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環境変化へ備えるには?

ある会社の経営者の方と年初から、その会社の市場と競合について少し整理を続けていました。生産人口減に始まりショッピングセンターの減少とその業界でのEC化率の進展、海外生産の労賃や生産コスト上昇、コンテナ輸送費の高止まり(これは昨年は中国発アメリカ行きに関しては多少緩んだのですが、ベトナム発は逆に大幅に需要増した)…と調べていき、直面している問題の実像について「見える化」していきました。あらかじめわかってはいたことなのですが、改めて整理してみると、環境変化の影響、それも事業に対するマイナス要素の大きさには寒くなる思いです。こうした環境変化に対して、よく「10年単位でみると大きな変化が起きている」という言い方がされてきましたが、それはむしろ過少な見積だとこうした基礎整理をするたびに感じます。たとえば上に上げたような要素の掛け算で需要が決まるとすると、2年、3年で需要が2割、3割のインパクトを受けるような激しい変化の中に私たちはいるのです。

話は少し変わりますが、新型コロナウイルスによる肺炎の流行とこれに伴う中国日本両政府の移動制限。あるいは日本が第二の感染大国であることからのアジアからの観光客減により、大きなインパクトを受けるインバウンド需要狙いの事業者が今年は地方を中心に出てきそうです。これも、短期突発的な環境変化と言えそうです。最近関わっている、とある官公庁案件でも政府方針である「インバウンド需要」重視の方針が令和2年度方針でも示されていたのですが、こうなると私としては、地方で「法人需要の安定的な獲得」を提案する地域があってもよいのではないか?と担当官にお話ししたことが現実のものとなってきました。そう簡単には政府方針は変わらないのでしょうが、「隣の会社(この場合市町村)と同じ」でない方が良いことがマーケティングでは多いものです。

短期的な環境変化には、他にも、「最大顧客の方針変更」や「その顧客の経営状況の変化」のようなものも起こり得ます。一例をお話しすると、数年前…地方の年商数百億規模の大手小売業者様に対して大型の導入提案をして現場の内諾をいただいたうえで、社長にプレゼンをする日がやってきました。発足したばかりの企業の責任者だった私は、垂直立上げの重要なステップが今日終わるということに興奮していまいた。ところが現れたオーナー社長は、妙にいらだっておられ、社員を怒鳴りちらし、とうとう途中で席を立ってしまわれました。あっけにとられつつ東京へ帰ると翌日、その会社が業界トップ企業に買収されることが発表されました。その会社の全ての投資購買等決定は一旦全部ストップし、買収先が再評価することとなり私の提案を含めて概ね中止され、立ち上げたばかりのこの会社の事業計画に大きな誤算が生じてしまいました。余談ですが、その被買収発表の日は私の誕生日で、祝勝会が準備されていましたがあえなく中止になりました。

こうした「環境変化」に中小企業はどのように対策すればよいのでしょう?もちろん、多角化-しっかりとした事業基盤のあるサービスを複数擁する―すればリスクは減りますが、多角化というほど事業が沢山ないから中小企業なので、それでは答えになっていません。そして、それは一朝一夕で作れるようなものでもありません。

そう言ってこれから書くことも「当たり前」のことではあるのですが、それでも現実に取り組み可能であることだと思い、整理することにします。特に中小企業では、一つの案件を「受注」することに必死であり、その「受注の仕方」に無頓着であることが多いようです。しかし、そこに環境変化に対する「安定性」を損ねる原因があります。代表的なものはこんなものです。その必死さを向ける方向性がずれていたり、あるいは下を向いて歯を食いしばりすぎていて、少し先に落とし穴があることを見落としていませんか?と言いたいのです。

①その受注は継続性がありますか?継続性が期待できる顧客に、継続性があるとお互いにメリット(価格やサポート)がある提案をしていますか?

「一度きり」を売り切ることに必死になり、それを「まずは口座を開く」と自分に言い訳をして、値段を下げて獲得する。そんな光景が中小企業ではよくあり、そしてそれは多くの場合称えられる行為です。しかし、それでも2度目が要らない人は要りません。毎年毎四半期その「特攻の奇跡」を追いかけ続けるのですか?と私はそういうやり方に冷たく言い放ちます。

最近「サブスク」を形だけの分割払いと勘違いしている事例がありますが、そうではなく、「継続性」を前提に顧客にとっては、単発よりもいろいろなメリットが存在する状況を作り込み、それを「継続性を期待できる(必要としている)顧客」にだけ提案することに意味があるのです。スタート時点で誤っていませんか?

②原価や直接費の低減を強く推し進めていますか?

