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中小企業にAMAZON BUSINESSは使えるか?リベンジ編

大企業ならば、交渉で、あるいは交渉しなくとも相手から進んで割引を提案され、世の中の人が驚くような安価でいろいろなものを利用することができます。しかし、中小企業は違います。何もしなければなんでも高値で買わされますし、安くしようと思うと、手間や納期が犠牲になります。それを何とかできないものか?という実際の現場の実用的な話をいくつか今月はご紹介していきたいと思っています。

1回目は文具、備品の調達です。多くの会社では「アスクル」などの文具通販を利用されていると思います。そこに1年ほど前から参入してきたのが、巨人AMAZON。これについては、実は半年ほど前に特集をしています。

そして、その時は、「総合的にみるとまだまだアスクルをメインで使うことが中小企業でも正解」という結論を出しました。そのうえで上のリンクの末尾に私は書きました。

これから優秀な責任者が取り組まれるのだと思いますが、誰にとってどういうメリットがあるのか?をきちんと打ち出していき、しかも、日本の企業の総務、経理の担当者のわがままを理解し取り込まないと、今のままでは皆、「自分にはメリットないサービス」と感じるのではないでしょうか?2回シリーズにする予定だったのですが、今回はこのくらいにして、半年後に再度見てみたいと思います。

さあ、その時がやってきました。

中小企業にとっての文具・備品通販の評価軸とは

最初に中小企業は、何によって通販を選んでいるのかを整理しておきたいと思います。大企業の様に調達量に一般には多くありません。その割には同じように「すぐ欲しい」という要望は強くあります。昔はカウンターの下の扉を開けるとボールペンやホチキスの針が山のように在庫がある光景があちこちで見られましたが、文具通販の出現で、その在庫置き場は、通販会社側に移ったのです。これは健全なことだと思います。そのため、中小企業での調達先の選定の評価軸は、多くの場合、次の順番になっているように思います。

  1. 価格
  2. ワンストップの実現と納期
  3. 支払の利便性と部門別集計等経理処理のしやすさ

また、購入対象品目は、業種が多様なため、特定することは困難ですが、文具類、消耗品・備品、そして一部の設備などが多くの会社で対象になっています。そこで、今回は、前回と同じものも多いのですが、以下のもので評価を行うことにします。小物文具ではアスクルに一日の長があることが予想されますので、それ以外の業種固有の消耗材や小型の備品設備など、既存他流通からアスクルがシェアを奪ってきている部分についても比較してみることとします。

分類品目観点
文具A4 PPC用紙ほぼすべての事業所で購入が発生し、金額も主要な部分を占める。とにかく重く、送料の存在は無視できない。
スティックのりリピート性のある小型の文具(他にも付箋、ホチキス針、ボールペンなどが多く存在)の代表格として
10㎝パイプファイル経理部ではどこでも愛用のもの(前回も比較対象)で、金額が嵩みます。
備品キャンドル前回に引き続き、レストラン、結婚式場、宿泊施設などでの備品の事例として(弊社の過去の事例で使用量がかなり多いケースが多い)
コックシューズ飲食店での継続的に購入が発生する、比較的ニッチな高額備品の事例として(業者から購入するよりアスクルの方が安いという事例が以前、発生したことがある)
設備A4サイズ用小型電動シュレッダー多くの事務所で購買が発生している(しかも壊れやすく買い替えが比較的頻繁)小型家電品

デスク多くの事務所で購入が発生する。中小企業では、デザイン品等を買う事例は多くない。

1 文具では

PPC用紙では、アスクルが最強と言われています。調達量が多く、配送網も充実しているため、輸送費のコストに占める割合の大きいこの商品で有利なためです。アスクルのPPC用紙の代表的な定番商品は5000枚で2878円(税抜)、土日含めて翌日配達です。そして、税込1000円以上の注文は配送無料になります。対して、Amazonは、比較的安心して使えそうで安定供給があるという前提で探すと、これがありました。なお、以後、特に表記がない限りすべて金額は税抜きで記載します。(消費税率アップも近いことですし)
コピー用紙 A4 ペーパーワイドプロ 日本色 紙厚0.09mm 5,000枚(500×10) AIK011 」同じく5,000枚で2,878円、送料は標準で2,000円を超えると無料ですので、無料になります。そして、納期は、最短では翌日着なのですが、プライム会員ではない場合は、土曜時点で月曜着でした。このくらいは許容範囲でしょう。

そう、まったく同じ価格、条件に追随しているのです、おそらくは自動で。ちなみにこのAPPジャパンという会社は、世界最大級の紙商社の日本法人で、広く使われている紙ですので、使用上の問題もないでしょう。

期待をもって、次、のりを調べてみましょう。あらかじめ言っておきますと、のりはダイソーが一番安いです。2本(昔は3本だった)で100円です。そのうえで、係の方の手間を考えれば買いに行かせられない、ということで調べますと…

