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世界は似たようなプロセスで満ちている!?-オペレーショナルエクセレンス③-

弊社では、ベンチャーのお客様もいれば、創業100年を超えるお客様もいるのですが、それぞれ「難しさ」が異なります。ベンチャーの難しさの最たるものは、人、お金、顧客のすべてが不足していることです。一方で歴史がある企業の難しさは、「環境変化に伴いだんだんと不効率になっている社内の仕組みを常にリフレッシュし続ける「チェンジマネジメント」にあります。この「チェンジマネジメント」を如何に巧みに行うかは弊社の一番の得意分野なのですが、そのうち、「方法論」として公開できるレベルの「業務効率の改革方法」、いかに効率の良いオペレーションを実現するか?について、シリーズで連載しています。

改めて「目次」を掲載したいと思います。

  1. 業務のうち、売上の80%を生み出す上位のものを洗い出す。(おそらくそれは全業務量の2,30%)
  2. 各業務のインプットとアウトプットを明確に定義する。
  3. アウトプットの合格基準を明確にし、チェックリストなどに明文化する。同様にインプットもどのような要件があるのか?それが満たされているのか?を確認できるチェックリストを作る。
  4. インプットとアウトプットの間で、中間生成物(ファイル、判断等)ができる箇所や担当を移動する箇所に着目して、工程を分割する。この時、1で洗い出した業務の中で同一や類似のプロセスがないかに注意をする。
  5. 4の中で条件分岐、例外処理を洗い出し、その例外処理が増えた工数分の売り上げを本当に生んでいるのかを確認し、コストパフォーマンスが悪ければ値上げか廃止とする。
  6. 5でできた工程の各プロセスの中で、どのくらいの時間がかかっていて、どのくらいのアウトプットがあるのかを計測する。(たとえば、営業ならば、そのプロセスに進む確率は何%あるのかなど)
  7. 各業務間で共通化できるプロセスを共通化する。
  8. プロセスの手順と品質基準を明らかにする。これができるとチェックリストもできる。
  9. プロセスのうち、時間がかかっているもの、品質が悪いもの(ボトルネック)を洗い出し、そこの改善を集中的に取り組む。その間、他の個所は気にしなくてよい。これにはソフトウエアによる自動化を含むが、5~8の過程で自動化の対象や内容は明確になっている。
  10. 改善した各プロセスに対して手順と品質基準を明らかにし、それができる人材がどのような人材なのかを定義する。これが「職務定義書」となる。また、ドリルやテストでトレーニングと習熟度を確認できるようにする。また、現状の組織ではなく、責任者(利益と品質の)とメンバーという2階層の組織に各業務を組織変更する。ただし、10人を超える業務(中小企業ではこれは意外に少ない)の場合は、途中階層を置く場合がある。
  11. 事業計画上予想される業務量に対して必要な人員数とその最低生産性、品質基準を決める。(利益が出るギリギリいっぱいの人員を配置するのではなく、必要最小数だけを配置する)
  12. 社内で各工程を担当するのに十分なスキルを持つ人をセレクトし、重要性の高いもの(アウトプットを決定づける度合いが大きいもの)から順に優先的に担当を配置する。
  13. 要求品質や効率を満たす社内人員がいない、不足する工程は、満たせる人材を募集しそこに配置する。(できるかどうかわからないのに社内で育成とか言わないで、確実にできる人を連れてくる)
  14. 各工程の日々の生産性、品質指標を追跡し、それを評価指標の重要な一部とする。また、担当工程の改善への提案、貢献を評価対象とする制度とする。
  15. 例外の対応要求は工程の各担当ではなく、責任者へポストし、勝手に実施できない仕組みにする。
  16. 各メンバーは責任者の指示があった作業以外はやらない。
  17. 当日の業務計画上上司が事前に計画した残業「指示」以外はやらない。申請も認めない。できないメンバーは置いていく。
  18. できないメンバーは給与が法規(最低賃金)内で減少する評価制度を導入する。
  19. 売上の残りの20%(業務量の7,80%)を占めるものを上の流れで大幅に改善できそうで、かつ価格改定できるものと、他社に有償譲渡等して廃止するものとに分けて実行する。
  20. 余剰となった社内リソースで最適化した工程への配置から外れた人は、いったんは非専門性の業務の派遣、外注の廃止と内製化に回す。(派遣・外注の廃止)ただし、それでも余剰になるので、営業チーム化するなどの手立てを行う。
  21. 上の流れを毎年1回程度最新データで見直す。手順は3か月に一回アップデートする。アップデートへの貢献は評価する。

