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「作業を改善する」対象や方法はどうやって見つけるのか?-オペレーショナル エクセレンス⑧-

ここまでのシリーズをお読みいただいた方、ありがとうございます。なんか自分たちでもできそうな気がしてきていますよね?そして、一方で思っているはず…

こいつ偉そうに「チェンジマネジメントのプロ」とか言っているけど、当たり前のことばかり言っているだけだ

す、すいません。その通りです。当たり前=合理的な方法論が実はあって、みんなそれを実は言われればわかっています。それがただ、「思い込み」-多くの場合、人に〇〇してはいけない、というような局所的な道徳観-に覆い隠されて見られなくなってしまっているのです。

しかし、実際に説明して対策をやってみると、この「当たり前のこと」が社員には碌々できません。より正確な言い方をすると、かなりできる人が5%、できる人を補佐でき、少しでも「つけたし」「改善」に参加できる人が15%、何も出てこないで「協力しているフリ」の人が80%という感じでしょう。

これは仕方のないことです。何も出てこない人には、「時間記録」や「過去の資料収集」などをお願いして、その中で興味をもってくれた人を見つけていくぐらいしか対処はありません。会社と人生がイコールの経営者と違い、普通の人は自分の損得に直結しないことには「仕事」であったとしてもなかなか興味・関心を持たないものですし、そもそも会社に入ると(正確に言うと大学に入るとかもしれません)、極端に「考える」ということをしなくなり、複雑な仕組みを洞察するようなことを思考が受け付けない状態になっている人がたくさんいるのです。特に40歳を過ぎるとその短絡さは顕著になってきます。また、日本の場合、そうした「思考習慣」「知的好奇心」が少しでもある人は大企業に集まる傾向があり、(大企業の選考基準が専門知識というよりもその「興味を持つ力や行動に移す力、構造を考える力に置かれている)中小企業はその点でも不利な状況に置かれています。5%+15%の人にまずは期待するしかありません。

それでも、5%+15%の人に成果をあげてもらおうとしても、これすらもなかなかうまくいかないのです。それは、どんな方法があるかの基本的パターンを知らないから応用できない、言ってみれば改善の九九を知らないからです。そこで、どのような改善方法があるのか?それはどのように見つけるのか?の基本的パターンからわかりやすいものを5つほど今日はご紹介したいと思います。もっといろいろ立派なことが書いてある本は世の中にたくさんあります。参考になるのは、例えば製造工程のQCサークルの運営関連の本です。しかし、あまり改善が実施されていない「改善初期」の実際の現場で役に立つのは、そうした本に書いてある立派なことではなく、8割方はこれから説明する5つです。まずはこの5つを「徹底する」だけで、だいぶ改善できるはずです。徹底するにもだいぶ心が疲れるのですが…

①そもそもいるのか?

一番最初はこれです。よくある例は、毎週の定例報告のために膨大な時間を割いて社内用パワポ資料を作成している、そのために残業が発生しているのだが、実はそんな資料は判断に用いられていなかった「念のため」の資料、というものです。だいたいは、こういうものは、経営陣に部長がアピール、あるいは言い訳のために必死になって指示していて、そこには改ざんとまでは言いませんが、作為が入っているものです。議題がわかっていればそれの参考になる「生データ」(大きな、あまり色装飾とかされていない表)がEXCELで事前に配布されていればよいことです。そして、「これとこれだけ毎回出せ」と経営陣がチェックに必要十分な定義を事前にすればよいことです。

上は一例ですが、「人がいるからやらせている」的な仕事は社内に実はたくさんあります。本当にそれがいるのか?と聞くと、「ないよりはあった方が安心…」的なことをごちょごちょというと言います。

「以前クレームになったので、それ以来チェックしている」というようなことも多くあります。正常な使用に差し支えるような不良はかなりの割合まで下げる必要があるのは事実ですが、そうではない、「気分を害した」「不親切だ」的なクレームはそこまで防ぐ必要がありますか?そんなチェックはやめてそのコスト分の値段を下げた方が99%の人は喜びます。

