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あてになる予算、ならない予算

3月決算の会社では、4月からの予算が機関決定されて実施計画に移るという時期になってきました。皆さん方の会社では、売上予算のどのくらいの割合が現時点で見込めていますか?私は、0%に近い会社から、100%に近い会社まで見てきました。

0%はこんな会社

0% の会社は…できて5年でなくなりました。製造下請けで、元請さんが値段とアイデアのコンペで仕事をメーカーからとってきて、その会社はただ作るだけの二次下請け。アイデアを出すでもなければ直請するための体制づくりをすることもできなかったので、受注金額、確率、物件内容すらも全くアンコントローラブルでした。私はここで経営管理の取締役でしたので、この「自分で自分の運命を決められない状態」が正常ではなく、大変でも直営業できるような知識と能力を有する人間、事業に入れ替えていくことを強く訴えたのですが、力及ばず時間切れで会社を破綻させました。これはひどすぎる例ではあるのですが、「主要顧客がいる」とは言っても、その顧客の意向に左右されて売上が乱高下するような、そして毎年0から積み上げなければならない会社というのは世の中にたくさんあります。

昔はこれが当たり前でした。そして、多少は業績が見込みからずれても金融機関も許してくれたし、顧客もサプライヤーが死ななない程度には支援してくれました。しかし、今はそんな温情はなくなってしまいました。一定以上の誤差は企業の生死に関わります。毎四半期ごとに取引先銀行に未達を報告すると期の冷たい視線と徐々に引きはがされていく与信の恐怖は二度と味わいたくもないし、当社のお付き合い先にも味会わせたくないものですが、古いオーナー経営者の中にはその時代の変化をまだ認められない方も多くおられます。

100%はこうなっている

100%に近い会社は…売上のほぼすべてがストック性の契約の積み上げで構成されていました。したがって、過去の統計から見込まれている解約率を乗じて得られる当期の売上がほぼほぼ見込める状態でした。しかも、ユーザー企業で必要性が高いサービスであり、スイッチングコストが解約違約金などの方法で適切に高く設定されていたため、解約率が比較的低く抑制されていました。

このような会社では営業予算はどのようになっているか、というと、「新規獲得」、つまり新しくストックを増やすことをミッションとして与えられるという仕組みになっています。そのため営業の現場は決して楽ではないのですが、経営的にはもちろん誤差を少なくできます。営業利益は、営業に投下する人員数と販促費(代理店への支払コミッション)によってコントロール可能ですので、増益したければ、新規獲得の勢いを止めればよいのですし、市場が飽和し収穫が逓減してくれば、それに合わせて営業コストを減らしていき、営業利益を確保することができるのです。

達成されないであろう予算

どちらでも今の時期になると営業予算を取締役会で承認するのですが、0%の方は、はっきり言って売上予算を作る意味がありません。人件費と見込まれる活動によって生じる旅費交通費や固定費を集計して示して、それを回収する自覚を持ってもらうぐらいしかありませんが、そんな「ノルマ」を課したところで気合で数字を作れるわけではありませんで、「確率論」でしかなく、多くの場合、その確率は100%よりも下の方向に偏ります。理由は当たり前のことでして、売上予算を経営の要求として前期よりも拡大しているのに、営業の人的資源や商品競争力、広告投下は拡大していない上、競合に研究され市場のニーズは顕在化とともに高度化しているからです。

それなのに、適当にその場しのぎの予算を事業部は作り、取締役はそれを「どうせあてにならない」と思いつつ承認する、そんな場面が世の中にはたくさんありますが、もうそんなやり方は社の内外の信用を失うばかりであり、やめた方がよい。はっきりいうならば、「あてになる範囲で十分利益が出る範囲まで業容を縮小し、余資をもってあてになる範囲の拡大だけに注力する」べき、当てにならない営業の仕方しかできない人員や顧客、事業は意図的に減らすべきです。

たとえば、官公庁の仕事というのは、実は価格だけでなくいろいろな優位性の構築の工夫の仕方はあるわけですが、そうは言っても毎年0からのスタートであり、しかも翌年も同様の事業が継続するとは限りません。競合が現れれば当然比較されます。あなたがもし、経営者ではなく、投資家、あるいは銀行だとしたら、こうした「官公庁に強い0からの会社」と「ストック収益が見えている会社」のどちらに投資しますか?答えは当然後者でしょう。実際、後者の構造を有し、安定した利益を計上する企業の株主を見ると、海外の機関投資家の投資が多くみられており時価総額の上位を占めています。大事な年金資金を投資に回すには、不安定な前者は対象足り得ないのです。

実際、期初に売上見込みが全然固まっていない会社にいると、経営も営業も本当にしんどい。本当は、マーケティング、労務、商品改良などをやらなくてはならないはずなのに直近の数字以外のことに目を向ける余裕などありません。営業はなんとなく疲弊していて退職率も高く、管理では数字の不正操作が起こりやすい状況にあることに警戒しつづけなくてはなりません。

「持続可能」であるということ

このように、外部の目も、内部の人員もこのような「毎年0から積み上げ」の企業は「持続可能」ではないのであり、どうにかして期初に必要な売上の8割程度は見えている、という状況に体制を変えなくてはならないのです。

もちろん、営業部で「来期商談」である程度の見込みを立てることはできるでしょう。しかし、それとて、相手の経営環境の変化によって縮小されても違約金がもらえる性質のものではありませんし、次の1年の予定がわかっているだけで、自分で拡大縮小を制御できているわけではありません。こうした「力関係下」にいるだけでは解決できない問題であり、現場に任せず経営的に資源配分を変得る必要があることです。

一つの方策は、「ストック型」(サブスクリプション型)のサービスを設定し、月次課金を行うような方策を各種のサービスで取り入れることです。もちろん、これは簡単なことではありません。既存の商品を既存の顧客に月次課金に変更して課金したところで、顧客にとっては「価値」は変わりません。ストック型のビジネスは、「月々の利用価値」に対して課金すると同時に、ニーズの拡大や変質に対して、素早く追従対応していく柔軟さにあります。その辺については、このシリーズでかつてとりあげておりますので、参考にしていただければ幸いです。

もちろん、この問題は、「課金形式」の問題ではありません。顧客との長期的な関係性、顧客の長期的利益への貢献ということが背景にあります。同時に安定的な需要が見込めることが結局は余分に利益を取らなくても収支の見込みが立つことから顧客への提供価格を抑制することにつながり、それがまた競争力を強化できる、という循環を作ることに本質的価値があります。しかし、それと「保証のない下請け」「言われたものを作る仕事」とは本質的に違いがあり、同時に必要となる人材も相違します。したがって、「見込みの立たない業務を縮小し、見込みを立てることに注力する」時に、社内にはそれができる人とできない人が出てきてしまいます。いろいろ教育の機会を作っても、長年御用聞き営業に馴れてしまった人の一部はこれに適応できません。その組織変革と採用まで含めての経営改革になります。

最初に戻って、来期予算は「十分実現性がありますか?」そして、「次の期、その次の期の数字までだいたい見える、ということに寄与するものになっていますか?」そうではない数字とそこに携わる費用・人の投下はもうやめてしまいましょう。人口が減り、需要が減り危機に至るその前に変えなければならない責任が経営者にはあります。

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