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経営を考える時間を創るには

■会社をどう変えるのか?は実は比較的短期で提案できる

中小企業の場合、ご相談をいただいてお話を伺うと、大抵1、2週で何をやるべきかの筋道は立てられます。簡単にいうと多くの場合、何をどのように売るか、そのためにいくら使うかが計画されておらず、何となく同じことを繰り返している、ただそれがとても苦しいという状況に陥っています。

悪いケースでは、期初にその年の売上予算、あるいは必要な額の1,2割しかめどがないなか、毎年毎月0から積み上げるという状況で「出たとこ勝負」状態。こうなると資金計画も賞与計画も全く計画が立たないまま、営業の幸運を祈るしかないというようなケースも実に多くあります。それでも老舗の会社で何となく継続することが期待できる取引が予算の大半はある、という状況はよいのですが、私が以前財務担当をしていた会社など、1件2億円のコンペ案件が20件獲得が計画されていて、それが年50億円の予算の大半。しかもそのコンペ案件は自社の努力でなんとかなるものではなく、その販売先自体がエンドユーザーに対するコンペで競争率は3倍ぐらい、年初に決まっているのは初月の案件ぐらい。これでは「計画」のしようがありませんでした。

その時は、「この会社はほんと酷いなあ。(それ以外に財務も設立前から痛んでいたので)」と思っていましたが、実はこういう状況に陥っている中小企業は世の中にたくさんあるということがその後、多くの会社のお話を伺う立場になり分かってきました。よく「銀行が必要な資金を出さない」、と非難される方がいますが私からするとそれは違います。「銀行は回収可能性が見えない案件にはお金を出さない」のであって、こういう事業の構造の会社に出せるのは、「発注書がある案件の回収までのつなぎ融資」になってしまうのです。

この状況を、「年初に8割方めどがある」「常に新規顧客を追い続けなくてもよい仕組みにする」ことへ組み換えていき、新しい投資は、その状況が実現したあとの人とお金の余力で行う、という筋道を立てるのがまず多くのケースで私たちがご提案することです。それは、商品の売り方であったり、販売や情報のネットワークであったりを大きく変えることになるのですが、それでもゴールの像やそこへの移行方法は大抵の場合は見つかります。

しかし、この仕事~経営改善のパートナー~の本当の難しさはその先にあるのです。

 

■「時間がなくてやれません。」の正体

方向性を社長や幹部の方に提案すると、「なるほどねえ、それなら行けるかもね」と言ってくれるのですが、そこから先、各部門のリーダーの方に具体化策の立案、あるいは立案は難しいという場合は私たちがたたき台を作ることとし、そのためのデータの提供をお願いするのですが、それがなかなか出てきません。私も若い頃は、この現象に対して「忙しいからしょうがない」と思っていたことがあります。今もお客様には「忙しいからしょうがないですね」と協力関係の維持を目的にそうお声がけしていますが、これは実は違うのです。実際、オフィスの片隅に場所をもらってみんなの様子をずっと眺めていると、幹部の方はもともと本人は忙しい、と思っている(実際に時間はかかっている)業務をそのままやり続けていて一日8時間どころか11時間ぐらいを費やしています。

実はこの状況、新しい仕組みを考えるのがしんどくてそこから逃げているだけです。自分の中で定型化しルーチン化した「考えないでもできる仕事」をずっとやり続けていれば給料がもらえる状況が数年続くとそれが習慣化してしまい、考えることが億劫になっているのです。部長級だけでなく社長がそうなっているケースも見かけます。ちょうど、学生時代はスポーツで筋肉と呼吸の限界まで挑戦することが週に2、3回あってそれが当たり前になっていたのが、会社に勤めて数年たつと、カバンをもって電車で往復する以外は何もやらなくなり、腹回りに焦りを感じてランニングでもしなくてはと思う一方で、「今日は寒いから」「今日は日中に仕事でたくさん歩いたから」「今日は風邪ひきかけっぽいから」と連日自分に言い訳するのに似ています。考えること自体は、電車の中でも、風呂の中でもできます。電車の中でゲームに夢中になっているサラリーマンを見ると、「その時間で考えればもっと前に行けるのに」と私はよく思っています。

 

急がば回れで、こういう場合、幹部の方や社長の方に、「経営を考えるフレームワーク」や「類似事例」など頭を使って考えることや、その考えたことを言葉にしてしゃべってもらう機会を作る、ということをまず設けるようにしています。いわば、一緒に軽くジョギングする機会を設けて、汗を流す爽快感を取り戻してもらうことを体同様頭でもやるわけです。ただ、この過程で経営に興味があるとか、自分はもっと成果を上げたい、会社を変えたい、というような意欲と自己肯定感がある方はうまく軌道に乗るケースが多い(といっても2/3ぐらい)のですが、そもそも自分に会社を変えて発展させる義務があると思っていない人(40代以上や管理部門出身者に多い)や、自分にはそんなことはできないと思い込んでいる人(真面目な女性に多い)は、その殻を破れないことが多くあります。そういう人は年齢や現職に関係なく、それぞれの実務をちゃんとやってもらう、ということで合意するしかありません。人はそんなに簡単には変わりません。

大丈夫そうな人がそこまで行けたら、次は、言葉で順不同で考えたことをしゃべってもらって、それを私が形に成型しながら、「あなたが言っているのはこういうことですか?」、「こういう場合もありますよね」「本当にそれでだいたい網羅していますか?」という形で補充する、ということを進めるようにしています。よくコンサルタントの世界では、このプロセスを「壁打ち」と言います。テニスで壁に向かって打つとボールがかえって来る、その反応を見てまた動く、ということを繰り返す中で打ち方と動き方のパターンを身に着けることの頭版です。

