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経費削減講座25 段ボール類

製造業ですと出荷に当たって、段ボール類はものすごくたくさん使うと思います。私もこの仕事を始める前は知らなかったのですが、段ボール箱には統一的な規格というものがありません。文具通販などではNo1,とかNo12とか言う番号が振ってありますがあれは独自の規格であり他社に通用するものではありません。そのため、段ボールはほとんどオーダーメードで作成される、という特性があります。これを知って「宅配便の規格に合わせて規格化した方が安くしやすいし、世の中便利になるんじゃないか?」ということも業界の方とお話したことがあるのですが、実はサイズだけでなく、たとえば「強度」も中身に応じて様々です。一般の方が見るものでは、強度が高いものは、中の波波の部分が芯材の両側に二重になっているタイプ(ダブルフルートといいます。)もありますし、表面の紙の厚さによっても強度が変わります。また、蓋の閉め方も、一般的に多いのは一枚の紙からカットして4辺を閉じてガムテープ等で張り付けるやり方ですが、たとえば輸出入で使うものは水濡れや強度に耐えられるよう蓋部分と箱部分が独立していて蓋を上からかぶせて結束して出荷するようなタイプ(ダブルパッキンと言います。)が用いられるなど様々な商品がニーズに応じて作成されています。

さらに、ここに「印刷」という要素が加わります。これは、出荷時、輸送時の誤認をふせぐための文字やコード(カートンマーク)という実用面もあれば、通販サイトやピザチェーンのように箱自体にデザインを行っているような、カラーでキレイに印刷されたものもあります。ここは印刷費用に述べたのと同様のコストが色が増えると版が増える、という形でコストがかかってきますし、納期もその分伸びることになります。

さらに大規模な生産ラインでは、この箱を組み立ててそこへ商品を封入する作業も自動化されている場合があります。そのような工程では、「自動製函機」と呼ばれる箱を組み立ててピン止めするような機械が使われており、無人で分速50個ぐらい組み立ててくれます。そこへ強度不足の箱を投入するとどうなるかというと・・・製函機が止まってしまい人が来て壊れた箱を除去してラインを再起動します。これでは多少、箱の調達代を安くしたところでその何倍も損してしまいます。箱代だけをぎりぎりの強度で安くすればよい、というものでもないのです。

 

ここまで見てきたように段ボール代を安くする、というのは決して簡単ではありません。伝票見て、サイズデータをもらえばよいものではなく、実物の強度と印刷、それに内容物がどのようなものでどのような重量で封入はどんな工程か、ということを理解したうえで考える必要があります。ただ、そう言っていては業者の言いなりです。その上で自分たちで交渉できる点や工夫できる点はどこなのか、を中心にご説明します。

 

1 ロットサイズと輸送費低減の工夫

段ボールの費用を考える上で重要なのは、これらの製造原価、印刷コストだけでなく、段ボールが空白を多く含みかさばるゆえに、輸送費、保管費が他の製品に比べて比重が大きい、ということです。大雑把な言い方ですが、段ボールの代金の三分の一が輸送費だ、という言い方もされています。かさばるが故に、発注主は相手の都合も考えず、業者に「いるときにいるだけ持ってきて」ということを要求しがちです。オフィスの空きスペースに段ボールを山積みしておくわけにもいかないのでそれはしょうがないのですが、ここに段7ールが下がらないポイントが隠されています。

うんと大量の場合には、製造工程自体で抜型を専用のものを作成してこれをもとに大量生産大量輸送する、という方法を用います。しかし、そうではない場合は、汎用型を都度変更しながら使用します。変更作業(セットアップ)にかかる人件費は量の多寡にかかわらず同じです。また、1か所に配送する費用も、トラックに満載しても少量載せても同じです。したがって、製造ロット、輸送ロットを大きくすることがまず最初に取り組むべきことです。そして、複数拠点でバラバラに発注していたものを製造と配送のタイミングを同一にする。できるだけ種類を統一する。そして配送時は近隣の拠点はで切るだけルートを組んで同じ車両で配送できるようにする。そうすることによってセットアップのコストと輸送費をだいぶ変えることが可能です。逆に製造までに待ち時間ができることになりますので、各発送元にはそれに耐えうるだけの在庫を保有する必要があります。