最近目にしたある例では、毎日数百件の発送伝票の作成の際に、お送り先のお名前の異字体、たとえば高橋の高の難しい方や斎藤さんの様々なパターンがシステムの都合上、文字化けしていたりするのを全部目検してJIS内文字に手で修正している、という事例がありました。「お買い上げいただいたお届け先だから失礼のないように」が当然視されていました。ちなみに、この文字コードを吐いているのは、自社システムの不備ではなく、同分野で国内シェア最大のSaaSです。私は、これは「不要な業務」と判断しました、だって、一文字ぐらいが間違っていたり、文字コードになっていても届きますもの。30万円かけてシステム構築して一工程追加すれば修正する仕組みを作ることは可能ですが、そんなことをしても売り上げは増えませんし。受け取る当人もWEBで扱えない文字だと知っていてそんな経験何度もしているでしょうし。

最低限経営判断を行う、営業を行う、仕入を行う、販売と請求を行うために必要な業務は何なのか?お金をもらう、お金を増やすために最低限必要かどうかを基準に判断していくと実はいらない業務、いらないプロセスは社内にたくさんあるのです。やめても売り上げが減らない業務はやめればよいのです。そうして手が空いたら優秀な順に担当者に業務を寄せて(分担や連携をできるだけ減らして)詰めていきます。優秀な人はスピードも速く精度も高いからです。で余った人員は余らしたままにしておくのです。この辺は、シリーズの最後の方に解説したいと思います。

②重複作業の削除

ここまで業務、それから業務を構成するプロセスを分解的に見てきた中で、「同じことを2度やっている」というものがいくつも見つかったはずです。このパターンで一番多いのは、「検査」ですね。それが意図して2重化していてしかもきちんとした検査基準があってやっていて、かつ2度の検出が続いているものならば2度目があってよい(工程自体は問題がありなぜそんなにエラーがあるのか調べないといけませんが)のですが、多くの場合はそうではない、「それぞれ念のために、適当にやっている」ことです。こういうのは、だいたい、時間に余裕がある、暇な証拠です。基準とチェックリストを決めて一か所でしっかりやるよう変更すると最初は時間がかかりますが、すぐに時短効果と品質アップ効果がでます。

検査の次に多いのは、「集計」です。社内で同じような集計を何か所も別々にやっていることが良くあります。特にいろいろなところでよく目にするのは、「経理の計上基準」とは別に「営業の独自基準」で集計しているものです。「締め日に仮申し込みをねじ込んだ剛腕営業に終礼で拍手する」というような文化が背景にあるものですが、こういうのは概してキャンセル率も高い!不正の温床にもなる!正常に受け付けられ、そして入金がなければ経営的には全く意味がないものであり、それを理解しない「営業のモチベーション」のために人日が費やされるなど中小企業のリソースが限られる中では害悪でしかありません。しかも、だいたいこういう「現場の独自集計」は基準がいい加減でEXCELベースで、精査する度に数字が変わるようなものが多く、システム化が困難です。それがまた業務の速度を下げ、残業の原因になり、間違えた担当者が叱責され、という循環を起こしています。だいたい、エクセルで収益計算をやる際には、手順と基準を決めて仕組みを作らないと間違えるに決まっています。経理に「締め日翌日午前に速報ベースを出せる体制を作れ」といい、営業に「その作業と評価は廃止しろ」というのが正しいです。

③転記・清書作業の削除

これは、②の一部かもしれませんが、平成初期までは、転記作業や報告書への清書作業が「仕事」になっていた時期がありましたが、今だにそういう作業を見ることがあります。しかも、なぜか印刷した表をまたEXCELに数字を手打ちしている…なんてことが普通にあって、聞いてみると「経理システムから紙でしかでない」と言っているのですが、確認するとちゃんとその機能はあったります。(普通ありますよね?)同様のものに、「大きな表」の「わかりやすい簡易版を作る」とか、「報告書の要約版を箇条書きで作る」とか、「エクセルの表をやたらとパワポに張り付けるだけの会議資料を作る」とか…

これには経営者の資質や要求も関係があります。毎回定型の(自動化された)比較的大きな表を見て、そこから自分の中にチェックポイントを設けて判断、質問すればよいものを、その能力が欠けているのを、「要点をまとめた報告書を作れ」と言って下のせいにしている経営者が60歳以上には特に多いように思います。プロセスも含めて毎回数字で報告させ数字で判断すればよいことなのに、お互い無駄なことをしています。昔自分がそうさせられていたので、それが当たりまえだと思い込んでしまっているんでしょうが、それはあなたの無能さを示しています。