アスクル:アスクル オリジナルスティックのり 約22g 1本95円 10本857円…アスクルは紙以外にもこうした基本文具に自社ブランド製品があり、いつでも安価で買える安心感があります。ちなみにスティックのりは、10グラムタイプの細いタイプと22gぐらいの中間ぐらいのサイズのものがあり、個人に配布する会社では10gタイプがよく使われ、管理部門では22gタイプがよく使われています。アスクルの10グラムタイプは、1本56円、20本(単位しかない)922円です。

対してAmazonはというと…
プラス プリット スティックのり スムーズプリット レギュラーサイズ 5本セット(内容量10g) 407円…同じ内容量で考えると1本あたりの値段では倍ぐらい差がありました。
ヤマト スティックのり お徳用パック 22g 10本入り YS-22-10S 1097円…こちらは、3割高というところです。のりは依然、Amazonの負けです。

パイプファイル(10㎝)では、
アスクル パイプ式ファイル両開き エコノミータイプ A4タテ とじ厚100mm背幅116mm グレー 10冊 が1冊538円、10冊4897円

Amazonは
10㎝タイプはキングジム キングファイル A4 タテ 1000枚収納 両開き 2470A 青が1冊850円、これでは高いので、8㎝タイプで
キングジム キングファイルSD A4S黒 1478GXクロ(黒しか安くない)が418円です。ただし、Amazonの場合、在庫状況に応じて値段が頻繁に変わるということが起きます。この8㎝黒も当面の売上が悪く在庫が回転しないことが理由と思われます。他の色は532円であることから、こちらで比較するのが妥当であり、こちらもやはり、アスクルにはかないません。

※なんと、本文校正段階でクロも532円に価格変更されていました。

文具全般を比べると、多くの事務所で金額、頻度とも大きいPPC用紙で自動追随を用意して頑張っているものの(実は、PPC用紙は非常に利益が薄く、アスクルもこれ以上頑張るつもりはないはずです)、その他の一般文具ではまだ差は大きいということが言えそうです。

2 備品

それでは備品はどうでしょう?まず、キャンドルから比べてみましょう。アスクルでは業務用5時間タイプ 
カメヤマキャンドルハウス 業務用ECOキャンドル ティーライトティン 100個入りが1250円です。それに対して、Amazonでは
ティーキャンドル ロウソク ろうそく「ティーライトキャンドル アルミカップ 燃焼 約6時間 100個」が1203円、4時間タイプでは1102円なのですが、Amazon勝利かと思いきや、こちらは送料が500円発生しますので、結局アスクルの方が安いです。(送料無料には2000円以上必要)

もう一つ、コックシューズを比較すると
アスクル コックシューズ ブラック 26cmで2780円です。一方Amazonでは
[テノシ] コック シューズ 厨房 作業靴 ワークマン 靴 食品関係作業用 安全靴 調理靴 キッチンシューズ 耐油 耐滑 防水 滑り止め 男女兼用が税込2899円ということで税抜きだと2684円ですので、これはAmazonの方が安いという結論です。ちなみにこの商品は、無名の中国メーカーですが、アスクルだって実は同じでしょうから、Amazonの調達力が上回った初めての事例となりました。

こうした備品類は、Amazonの競争力が発揮され始めています。ただし、日本人が普通に使って品質が大丈夫な物かどうかをAmazonは保証してくれていません。見知らぬ中国人が勝手に出品できるのがAmazonの仕組みだからです。その点、アスクルは日本人バイヤーが一応の選別をおこなっています。

先日、私は業務用にカメラの128GタイプのメモリーカードをAmazonで2枚購入したのですが、中国製の無名の最安値のものは選びませんでした。それは、「128Gと表示されているが、26Gしか容量がない」という口コミがAmazon上や、それ以外のネット上にも表示されていたからです。こうしたトラブルすら、Amazonは、「自己責任」の世界です。そして、その「自己責任の世界」の中では、中国製の非常に安いものがある、というのがこの分類の総括です。もう一つは販売の継続性に不安があるということです。せっかく探しても、価格が変動する、あるいは取り扱い自体がなくなる、ということがAmazonの海外製廉価品では頻繁に起きます。逆にいうと、1の文具でAmazonがまだ、アスクルの後塵を拝するのは、この分野の消耗品に中国製の廉価製品があまり参入していない(参入できない)から、ということも言えます。

中小企業においては、自分たちの業務に直接かかわるものであれば、目利きが聞くと思いますので、価格差が大きければ継続性を保留して試してみることはできると思いますが、その目利きが聞かない範囲では、なかなか会社のお金で見知らぬ中国製を選ぶ、という選択肢は取りにくいのが実情であろう、と思います。

3 設備

最後のこの分類を見てみましょう。まず、小型シュレッダーです。よく壊れるので、私は使用自体あまりお勧めしていない(箱に入れてまとめて送る方法をお薦めしている)のですが、小型のシュレッダーを使われているオフィスは多いですよね。

アスクルでは
アイリスオーヤマ オフィスシュレッダー KT1600Jという機種が通常価格2万円、期間限定で18800円でした。明日納品可能です。1回13枚までで連続使用10分まで、という小さなオフィスにはちょうど良い製品だと思います。これと同じ商品がAmazonにありますが、19560円で納期1週間でした。ちなみにこれは他社発送商品でした。アイリス以外のメーカーで比べてみると、かつては廉価シュレッダーで大きなシェアを持っていたFellowsの製品が両者でありますが、こちらは全般にAmazonの方が安いです。ただし、今のアスクルの売上ランキングを見ると国内の会社で知名度のあるアイリスオーヤマの製品が上位に来ているようです。