類似の事例で以前に担当した例では、月間60万箱ぐらい使用する工場で、「発注したら6時間以内に10トン車3台程度を納品」という要求をしているメーカーがありました。ロットサイズという点では全く文句のつけようがありませんが、それでもこれでは100キロ圏内に作り置きして在庫しておくしかないわけです。この工場は郊外に広い敷地をもっていましたので、仮に工場側に在庫を保有しておいて、このリードタイムを変更すれば多少は下げられた、というケースもありました。

 

2 強度基準の見直し

一番最初に現在使われている箱を選定した際、強度についてかなり余裕のあるものを選んではいないでしょうか?あるいは、業者の言いなりの商品を選定し、その後もその商品を基準に相見積もりを取得していませんでしょうか?強度が高いものを使えば安心ですが、実は強度を落とせば結構価格は変わります。今の品質が過剰品質ではないかを第三者の専門家に相談してみると、そこで変更の余地があるケースが意外にも多いのです。

ただ、冒頭に紹介した自動製箱機の場合は、私も怖くて強度を落とす勇気がありません。

 

3 稼働率の低い工場への見積もり

これはプロの力を借りる必要がありますが、段ボールの値段に影響を及ぼす大きな要素は「大型の設備代」です。しかもユーザーが先ほどの例のようにわがままな要求ばかりするので、稼働率を平準化することがなかなか難しく、さほど稼働率が高くない大工場が実はたくさんあります。これは段ボール工場の電気代のデータを見ると明らかでして、年間1億円の電気代をつかうような大きな段ボール工場でも、実はピーク時間は月のうち、限られた時間数しかなかったりします。大きな業務の場合、こうした工場に一定期間の発注量を約束し、かつリードタイムを長めにとって稼働率の確保に役に立つような提案をしたうえで、価格はさげられるはずでしょう?という交渉をする、という方法があります。双方メリットがある話に持っていく、ということが大事です。

 

4 最近の動向と相場変動の利用

今年に入って国際パルプ市場は値上がり傾向にあり、これに伴い段ボールも値上がり傾向にあります。日経新聞にも相場が掲載されていますが、実は段ボール(というか紙パ流布製品全般に実はそうなのですが、付加価値・利幅が薄く、相場がそのまま反映されやすいという点において)は相場商品です。これを断固拒否するような動きをすると、高めの安全目の値段を売り手は提案せざるを得ないし、相場をある程度受け入れて、事前通知などの交渉をする形にすると安いときには安く変え、相手の安全率を低い状態に抑えこんだ調達が可能です。(これはLPガスの時に同じ構造をお話しました。)

 

5 段ボールを大量に受け取る方

たとえばスーパーやドラッグストアなど段ボールを大量に受け取る方は、段ボールはそこそこの有価物として売却することが可能です。ただし、この場合もやっぱり嵩張って輸送費がかさむ、ということがその売却益の相殺要因になります。本当にいつもの廃棄物処理業者に他のものを廃棄するついでに処理してもらうのがよいか、というと必ずしもそうではありません。むしろこれは損している場合がかなりあります。一番良いのは、近辺にルートを有する買取業者ですが、それを探すのはなかなか大変です。私は全国に買取網を張っている業者さんにそういうケースでは打診しています。

最近知り合ったある中堅スーパーさんはすべて産業廃棄物業者が他のごみとまぜてパッカー車で回収していました。たぶん、全店では年間数百万円規模で損しているのですが、ただでプロの知恵を教えてあげてもまだ改善する気がないようです。昔は食品スーパーの雄と言われたところなんですが、最近の低迷の要因を垣間見るようです。

 

いずれにせよ製造業にとって資材費は目の付け所です。ただ、原材料と異なり知識が足りずに手が付けられていないケースが多いようです。今回ご紹介したような仕組みを知れば、自社にあった対策点は見いだせるはずですので、ぜひお取り組みください。

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