業績にも影響を与えます。代わりにネット上での商品写真の工夫への費用や発送費用が増加します。織り込みチラシの印刷代や折り込み代は減るので新聞店はさらに苦境に陥り、ネット広告やネットでのクーポンへと原資が移行します。

従来変化がゆっくり起きていたので、あまり対処の必要性を感じていなかったかもしれません。そして、今起きている変化は、「コロナのせい」と片付けて、いつかコロナが沈静化すれば、また元に戻ると思っているかもしれませんが、この「EC化」は元には戻りません。数年分の変化が一度に起きたという理解が正しいのです。

そして、経営者として、縮小する市場にいつまでもとどまっていてはいけません。それをやると、あなたの会社の製品は「伝統工芸化」します。(売れない高級品ということです)では、中小企業はどのように対応していけばよいのでしょう?

中小企業のEC対応とは何をすればよいのだろう?

中小企業の多くは、「商品」を有しておらず、BtoBの取引、わかりやすく言えば「下請け」、限られた取引先にカスタマイズされた専用品や受注生産品、それに近い商品を納めているようなケースが多いのが実情です。しかし、実は、BtoBの領域でも確実にEC化は進捗しています。

EC化という言い方が誤解を招いていて、何か製品を作って、楽天市場かAmazonに出品して、クレジットカードで支払いを受けてヤマト運輸で発送するのが「時代の最先端」と思われているかもしれませんが、それはEC化の流れのごく一部です。中途半端にそれを真似る必要はありません。

中小企業にとってのECの本質的意味とは、きちんと「文字」と「写真や図」で「ユーザーにとっていくらぐらいでどんな成果が得られるのか?やその根拠をきちんと書いておけば、どこかの誰かがそのニーズがあったときに、それを検索してあなたの会社を見つけてくれて商談をネット上で(何らかの形で)開始できる、ということにあります。

さらに言えば、形式上「電子商取引」の分類には入らなくても、そのあとは電話やZOOMで商談してもよいし、FAXで注文書をやり取りしてもよいのであって、それが一日にたくさん起きるようになればお金をかけて周辺の仕組みをつくればよいことです。ですから会社としては「ネット上で日本、あるいは世界から見つけてもらいやすい状況を作る」ことに本質があります。

必要としている人に見つけてもらい、認知してもらうには?

重要なことは次のことです。

  1. ひとに好かれる前にGoogleに好かれないとまず、人の目に触れることすらできません。そして、Googleに好かれるには、「文字で説明」しなければなりません。
  2. その中で、自社の製品やサービスの「外形的で直接ユーザーに関係のある特徴」を目立つように見出し等で記載する。

それぞれご説明します。

多くの中小企業のwebサイトを見ると、多くのケースで「一般論」「表面的なこと」しか書いておらず、「各論」は省略されていたり、他のことと混在して不明確な記述であったりします。しかし、検索する側は、自分の困りごと、探し物という「各論」で検索します。つまり、「できること」「できる価格」をまずは、わかりやすくて、おそらくはそれを必要とする人が調べるときに使うような用語を交えてネット上に表現することが必要です。

このことは、非常によくある間違いです。たとえば、「どんな技術がある」ということを対面で一生懸命説明する人がいますが、聞いている方は、そんなことに興味はなくてどんな製品がいくらぐらいなのかしか関心がありません。同じようにその「長々とした技術の説明」で検索する人はなかなかいないわけで、「できた製品の特長」でバイヤーも検索します。〇nmプロセス、のような技術キーワードは使うことがあるかもしれません。そういうわかりやすい業界一般に流布しているキーワードはOKです。もっと顕著な例になると「歴史がある」ということを書きたがる経営者が特に事業承継した2代目に多くいますが、買い手にとっても検索エンジンにとってもそれは全く関係ないことです。あなたは調達先を探すときに、「歴史」で検索しないでしょう?

そこには経営者が自社でもwebサイトを作ろう、リニューアルしようとした時点での大きな間違いがあります。あなたにあった人でもなければ、あなたの社名やURLでは検索していないですし、創業何年かでも検索していません。あなたが望む「幸運」=Googleであなたのサイトが表示されてクリックされる現象は、製品名やサービス名、技術名などを検索して起きているのであって、写真がきれいであろうが、動画があろうが、その最初の「検索してもらう」ことには一切寄与していません。(検索で表示されたあと、問い合わせという行動に移る確率には、多少は関係するでしょうが。)つまり、「できること」を文字でいっぱい書く、そこにわかりやすいキーワードを含む見出しをつける、ということが一番大事なことなのです。

ようやく検索エンジンに好いてもらえて、表示されたとしても、そこで自社の特徴を今度は人間に認知してもらえるかというと、それはまた同じような課題があります。

これはEC関連ではなくて対面営業でも同じことですが、中小企業経営者のよくある誤解で「歴史」とか「トータルで〇〇」とかいうあいまいで言われてすぐにわからないようなメリット、間接的なメリットは検索されにくいだけでなく、検索された後、読まれても伝わらない、響かない内容です。「金額」とか「納期」、「品質保証(いいというのではなく、返品保障的な)」、「経営の安定性」など「見た瞬間分かるわかりやすい」メリットを短く大きく記載しなければ「認知」にはつながりません。

ToCではこのことは常識ですが、ToBはちゃんと読んで考えてくれるのではないか?という方もいますが、そうだとしたらあなたのサイトのアナリティクスを見て滞留時間を見てみてください。ちなみにこのサイトは、一日平均数百人の方が見られるのですが、平均は1分ちょっとです。(瞬間離脱する人もいるので、読んでくれる人は2,3分いてくれるのかな、と思っています)これはそんなに優秀なほうではないのですが、私が関わる他のToBサイト(1ページのLP)は30秒程度でした。優秀なToBサイトでも2分を超えるようなことはあまりないと言われています。そんなに何分も滞留してじっくり検討などしていないのです。認知を得るには、直接的なメリットをわかりやすく書くことがGoogle向けだけでなく、人間向けにも必要です。このことは実はWebだけでなく、パワポ資料でも同じことです。

どうしてこうなった?どうすればよい?

