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電話からチャットへ~ユーザーサポートのコロナシフトの本当の狙い

主な法人向けクラウドサービスで電話サポートを「一時」廃止縮小し、チャット、メールベースに移行する動きが3月、4月と相次ぎました。そして、6月になり徐々に業務も正常化し、サポートも元に戻るのか?というとやっぱり戻りません。

企業はホンネはなかなか言わないものですが、これは実は当然のことです。電話サポートを出来れば切り捨てチャットだけにしたい理由は、大きく分けて3つあります。

一つは想像に難くありませんが、電話サポートの対応要員には大きなストレスがかかり、定着率が悪く、そのために派遣や外注に頼ると今度は社内にノウハウがたまりにくいという問題が生じることです。特に窓口担当が女性だった時の中高年男性に多く見られる人を下に見下したような横柄な態度には多くの担当者が辟易とさせられています。その割には、自分の環境を説明したり、自分の操作や発生しているエラーメッセージを正確に伝える力が乏しく、しかもすぐにいらいらし始める。こういう人を相手にしていては低価格のクラウド型サービスは不採算になってしまうので、利用していただかないで結構、というのが口には出さないホンネなのです。オンラインチャットならば、文字に感情は伝わりにくいですし(実は平気で文字でも「なめてんのか」とか書いてくる人も少なからずいるのですが、電話に比べればはるかに対処しやすい)、文字ベースであれば、既に存在する回答を引用して紹介することも容易であり、少ない工数で回答できます。

もう一つは、実は一つ目よりもより重要です。ユーザーとの質疑応答を電話で行うと、その経緯を後から文字でまとめる工数が追加で必要です。これを怠ると、知識ベースの蓄積が進みません。それがチャットベースだとほぼ同時進行で対応履歴のデーターベースの構築を進められます。顧客の環境も自動で確認できますし、顧客の設定を顧客の許可を得て確認することも可能です。

そして、この回答の蓄積はユーザーが自分で自分のトラブルへの対応を検索する際の回答のフィット率を高め、個別対応サポートの負荷を減らしていき、同時に製品改良箇所やサポート資料の補充箇所を特定して対応していく上で決定的に重要です。そして、やがては人がいなくてもAIが回答をしてくれるようになるというのが目指すところです。なぜなら多くの質問は特定箇所に集中しているからです。そこのデータベース整備の効率化・将来の自動化を進めるには、電話対応を併用することは不利、ということです。

さらに3つ目として、昨今の情勢もあり、ユーザーサポートは在宅勤務でもできる仕事、という位置づけが確立しつつあります。このことは時間的、環境的制約があるものの大変優秀な方、たとえばお子さんが小さい方や地方在住の方が業務を担当する可能性を高めるということで労働者にも会社にもメリットがあることです。その際、「音声通話」は録音やセキュリティへの配慮が必要なだけでなく品質コントロールにも難しい面があります。コールセンター型業務は設備投資面でも品質やセキュリティのマネジメント面でも一か所に集合していることが効率的です。チャットならば、管理されたPC1台があれば対応が可能ですので、品質やセキュリティの管理上も有利です。そして、オフィススペースや通勤費などの費用を削減する効果もあります・対応状況や顧客満足度は個々のチャットの内容と顧客のリアクションが自動的に統計されていきますので、隣で監視している必要はありません。

これをデジタルトランスフォーメーションというのかどうか…わかりませんが、チャット、メールへの統一でコストダウンと品質改善の両方を進めることができます。ここで失うのは、「デジタライゼーションに立ち遅れたユーザー」です。そして、時々はその中には規模の大きな企業もあります。それでも、「効率化」を取るかどうかは経営者の判断がいるところです。

最近私もそんなジレンマに悩まされる事例に出会いました。業務用とはいえ、その業界は高齢化が極端に進み、ITリテラシーの不足する人が大多数というマーケットに、クラウドサービス、カード決済、チャットサポートのみの新規立ち上げSaaSを展開することが成長可能なのか?という点を事業計画の中で検討しなければなりませんでした。

私の提言は、「最初の1000ユーザーまでは低リテラシー層は切り捨てて、応対できる人とのwebベースでのコミュニケーションに特化する」というものでした。(会社の結論はまだ出ていません)。どの業界にも優れたITリテラシーを持ち、言語化能力の高い人というのはもちろん少ない割合ですがいらっしゃいます。まず、その人たちを相手にして、サービスを活用してもらい、サポートの中から製品も改良するし、サポートのノウハウやデータベースも改善していく。それを不採算にならないように少ない人数で効率的に進めるためには電話、振込、コンビニ払いなどの低リテラシー用のプロセスを二重に用意しコストをかけることは全て排除するべきだと考えたのです。

また、別の新規事業立ち上げでは、このナレッジデータベース(質問対応)の初期立上げの作業をZenDeskを用いて実施しています。そもそも社内にはそのノウハウがないので、私が初期値を作成して、そのうえで社員から社内SNSで質問を受け回答したものをここへコピペで作成していくプロセスを進めようとしているのですが、そもそも検索に必要なキーワードを入れて文面を作成することは、その業務を詳しく知らないとできないことであり、かつ一定量がたまってこないと、全体としての機能を発揮できないため、サービスインまでに膨大な文字数を打たなくてはならない状況に手がやや腱鞘炎気味です。新規事業を立ち上げ、営業をトレーニングし、サポート体制を整備しようと思うとそういう怪力が必要であることはもとより覚悟の上ですが、私がお請けした条件は、「電話応対はしないで全てSNSで行う。(ただし、初期の顧客への訪問説明は立上げOJTの一貫として実施)」「リアルタイム対応は、曜日時間を限定」することです。(というわけでナレッジの構造化と可視化、データベース化を御手伝いしています、という宣伝です)

弊社も少人数でお客様の新規業務立上げを御手伝いしなければなりませんし、お客様も同様に少人数でなんとか軌道に乗せる必要があるという時に、この辺の「見切り」は事業の維持と発展の重要なポイントであると考えています。

デジタルトランスフォーメーションは中小企業、スタートアップが優れたサービスを開発した初期段階で、浸透価格を取り、同時にサポートを製品強化と顧客満足の両方を成立させる形で行うためにはおそらく必須のものです。低リテラシー相手の不効率な部分を大企業に押し付ける形をとり、自分たちは効率的に成長しやがては大企業と競える体力をつけるための道筋です。

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