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横入り禁止は経営成果優先だから!-オペレーショナルエクセレンス⑫

9月から始めたオペレーショナルエクセレンス特集…最初の方はもうお忘れになっているかもしれませんね。前回は、これまで構築してきた「黒字になる」「しかも残業が0になる」工程を維持し、そして逐次改善を継続して進めるために人事評価制度を援用することが必要というお話をしました。前回はこちら

もう、ここまでくると、このような「現代的な」「割り切った」(人を人とも思わない、という言われ方もします)やり方を毛嫌いしている人はだいぶ読者から離脱していて(実際、徐々にアクセスは減ってきています)、「時代の趨勢として理解し部分的にでも学び取り入れざるを得ない」とお考えの方しか残っていないかもしれません…人は、自分の聞きたいことしか耳に入れないものです。今回と次回もそういう、これまでの日本の道徳観に反するような内容が多くなっています。

旧来のやり方で会社が利益も人材も安定的であるならば、何も変える必要はありません。しばらくそのままやられる方が安全です。しかし、多くの中小企業経営者は、「徐々に苦しくなっている」ことを自覚していて、細かな経費の節減などにすでに取り組んでいて、それでも「何か」が足りないことを知っています。しかし、今まで自分が生きてきた外の世界のことはなかなか知ることができないものです。その「何か」を探している経営者にとっても、これが「外国のやり方」と思えることは仕方がありません。しかし、これはそうした「宗教」の違いではなく、「分解して」「数値で合理的に極める」科学的アプローチであり、それに対して今までのやり方が、「人治主義」に根差した「合理性の軽視」「感情による支配」であったのだと私は考えています。そして、もう一つ「単純作業は機械がやる時代」への対応が必要になったということでもあります。

というわけで、今日は、そういう「非合理」の最たるものへの対処ルールのお話です。まずは、命題を2つ一緒にご紹介します。

15.例外の対応要求は工程の各担当ではなく、責任者へポストし、勝手に実施できない仕組みにする。

16.各メンバーは責任者の指示があった作業以外はやらない。

よくある経営者や幹部の間違いですが、「あれもやれ、これもやれ」と追加ばかりする人がいます。おいおいと思って優先順位を確認するとしまいには怒りだす始末。こういう経営者、管理者はホント迷惑ですし、迷惑なだけでなく、無駄な残業を起こして利益を減じている害悪です。それが歴代見逃されてきたので当たり前どころか正しいと思い込んでいるので余計質が悪い。8時間の中で、業務量からしてバッファが得られる時期もありますが(そのように設計していますので)、そうではない時期もあります。その中で、「これをやって、これはやめろ」という取捨選択を具体的に指示するのは、経営者・管理者の仕事であり、個人の判断にゆだねてはいけません。

途中で優先順位が変更になることは悪ではありません。優先順位は継続的に見直されるものであり、見直しが発生する時は常に何かの途中です。しかし、その優先順位の決定は、本当に正しく売り上げや利益の見通しを元に判断されているでしょうか?その基準で経営者や管理者により変更された場合には、変更されるべきですし、その際には一番優先順位が下の業務は、中断、あるいは中止されることになります。

しかし、実際の中小企業には、そのような冷静で合理的な判断により変更されていることはほとんどありません。だいたいは、声の大きい営業が猫なで声で押し込んできたり恫喝したり、というものが多いし、それも金額が大きいかどうかではなく、「将来可能性があるから」という程度で押し込んできます。将来可能性があることなんて、月にいくつも発生していて、そのうち、一つすら実際には実現しないのが実情であることは社内の皆にわかっているはずです。

だからと言って対応しなくてよいというわけではありません。だからこそ、そうした案件に一個一個カスタマイズを加えて対応することをようやく今回整理したのであり、「他社と共用のもの」を適切な制限を加えて提供することをあらかじめ準備しておき、そのドキュメントも共用のものを用意しておけばよいことです。

結果として、優先順位の変更は、新商品やサービスの開発、あるいはオプション開発の優先順位の変更という形で、「ターゲット市場に関する知見が修正追加された」タイミングで起きるのが通常であり、それはそんなに頻繁に起きるものではないはずなのです。月に1,2回そうした知見のアップデートが行われていれば、相当鋭敏、俊敏な経営でしょう。また、そのような「ターゲット市場に対する理解の変更」は事業責任者レベルで承認され、事業部門全社に共有されるはずのものです。

ですから、営業から制作や企画へ「勝手に個人的に依頼する」ことは残業を減らすためではなく、判断を正確にするためにしてはならないことなのです。そして、結果的には業務の所要時間はおおむね正確に見積もられていて残業は発生しなくてもよいはずです。それでもなお、突発的な品質トラブル、事故、あるいは市場の激変などにより緊急事態は起こりえます。その時こそ、残業、土日出勤などを行って全社で乗り切るべきなのですが、そんな事態は、できれば2,3年に1回程度であってほしいものです。

また、16の「各メンバーは責任者の指示があった作業以外はやらない。」には、上の全社の知識を集約して判断する、という事項に加えて、「個人的に向上速度を上げ、改善の実現可能性を高める」という意味もあります。中小企業を構成する「普通の能力の人」であっても、一つの業務を繰り返し実施すれば、速度も品質もどんどん改善します。まず、その段階で「よそ見」をさせてはなりません。そのうえで、彼・彼女は「その工程自体の省力化品質改善を実現する」というミッションを負っているという仕組みを前回の解説で作ったわけですが、これも、とにかく他の作業、雑用に逃げずに「目の前の工程の改善だけに意識、時間を使う。勉強・調査から自分でする」という追い込み方をすることにより実現可能性が高まるのです。先ほどから、自分の案件を勝手に優先したい営業だけを悪者扱いしているようですが、これが実施できてしまっている会社は、実際には「営業にいい顔をしたがる後方担当者」がいて、余計にコストをかけているか、あるいは会社としてやるべき改善をおろそかにしている、改善から逃げているからそうしたことができてしまうのです。経営から与えられた自分のミッションの達成度が低いと報酬に響く制度にすれば、そのミッションの達成に必死になるはずであり、そんな営業の夢物語にいちいち対応している余裕はないはずなのです。

このプロジェクトを通じてあなたの会社は、「いるものもいらないものも多くがごちゃごちゃに混在している」状態だったところから、「最初に売上の8割を占めるが業務量では実は半分以下」の業務に縮退しています。その空いた工数を各業務の公知化、そして効率化に投下する動きをしてきたわけです。逆に言うと、残った業務は絶対に負けてはいけないし、どんどん強化しそれをベースに値下げや宣伝を行い拡販していかなければなりません。そこで負けると危機に陥ります。あなたの会社は「多くのあまり強くない業務で低利益率」の状態から「少しの強い業務で高利益率」へと遷移しようとしていますので、この少しの強い業務をさらに強化するという各担当者に与えられたミッションは、今までのようななあなあの「改善目標」ではなく、「絶対に実現」してもらわなければ会社として脅威となるものなのです。

多くの「普通の人」はこうした「改善」のための調査、試行錯誤、テスト…から逃げ、慣れた「作業」で時間を過ごそうとします。考えること、知らないことを学ぶことやそれをやって失敗することを、常に何か理由を見つけて後回しにしようとするのです。それを許さず、成果としての評価対象である改善状況を月次、週次で追い込むのは管理者の仕事です。その時に、「あれが急に入ってきたのでやる時間がありませんでした」という言い訳をさせない陣形が必要なのです。

次回はこのプロジェクトを進めるうえで、どの会社でも最大の障壁である、「人余り」への対処についてご説明します。今から私も少し気が重いです…

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