中小企業の経営者に何を売りたいのか?と聞くと色々なアイデアを持っているのですが、それではなぜ、そんな大雑把で伝わらない総論しか書いていないのか?と聞くと、いつまでも時間がかかるし、予算もかかるから、適当なところで見切りをつけて公開、リニューアルしたのだ、という説明に至ります。確かに最近では、中小企業でもとてもきれいなwebサイトを作っているケースが多くなりました。しかし、成果が上がっている、たとえば技術提供の問い合わせが毎日届くような状況になっているという話はあまり聞きません。

そこで、業界で買ってほしい人がどういう検索調査をするかを自分たちでシミュレーションしてもらうと、いろいろなキーワードが入っていないことが見つかります。やっぱり業務、設備、製品を棚卸して、産出物の説明文を作成するところから始める必要があるのです。これはweb用だけではなく、日常の営業でも同じはずです。

では、それを私がお手伝いしましょう、と言ってそれはどこに書いてあるのか?(web上でなくても、社内の企画書や会議資料でもあるならばそこを起点にできる)と聞くと、結局それは形になっていません。社長の頭の中にあって、社員にすら伝わっていないことも多くあります。まあ、そういうものです。結局、私はみんなの話を聞いてまずはそこを形にするところから始めることになります。ただし、やり始めるといつもわかるのですが、結局皆の頭の中にあるなんとなくは、ぼんやりとしていて何とでも応用できるがそれ自体は何にもならないというものなのです。それを、探している側の立場にたって「こういう時にこういう機能を提供します」と具体化していく作業を徹底してやることになります。その時には、社長や幹部の方から「それだけじゃないんだけどなあ」と言われても、代表的で具体的な用途を割り切って文章に落としていきます。そしてそれはWordやPowerpointで構いません。最初は不完全でも構いません。1日2日でできる範囲でまずは作ってみましょう。

この作業は、一般にweb制作会社はできませんし、やりたくありません。あなたの会社や業界を知らないとまともにできないし、やろうと思うとかなりの手間がかかり、校正にも時間と工数がかかるしそれ以前にビジネスモデルや業界知識が必要です。それなのに、それに見合う勉強も含めたお金をとれないからです。そもそもデザインや文章のプロがする仕事ではなく、これはビジネスモデルのプロがする仕事ですので、しょうがありません。これはweb制作会社ではなく、あなたの会社が(弊社のようなビジネスコンサルを使うなどして)用意するべきものです。

また、制作に何か月もかかってお金もかけて外注するほどの猶予はない、という懸念もあると思いますが、こうしたことを自分で手軽に作ることができるサービスも最近では発達しています。しかも格安です。月額0円~2000円ぐらいで十分なものが作れます。最近、ある会社で社員の方と相談しながら、社員の方が文案出しを1日で行い、それを補筆しながら私の方で次の一日にそれをwebサイト化し、翌日にはGoogle広告を出し始めた、という事例がありました。そういうことが可能な時代なのです。それを自社ドメインにすることも可能ですし、そこで広告を運用することも可能です。毎日修正することも可能です。

そこで出来上がったサイトを「きれいに移植してください」ならば費用と工期を抑制することも可能です。

ちなみにこの過程でものすごく重要な「コツ」があります。それは、「よくできている競合他社の記述を真似してコピペして少し自分なりにアレンジする」ことです。0から文章を書くのが苦手な人でも、この方法ならばできます。そして、自社なりに改変することが可能です。私はよく「自分より良くできている競合の真似をすればよい」ということをいろいろなことで言いますが、仕事は特許などの知的財産権や版権を侵害しない限りカンニングOKです。その方がはるかに時間を短縮できます。

その次にやることは?

その次にはお金をかけて広告を運用することになります。これも実際には「何で検索されているか」を毎日様子を見ながら変えていくという非常に地道な作業です。確かに「広告運用のプロ」がいて、この作業を代行してくれるのですが、結局この作業も「業界人がどんな技術キーワードで検索するか?」の勘をベースに試行錯誤しますので、あまり一般的ではない技術分野では、そうした「運用代行」の人よりも社内の営業担当の方が当たる、ということが起こります。(これも他社サイトからキーワードを見るというような方法があるのですが)この辺はまた、一大知識体系ですし、弊社が最強というわけでもない分野ですので、機械を改めたいと思います。(誰かいい寄稿してくれる方いればリンク、写真付きで寄稿okです)

いつも思う(そして、次稿のテーマ予定です)のですが、中小企業はだいたいニッチなことをやっているので、「外注のプロの方が的確な対応をしてくれる」ということが必ずしも当たりません。プロはデータの見方と試行錯誤がうまいのであって、そこさえわかってしまうと実は自分でもできてしまう、ということは多くあります。

「webで検索されるようにする」という時代の変化に対応する一歩も、業者にたくさんお金を払えば解決するものではなく、「正しい考え方で社内で短期間でやってみる」の方が正しいことが多いように思います。

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