最近、気難しい「日本の宿痾論」が続いていたので、気分を変えて統計の話をしたいと思います。
ある歴史ある会社の事例
ある歴史ある従業員は100人、全国3拠点の会社で固定電話の経費診断を実施したときのこと。回線数はファックス含めて60以上あるのですが、基本料の方が通話量よりもはるかに多く、通話量で市内、県外とも定額を払うと通話料が一定範囲まで無料になるというサービスを使っているのですが、どちらも枠をはるかに使い切っていませんでした。
通常の業者ですとこれを見て提案することは、
というような新たなものが売れる、あるいは通信事業者からのコミッションがもらえる話に持っていこうとするでしょう。ちなみに①には気を付けてください。2022年頃から加入電話のIP化がすすめられることになっており、この際、通話料は全国一律3分8.5円と今のひかり電話(3分8.8円ですが、これも同じ価格になるのでしょう。)と同等まで値下げされることが発表されています。しかも、この際の加入者側の設備投資は不要です。ひかり電話が安いから、とかIP化されるから、という理由だけで今大型の設備投資をする必要はありません。
話は戻って、この会社のデータを整理しながら、「昔は全員ガンガン電話かけていたんだろうけど、今、携帯やメールだからなあ、こんなにいらないよな」と思い、その時にはチャネル数や番号の統合がやるべきことであると提言しました。
減少傾向は思った以上だった
その後、新しい統計が発表されているのを発見しまして、4連休の合間に少しめくってみたところ、いろいろと面白くてついつい時間を費やしてしまいました。まず、グラフを見ていただきましょう。以下は、「通信量からみた我が国の音声通信利用状況」(総務省)のデータを私がここから過去の分を引っ張ってきて整理したものです。https://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/eidsystem/market01_05_01.html
1989年は平成元年、以後5年おきに調査しまして、最新版は6月に公表された2018年資料です。
いかがでしょう?まとめると
このことは、言われてみれば実感としてはみなさんあると思います。最近、NTTがハローページの発行終了を発表しました。平成10年~15年頃に私は電話帳データの電子化の仕事をしていた時期があります。私にとってはいろいろな事件に巻き込まれて思い出深い仕事なのですが、当時も4800万件の収録件数が3800万件となり、非掲載世帯の増加によるデータベースの価値の低下が課題となっていましたが、そもそも保有していない家庭も増え、とうとうこうなってしまったか、と思わされたニュースでした。
上のデータからはこんな一通話当たりの時間も見えてきます。
10年単位でみると世の中の変化の大きさには改めて驚かされます。
会社はどうするべきなのか?
上のデータは、個人と法人を合計したものであり、法人だけの統計というのはありません。しかし、上のデータには、おそらくは減っていないであろうアウトバウンド型のコールセンター(いわゆる営業電話)からの発信も大量に含まれていることからすると、会社の通常の業務に用いる電話の使用量も同様の傾向であることは想像できます。実際、会社では、ビジネスホンの子機の前で携帯電話で通話している社員の光景を営業部を中心によく見かけます。
そしてSlackやZOOMがビジネスの中で大きな位置を占めるようになった今、この先しばらくも固定電話の通話時間は減少し続けるでしょう。このような状況で会社がやるべきことは、本当に通信事業者に見積もりを取って「通話量単価を少しでも安くする」ことや「基本料をさげる」ということなのでしょうか?
あるいは、回線数やビジネスホン台数を減らすことでしょうか?それは簡単にできることなのでやれるならばやればよいと思うのですが、そうすると既得権益化した「自分の電話」がなくなることに「不便になる」と文句を言う人が出てきますし、PBX投資自体は減らせません。
そうではないですよね?多くの会社ではこうした大きな世の中の変化にもかかわらず、半世紀前からのPBX+ビジネスホン、それにこの15年ほどは携帯電話を底に追加支給するという構造が変わっていません。それが実にもったいないということがお分かりいただけるでしょう。
会社は、PBXやビジネスホンと携帯電話への2重投資をやめ、あるいは、パソコンと携帯の2重投資をやめ、費用と情報の一元管理を進めることが最適解なのはあきらかでしょう。たとえば、外出が伴う社員や幹部には、携帯電話を支給し、社内での勤務要員には、PCからの「通話もできる」データ通信環境を用意する。そして、外線番号からこれらを有機的につなぐことでリモートワークにも便利で、レイアウト変更や組織変更にも都度費用発生しないで済む構造を実現できるのです。10年前からこうしたIPセントレックスは通信、IT事業者を中心に新たな飯のタネとして盛んに宣伝されてきましたが、当時はまだまだ高くついたものです。しかし、今私の携帯電話に着信する通話の大半は、携帯回線ではなく、データ通信を利用したメッセンジャーやLINE等の通話機能を利用した通話になっています。ITベンダーに騙されることなく、再構築する期は熟してきたという気が今回の統計を見てしたものです。