前回までで1~3をご紹介しました。前回はこちら。

今回は、4番目の

「インプットとアウトプットの間で、中間生成物(ファイル、判断等)ができる箇所や担当を移動する箇所に着目して、工程を分割する。この時、1で洗い出した業務の中で同一や類似のプロセスがないかに注意をする。」

から話を進めたいと思います。

時々このブログでも書いていますが、なぜ日本の業務管理が海外に比べて不効率なのか?ということには様々な理由がありますがそのうち主要なもののひとつが、この「工程を分解して、その小単位ごとに精度、品質、コストをコントロールする」という基本手法を学校で身に着けていないまま社会に出てきている、ということが挙げられます。

「どんな工程を作るか?」は問題の構造に対する洞察力が必要な部分があるため、ある種の天才性が求められる部分があります。これが30歳を過ぎて身に付くのか?ということはいろいろ考えはするのですが、難しい部分が多いと思います。「たくさんのパターンを知って、類似パターンを見たときに反応できる」という向上の仕方はあると思うのですが、本質的には、自然科学や社会科学の基礎的素養に依存する部分がかなりあると思います。ベンチャー企業ではこちらの重要度が比較的高いと思います。一方で、すでにある工程を整理して改善する、という作業は、これもコツや勉強、トレーニングは必要ではあるのですが、ある程度誰でもできることです。このシリーズでは読者に企業経中小企業の経営者を想定しておりますので、その「どの会社でもやればできる」基本的な方法論をご説明したいと思います。

なぜ分解するのか?

物事を分解して、「部分を改善する」ことを組み合わせる、という手法がなぜ必要なのでしょうか?そのことを社員に説明できますか?

例えば、今あなたの会社で売り上げが予算計画に対して80%程度の達成率で低迷していたとします。あなたは、営業部長を呼んで、なんと言いますか?

なぜ分解して部分を改善する必要があるのかを理解できていない経営者は、「営業がもっと頑張ってくれないと経営がガタガタなんだよ!」「お前、次の奴と部長を交代してもいいんか?」というでしょう。そんなことをしても何の解決にもなっていないどころか、むしろ状況を悪化させていることは明らかですが、いまだにこのレベルの経営者が中小企業では半分以上のような気がします。

あなたが分解して部分を改善する必要があることを理解しているならば、こうした質問をして、データを持ってこい!というでしょう。「新規獲得顧客からの売上が不足しているのか?既存顧客のリピート発注が不足しているのか?」「見込み件数が足りていないのか?受注確率が低下しているのか?」「ニーズが拾えていないのか?ニーズはあるが費用対効果が納得できていないのか?」…

そもそも昨年に比べて、あるいは計画に比べてどうなのか?を比較するためには、これらのデータを計画段階で想定、あるいは集計しておく必要がありますので、そういきなり言われても出てはこないのですが、後者の方が問題個所を特定することが容易です。

さらに、前者の場合、あなたより少し賢い部長は、部門に戻って課長陣を呼んでこういうでしょう。「社長がお怒りですぞ。とりえず、仕掛かり案件全部今週中に進捗確認して動向見極めて。」「それと新規案件、取引先に紹介依頼を今日明日で再度してみて」。種まきと刈り取りの両方に取り組まなくてはならないことがわかっている分だけあなたよりも構造的ですが、これで成果が改善するか?というとしませんよね、その場しのぎでしかありません。