ちなみに先ほどのシュレッダーKT1600Jはヨドバシドットコムでは18419円でさらにポイントが付きます。電気製品で、1万円を超えるようなものは、アスクルだけではなく、ヨドバシで調べるというのが私のおすすめです。

最後にデスクです。ごく普通のデスクです。最近はレイアウト変更の時の手間を考えて、デスク部とキャビネット部が別々になっているものが売れているのですが、アスクルでは
プラス フラットライン 平机 引出し付き 天板:ホワイト/脚:ホワイト 幅1200×奥行700×高さ700mmが9900円。私も何回もこれを組み立てたことがあります。対して、Amazonでは同一商品が29480円と3倍するのですが、同等商品の
オフィスコム オフィスデスク 事務机 平机 幅1200×奥行700×高さ700mm ホワイト Z-LWD-1270-WH3 が8891円であり、納期も3日です。明日いるものでもないでしょうから、Amazonに分があると言えそうです。

※これもAmazonで何度も表示させているうちに価格が下落してきました。そういうプログラム設定なのでしょうが、逆に価格変化をおこせてしまうようです。


価格と納期から言えること

価格納期の調査は以上で終わります。ここから言えることは、まだまだ文具・事務用品に関してはアスクルの代わりにはなれていないということです。ただし、2000円を超えるような、文具以外のもので、目利きが聞くのであれば、Amazon で見知らぬメーカーのものを安く買うことができることがあるということです。特に送料の差が依然あることから、当面は「文具事務用品はアスクルで統合」「高額品は両方調査、ただし、Amazonで知らないものには要注意」というのが当面の中小企業へのおすすめ案です。

品揃えの問題

もう一つ、品ぞろえの問題についても触れておきたいと思います。当然、Amazonの方が膨大な品ぞろえを有しています。しかし、本当に中小企業の購買担当が求めているのは、それなのでしょうか?たとえば、上でビジネスデスクを探そうと思った時、アスクルでは、無地の廉価の机が表示され、それが幅、奥行きで数種あることがすぐに確認でき、メーカーや機能を選んだあと、さらにサイズで選ぶという筋道がページ内に表示されています。また、台数を複数台購入すると廉価になるということも一目でわかります。しかし、Amazonでは、適切なキーワードを工夫して入れても、様々なものが表示されます。そのうえ、多数の商品のうち、広告主の製品が上位に表示され、本当に探したいものがトップには来ないケースが多くあります。

Amazonで本当に自分でほしいものだけを表示してその中でさらに廉価なものを表示するのはそれなりに知的レベルを要求され、そうではない人は広告主の「おすすめ」に誘導される恐れがあります。アスクルではこうした「騙し」の類がほぼありませんで、必要なものに近いものを短時間にリストアップすることができます。自分が情報強者である、という方はAmazonでもよいのですが、経営者としては、今後の担当者がどういう人であるかのレベルが保証できない中では、アスクルの仕組みの方が社の標準インフラに選定しやすいでしょう。

承認と決済

前回は、Amazonはまだまだだということで、この部分を記載しませんでしたので、今回はご紹介させていただきます。アスクルの標準プランでは、会社(事業所)で1名購買担当を決め、その人が発注するという仕組みを取ります。加えて、各部にログインアカウントを与えてその人が窓口の人に発注を依頼する仕組みがあります。しかし、各部での承認、あるいは全社での承認の仕組み、というのはありません。これらを使うには、大手法人向けサービス「ソロエルアリーナ」を使う必要があります。部門別の請求書というのもそのため、通常はできまえんで、請求書内に区分することもできません。ソロエルアリーナでは、そのほかに推奨商品設定や購買禁止設定などの制御もできます。

実は、AmazonBusinessではこれらの制御や承認のフローを小規模法人でも使用することができます。また、支払に複数のカードを割り当てることも可能ですし、請求書払いにすることもできます。これにより、部門別の経費管理や、部門別に承認設定を行い、中小企業で業務が集中しがちな総務の業務を削減することが可能です。このことはとても魅力的でして、中小企業にとってアスクルやたのめーるよりもAmazonを選択する大きな理由になるはずのことなのですが、実際には購買頻度の高い商品群での価格差がまだ相当あるということでお薦めするには至りません。

なお、前回も記載しましたが、AmazonBusinessにもプライム会員という制度がありますが、かなり高額です。商品価格差がAmazonの方が安いならばよいのですが、そうでもないので、これもおすすめポイントではありません。

というわけで、今回も少し残念なご報告になってしまいました。日本の文具流通はかなり特殊であり、それを20年ほど前に突破したのがアスクルという存在でした。最近、アスクルは親会社との間でもめ事が続いていますが、購買力と商品開発力をこうして確認して偉大なイノベーターであったことを改めて思い知りました。頑張って!Amazon.

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