雨の中、参議院選挙真っただ中です。私は政治は経営にとっては環境条件でしかないと思っているので、特に働きかけも感想もありません。そういうと政治に批判的だとも思われるのですがそういうわけでもありません。たまにはとんでもない系の人物が現れて物議を醸しますが、私が知る限り政治家、あるいは高い職位の官僚というのは非常に豊富な知識と人脈をもち、高い思考能力を有している人が多い。そして、それなりの高い見識を有しており、一定の判断基準を持っています。その判断基準の多くは、「国としての発展の方向付け」と「最大多数の最大幸福」であることが多いようです。短時間にどんどん案件をさばいていく政治家の事務所内での仕事の様子を知る人は多くないのでしょうが、話を聞き分析し、必要な要素を持つ行政のキーマンに電話でその場で確認しマッチングし、と大変なことをしているのです。
政治家を口汚く罵る人も多いですが、そういう人の多くは自分で組織のトップに立ち経営したことのない人なのではないかと思います。人の上に立つこと、先頭に立つことは誰も理解してくれないことに堪えることでもあるのです。そして、やってみると口で言うほどにはうまくできません。あなたがそうであるように、人は政治や経営のリーダーの言葉なんて誰も聞いておらず、あるいは全体の利益など何も考えておらず、「自分が有能である」と主張し、「自分の損得」を社会の正義であるかのように主張するものです。一度経営を担い、経営計画を未達にし、あるいは賃上げ交渉を挑まれるとそういう人間の性がよくわかり、そしてほとほと嫌になるものです。
経営者も、政治家と同じように自分の会社の発展の方向性と速度を決め、そしてできれば社員の幸福を図りつつ存続の安定性を固めていきたいと思っています。そして、今の時代、最低限の存続の安定性を維持するためでさえ、相当大きな変化の決断を強いられます。また、発展速度を上げようと思うと、今いる社員を置いてけぼりにして新しい社員を集めるようなことをしたり、今までのやり方で社員が満足していたものを変えて社員の居心地が悪くなるようなことでもしなければなりません。
そうして、経営者は社員に政治家と同じように言われるのです。ただし、関係性が近いので、罵られる、というよりは陰口を言われるのです。「全然わかっていない」
慣れていない若いリーダーはその言葉にうろたえます。仕事の「仲間」を失いたくないのです。経営者として組織を未来へ引っ張っていく、という「経営」という点において本当の仲間がいる経営者は幸せであり、多くの若い経営者はそれがいません。そして、そこにとても深い孤独を感じます。
顧客のことは社員の方が経営者よりもよく知っているので、よく耳を傾ける必要がありますが、市場や経営環境、あるいは会社の状況や競合の状況は経営者の方が社員よりも情報量がはるかに多く、よく知っています。そして、多くの経営者は社員と違って自分の会社の経営のことを24時間考え続けていますので、会社をどの方向に変えていくことが正解に近いか、そのためにどうすればよいか、は多くの場合社員よりもわかっています。そして、それを共有でき理解してくれる社員というのは非常に少ない。(これを見つける、というのがとても重要ですがこれは別の機会に)
私は、彼にこう言います。「意味は一通り文章にして1回は説明しましょう。でも、いつまでもそれを言い続け理解してもらうことを待つ必要はありません。あなたは前に進んで、付いていけない人は置いて行けばよい。途中でついていきたい人をまた集めればよい」。これは社員に言わない方が良いことが多いですが、「嫌ならやめていいよ」と心の中では言いながらでないと、とても会社を変えていくことなど堪えられない苦行になってしまうのです。
政治はこれが出来ません。選挙が存在するからです。しかし、経営はできます。経営は法律の範囲内で商品が市民に支持され売れ、社員にきちんと給与が払え、株主に配当が払えれば株主が再任してくれるからです。
従業員でもないので、上司に心証で評価されて給与が下がることもありません。いくら社員の心証が悪くても(法律や社会規範の範囲は別として)、会社が成長し昇給させることができればそれで構わないし、実はそれで心証の問題はほとんど解決できます。そして、学校でもないので、落ちこぼれや遅刻者を救済する必要もありません。定められたルールに基づき取り残して言って構わないのです。
社長の仕事の仕方は、学校とも違うし、従業員とも違います。政治家や公共とも違うのですが、そうしたことを教えてくれる先任士官がなかなかいないため、若いリーダーはそこに迷うのです。
政治家も経営者もとても孤独な存在であり、そうした悲しみに寄り添ってあげたいと私は思っています。そして、経営者の方が、政治家よりもまだやりやすいな、ともオープンカフェで選挙の演説が聞こえてくるなか、仕事をしながら考えていました。