もし継続性がある商品、あるいは完全に同一ではなくても「横展開」の名のもとに類似商品を販売できるという状況があるときに、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目、そして一年後と進むにつれてかかる工数と外部に支払うコストはきちんと低減できていますか?これも当たり前のことでありながら、人的リソースの限られる中小企業では往々にして、初期に苦し紛れで構築した手順や調達先がそのまま長期間維持されている、ということが多く見られます。

初回に全体像を構築するときに必要となるバイタリティというのは大変なものであり、その時に必死に探してきた方法や取引先をとりあえず当てはめて全体を回し始める、というのはしょうがないことです。しかし、そのあとに再度集まった情報を整理し調査交渉するとコストは大幅に下げられるはずです。具体的には手順も自動化したり、他業務と統合したりと言うことも可能ですし、調達先もより良い品質のものをより安く安定的に調達することができるはずです。経営者はそもそも売れるかどうかわからない段階で調達した価格が、時間がたってそれなりには軌道に乗ってきたときにも適用されていることに疑問を感じるべきです。

このように継続性が確保され繰り返される中で利益体質が継続的に改善していけば、環境変化により調達価格のアップや需要の減少が起きた際でも当初に比べて大きく許容可能な余裕が生まれているはずであり、環境変化への対応の時間的猶予が得られるのです。

逆にこうした「継続的改善による利益改善」という要素が見込めないような単発業務で数多くの仕入先と商談し(この工数は本当に大変です)、手順書を構築するのは「労力の無駄」だと思います。その工数分高くても、実際の利益は同じなのですから。だからと言って品質トラブルを起こしてよいわけでもないのですから、きちんとやらざるを得ないのも事実です。その1回のために新規取引先を現場でも経理でも管理・登録作業をして、売掛金の入金消込作業をして、と管理にも負担をかけます。結局、こういう業務は余裕のない中小企業では重きを置いてやるべきではないのです。余裕のある中で、市場、手順、仕入先などの要素の中で、半分は流用できる程度のものを、「新規事業トライアル」としてやるのがせいぜいであり、「ほとんどが新規のもの」を「新規事業」と呼んで頑張らせるようなことをさせてはいけません。

③入金サイト

もう一つ重要なのは、利益には直接は関係しませんが、入金サイトの問題です。利益環境が悪化してきても、資金負担が少ない業務、たとえば前払をうけることができる業務であれば、赤字ではない限り持続しながら対策を考えることが可能です。しかし、入金がはるか先なのに、「売上の絶対額が大きいから」と言って、これを温存すると、利益率が低い状態=借り入れが返済できない状態、であるのに、借入を必要とする、という状況が生まれてしまいます。その時になって慌てて入金サイトを含む条件を改善しようと思っても、こういう業務は相手の力が強くて改善できません。

ちゃんと契約書や注文書があり、相手方が信用力がある取引先であるならば、一定額まではこれをベースに、金融機関からの短期借入やファクタリングで資金をつなぐということも可能ですが、これにも限度があります。銀行取引はなかなか急には拡大できないものです。その上、中小企業の場合ルールが甘く、注文書すらないようなケースも多くあります。それならば、こういう取引を停止すればよいのですが、概してこういう取引は相手が大手企業や官公庁なもので、経営者の心理として手放せず、優先順位の誤りを起こしてしまうことがあります。

なぜ、改善できないのか?

なぜ、書かれてみれば当たり前のこんなことが、多くの中小企業では改善できないのでしょうか?真の問題はそこにあります。

表面的には、大企業に比べて顧客との取引関係の安定性が低く、利益率も低く、人材の余力や能力自体も低いケースが多いため、常に外乱要因への対応に追われ、それで手一杯だから、というのが起きている現象です。つまり、皮肉なことに、「環境変化への対応が取れないのは、環境変化への対応に常に追われているから」です。

しかし、その現象を見てみると、そこで起きていることは、「専門性もないことに一人一人がバラバラな困りごとに追われている」し、改善しろ、と言われた場合も、一人一人バラバラなことを改善することを求められている、という「兵站が伸びきっている」状況にあるのではないか?というのが私の考えです。つまり、処方箋は、「すでに強みを持っていてやり方が確立している箇所に一旦戦線を縮小せよ」ということです。その強みを有する箇所は、おそらくは交渉力も発揮できる箇所ですので、そこでまず上の改善を進めることを優先するべきであり、その他の箇所は状況次第では捨ててもよいであろう、ということです。本来の意味での「リストラクチャリング」ですね。

実はこのこと自体も当たり前のことではあるのです。それを実施できないのは、経営者の過信や思い込みが目を曇らせているのだと思います。

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