そうすると、全員とはいいませんが、もともと部長に選ばれているような人は経営のアスリートだったはずの方ですので、昔の頭の切れを徐々に取り戻す、というのが私が時間をかけてやることです。

 

■それでも社長さんにお願いしたいこと

小さい会社は部長どころか社長すらも兵隊という現実は私もわかっています。でも、私たちが描いたストーリーを今いる社員に押し付けても決してうまくはいかないのです。社員の特性やお客様や協力会社の姿を一番よく知っている部長が「これならいける」と自分で描いたものこそが実現性が最も高いものであり、それを引き出すことが私たちにとっても最善であると私たちは思っています。

 私たちも組織ドライブのプロですので、上で書いたようなトレーニングのような工夫はもちろんします。ただ、それでも社長さんにはお願いしたいのは、社長や部長は、「経営のことを一生懸命考えるのが仕事、そこから逃げるな。時間は作れ」ということを徹底してほしい、ということです。安定的な利益が得られる仕組みを実現すること以上に部長にとって大事な仕事などないのであり、それ以外の仕事は課長や係長に任せても会社は実は何も困りません。むしろその任された人は成長の機会です。必死に考えるところにまずは2週間集中させてほしいし、そのあとも「全勤務時間の半分は明示的に経営を考える時間」と指導してほしいと思っています、そのお相手は私たちが出来ます

誰かが力いっぱい、具体的に会社の方向性を変える仕事をしなくては会社はそのまま惰性で動き続けるばかりです。

 

■時間はいくらでもある

本当に私たちは、一日8時間の勤務時間を最大限活用しているでしょうか?一説によれば本当に集中しているのは1時間程度だとも言われます。それでも、ない、と言われる方に私がお勧めするのが次の方法です。

・メール処理を1日に朝、昼前、夕方の3回にまとめて行う。

今の会社員がメール処理に費やす時間は膨大なものですが、実はそのうち、本当に真面目に処理しなければならないものは少ししかなく、数時間放置していると価値を失っているようなものもたくさんあります。あるいは、一つの課題に対して数時間以内に複数のメールが行き来しているケースは多くありますが、それらを全部見てから返信したほうが内容もまとまっていた返事にでき時間も短縮できます。有給休暇の時までリアルタイムに返信しなければならないような思い込みをしている方がいますが、休みの後、まとめて翌朝処理すると逐次処理の場合よりもはるかに短い時間で適切に処理でき、実はそれでも大方問題ない、という経験がある方は多いと思います。あなたが経営職で、「時間がない」と悩んでいるならば、「思考を途切れ途切れにしないため、まとめて処理することにしている」と言い切ればよいと思います。この方法で、メールソフトに向かう時間は半減できると思います。

 

・移動中にスマホでメモする。

オフィスの椅子に座ってWordに向かっている時にアイデアが浮かぶわけではありません。それは文章や図表にアウトプットにするときの姿。課題の構造を頭の中において気にしながら電車に乗ったり、広告を見たりしていると、それをヒントに頭にアイデアが浮かぶことはよくあります。それをスマホにメモっておくのです。(そうしないといつの間にか忘れていて、数日後にまた思い出したり、ということが起きる。)

目盛ったアイデアのうち、半分以上はたぶんボツです。でも、残りの一部を時間があるときにもう少し考えると形になったりします。iPHONEならデフォルトで「メモ」というアプリがインストールされていてこれを使ってもよいし、他のアプリでもよい。私は、議事録類はDropBoxPaperをつかって下書きを作成しています。また、最近はアイデア部分は「ひとり会議」というアプリを使ってブログアイデアを集めていますし、公演中にもこれでメモをとっています。私が相手ならば、成型していなくても、このDropBoxPaperやメモに記載した状態でメールしてくれて構いません。課題意識とその会社の基礎知識が共有されている状態ならば、そんな簡単なメモでもそこからまた話を再開できますので、立派な提案にまとめる必要はありません。

 

・移動中に調査する。

これは以前にも記載したことがありますが、課題を考えるときに、0から考える必要はありません。関連情報を広告含めて吸収したり、他社の事例を調べたり、ということは一定時間すると、「何を語ればよいのか?」がなんとなくわかってきます。それを自社にあうように真似8割、調整2割でやってみて、そのあとまた考えればよいのです。そうであれば、情報収集をキーワードから行う、ということはスマホで電車の中で十分できるのです。特に、TwitterやFacebookは関係のありそうなアカウントをフォローしておけば情報が自動配信されてきますし、その先の自分が未知のアカウントもそのアカウントがシェアしてくれたり、システムがサジェストしてくれたりしますのでかなり効率的です。私は電車の中はもっぱらこの「調査」に充てて、お客様と話す「最低限の知識」を身に着けるようにしています。

 

優秀な人ほど、オフィスの席にいるときは、部下から上司から呼びかけられ、メールが飛び込んでくるのです。それを制御して後回しにすることが出来れば効率的ですが、その場にいると「いい人」であろうとするのは人の常、そうもいかないでしょう。残業制限も厳しい時代に時間を創るしかありません。私もそうでしたが、東京のサラリーマンは一日2時間、年500時間余りを通勤電車で、さらに出張や営業の移動も含めれば多い人は1000時間程度を移動に費やしているのです。これを活用するのが第一候補です。また、私は、オフィスに帰るとかえって煩わしいので、考えたいときで後の予定が埋まっていない時は、外出後山手線の反対周りに乗って帰ることがありました。(でも、それで集中しすぎて立っていたのに乗り過ごしたこともあります。)

 

ここまでお伝えしても、「なるほど~」といいつつ、それでも実行できないのが人間というものなのですが。

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