後者の場合は、たとえば「費用対効果が納得してもらえる材料を顧客の社内決済に提示できていない」ということが対処すべき課題と仮定し、そこに必要な資料の作成や、効果の計測スキームの提示、あるいは、お名前の公開と効果計測を条件に、効果が認められない場合は、半分返金キャンペーンを企画するなどのピンポイントの対策を具体的に進めることができます。

なにかの「業務」を改善しようと思うとき、通常は、その業務は適当に見つけたところから順番に改善するには、大きすぎ、以心伝心や直観では改善しないのです。さらに、その中のほんの一部のどこに取り組むかを合理的に決め、そこに集団で英知を絞り出す、ということをしないと改善できません。物事はそれほど簡単ではないのです。普通の人は、ある細かいことに焦点を絞り、ずっとそのことばかり考えたり、調べたり、人に聞いたりしているうちに、有益な情報がキャッチできたり頭の中でだんだんと問題の本質が明確になってくるのであり、いつまでも遠くから傍観しているだけでは何も見えてきません。だから分解して細かなことに着目することを組み合わせ、繰り返していくことが必要なのでです。

どのように分解するのか?

では、どのように分解すればよいのでしょうか?それは、2の「インプットとアウトプットを明らかにする」を思い出してください。そこでは、インプットとアウトプットの特徴で「業務」を特定しましたが、実は、業務を見ていくと、社内の担当間で、あるいは一担当の中でもこの「インプット」と「アウトプット」が積み重なっています。その「中間生成物」を単位に区切るのが一番わかりやすい方法です。

コンピューターのファイルの生成や加工などでそれが自分で見えている場合は簡単ですが、そうではない場合もあります。たとえば、営業の一貫で「与えられたリストにある電話番号に電話をかけ、商品説明をして、訪問アポをとってアポ先訪問して営業して受注する」というものがあったとします(今時は電話、web完結の非対面プロセスが流行ですが、わかりやすい例ということで)。中間生成物は無いように見えますが、これはどのように分解しますか?例えばこんな感じです。

  1. リスト内容をチェックし、電話するのに問題がある対象がないことや、いきなり電話を見知らぬ人にする以外の既存の紹介などのルートがないことを確認する。
  2. リスト対象先と販売商品との関係を説明するための下調べを行い、共通の「トークスクリプト」(シナリオ)を用意する。
  3. 事前にトークスクリプトを話すトレーニングを自分で行い、周囲の人に聞いてもらって改良し、完成させる。
  4. 架電し、アポをいただく。※
  5. 標準資料のほか、アポ先に合わせた補足の資料を用意する。
  6. 訪問
  7. 不明点の確認と回答
  8. お客様社内プロセスの確認
  9. 受注 ※

分解的なアプローチを実施している場合でも、このケースで分解を実施しているのは、おそらく※印の4と9だけの会社が多いと思います。1~3は4の確率を高めるための内部プロセスであり、同様に、5~8は9の確率を高めるための内部プロセスで、4と9は%で表現できる結果であるからです。しかし、目的が「品質・納期、コスト」のコントロールである以上は、内部プロセスも書き出しておいた方が良いと思います。

本題に戻って、なぜこのように分解できるか?というと、それは、細かくインプットとアウトプットを見ているだけではなく、加えて、「事前準備」と「実施」、「事後点検」という流れと、「作成」→「自己チェック」→「組織として承認」という基本プロセスをどのように適用するか?ということを形にする意識が働いているからです。前者は、「いきなり初回を本番でやってもうまくいくわけがない。事前にちゃんと準備とトレーニングが必要」ということ、後者は「組織として一番良い方法を共有し改善する」ということを業務の細部にとにかく組み込もうとするとこういう分解の仕方になるということです。この2つの「人間観」「組織観」こそが、うまくいくポイントです。

最初の試練がこの辺で来る

このような分解の仕方は、ベテラン社員からは「なぜ、わざわざそんなにめんどくさくして、難しくするのか?」という反発を招きます。この辺は変革の最初の試練になることが多いように思います。人間は40歳を過ぎると複雑な構造のあるものを落ち着いてトレースすることができなくなってくるものです。わざわざめんどくさくする理由は、とりあえず、「新規メンバーが誰でも短期間で一定水準まではできるようになるようにするため」としておきましょう。もちろんこれは嘘ではありませんで、主要な目的の一つではあります。しかし、ベテランにこれを言っても「自分はできる」と思っていますし、この時点では変革の全容が見えていないので、納得も得られません。それではどうするか?というと、ここは現状と変化の必要性があると認識していることを社員に説明し、あとは放置してください。理由は次回説明します。

もちろん、売上8割以外の業務(業務量的には半分)から最終的には主要な業務、今の分析対象になっている業務に人が移ってくることになりますので、その準備という側面はあるのですが、この分解にはもう一つ大きな目的があります。それは、「共通化」「流用化」です。

実は世界は似たようなプロセスに満ちている

今日のテーマの後半部分「業務の中で同一や類似のプロセスがないかに注意をする。」は、もう一つ「会社」というものの構造を理解して、改善に取り組もうとするときに非常に重要な内容です。実は、対象の市場が違うとか、対象の商品・サービスが違う、あるいは入力データが違うだけで、「プロセスは似たようなもの」という業務は会社の中にたくさんあるのです。それどころか、会社をまたいでもそのプロセスの組み立て方やチェックの仕方はだいたい共通です。(だからこそ、弊社のようなビジネスプロセスを中心に取り組むコンサルタントというものが成り立つわけです。)

普段いろいろなものが覆いかぶさった状態で私たちは会社に起きている現象を目にしているために、このことを見失いがちです。しかし、こうして分解してプロセスを眺めてみると、「このノウハウはだいたい共通なので、方法論は共有すればよいし、システムも共通化できる、あるいは外注先も同じでよい」というものがたくさん見つかるのです。

そうすると、パーツの改善速度はどんどん早くなり、品質は高いレベルで安定し、スキルとして定着し、また教育の仕組みもできていきます。それこそが、この連載のテーマである「オペレーショナルエクセレンス」の源泉であるのです。

逆に言うと、プロセスは「流用可能」な設計であることに価値があります。その流用可能であるためには、プロセスは程よく分解されていて、それぞれが独立して記述されていた方が好都合なのです。これはシステム開発におけるプログラム設計によく似た考え方です。

ちなみにこの「流用可能」であるためには、手順がきちんと記述されている、ということのほかにもう一つ非常に重要な要素が会社に必要です。それは、「横の風通しがよい」ことです。このことは、一人の非常に優れたリーダーが、各セクションの業務プロセスをきちんと把握して、流用可能性、共用化を指示できる、ということでもよいし、社員が自主的に社内を検索することで気づく、ということでもよいのですが、初期の段階では、前者、つまり「優れた管理者が意識して共用化箇所を探す」ことを通じて、社内にそのような環境を作り出すことが必要になることが多いと思います。

このようにとらえて工夫することで、「お客の数だけ業務はある」と反発していたベテラン営業マンの主張は、まず、「少数の業務だけを対象としても売り上げは減らない」(①にて言及)ことがわかり、さらに、その業務は実は、内部構造がかなり共通であり、それらの品質、コストを改善すれば業務は改善する、ということが明らかになるわけです。

ただ、この過程でこんなにうまく話が進んでいるだけではなく、悩みの種も出てきているはずです。それは先の営業マンが言っていた「お客の数だけ業務はある」の正体である、「枝分かれ」「例外」です。

次回は、それについて5「4の中で条件分岐、例外処理を洗い出し、その例外処理が増えた工数分の売り上げを本当に生んでいるのかを確認し、コストパフォーマンスが悪ければ値上げか廃止とする。」から話を進めたいと思います。

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