もちろん、営業の提案書は、恣意と作為の豊富な図表を好きなだけ盛り込んで作ればよいのですが、これって各商品、各業種ごとにだいたい同じのはずですし、いったん受注した後の定例報告はむしろ定型化・自動化すべきですし、相手の効率を思えばパートナーにはパワポではなく、流用可能なEXCELで納めるべきです。

この関連では、最近河野行革大臣が指摘しているように「FAX」や「紙」でのやり取りという問題も絡んできます。「まだまだ相手がFAXを希望している」という声も聞きますが、実はシステム化できるのに、やっていないだけというケースも多くあります。あるいは納品書・請求書は紙で郵送しなければならないものでしょうか?「ここからダウンロードしてください」の方がお互い楽だとみんな思っているのに、「ルールだから」とあきらめているのではないでしょうか?

中小企業であればあるほど、「顧客の言いなりにならざるを得ない」と経営者の方はみなさん言われます。それは私も否定しません。しかし、その業務が十分な利益を生んでおらず、かつ効率化を妨げているならば話は別です。中小企業であるからこそ、「特化」して「効率的な仕組み」に絞り込まなければ利益を上げられないのもまた事実です。そして、低利益率を放置していると、今回のコロナ禍のような状況が発生するといとも簡単に経営が危機に陥るのです。あの時、あなたが「やむをえない」と付き従っていた顧客はあなたの会社に余計に温情発注してくれましたか?むしろ突き放されたのではありませんか?

転記、清書は一円も生まない無駄作業です。

④人の移動、データの移動、分担の削除

「人の移動」などたかが知れた時間です。たとえば、コピー機のところに届いたFAXを時々取りに行くのは、一日合わせても10分ぐらいのことでしょう。ざっと勤務時間の2%です…

ところであなたの会社は売上高利益率をどのくらい改善したいのですか?2%も改善できたらオンノジなのではないでしょうか?そこに投資がいるならばまた考えないといけませんが、FAXはパソコンでも受信できますし、そもそもFAXじゃなくてメール本文やメールの添付EXCELファイルでもらえば移動時間だけでなく、作業時間も減ります。

それ以上に、人が移動しなくてはならないというのはその時間が無駄なだけでなく、「なぜそこはほぼ自動で連携されないのか?」という点で着目すべきポイントです。同様にデータが手動で移動する、というのも着目点です。業務フロー上の定めで「上長が検査し承認する」という手続きがあってそのために移動しているのは正常です。しかし、そうではなくて、「一つの表を分担して入力している」というのは要チェックです。本当にそれは分担する必要がありますか?

中小企業の現場で生じている「分担」のほとんどは、スピードや精度の要請があるものではありません。私は男女の差は原則言わないことにしているのですが、この件に関しては言わせていただきます。特に女子社員の間で、「平等に仕事を分け合う」ことを勝手にやっているケースが多くあります。これはスピード上も品質上も害があり、責任の所在もあいまいになるので、一人に集約してください。そのうえで休みの時の代替体制は用意します。多くのケースで一人でも全然できるものであるし、一人でやれないのは、仕組みが不十分であることが多いのです。女性に遠慮して「一人でやれ」と言えない管理者が多いのも問題なのです。

⑤会議、話し合い

最後の5つ目はこれです。「課題が明確にされていてそれの改善策について活発に意見が出されて、会議の最後に誰がいつまでに何をやるかが明確になっている」というような会議であれば、やればよいと思いますが、私が見る限り中小企業の会議のほとんどすべてはこれではありません。では、こうした機能はないのか?というと、実はこうした「クリエイティブな話し合い」は結構雑談の中で実現していたりします。稼ぐことが目的であり、礼儀正しく鎮座していることには価値はありませんので、雑談は全然かまいません。ただ、そうすると会議では何をしているのでしょう?しかも、給与の高い人が一斉に毎週2時間も拘束されているようなものもあります。

だいたいこういうのは、「報告会議」(部門→経営陣)や、「伝達会議」(経営陣→管理者→部員)ですが、これが多すぎるから、リモート会議やフレックス制度が機能しないのです。そのほとんどは、SLACKの添付ファイルで書面で提出で十分です。

「いや、会議でやった方が意思統一できる」という経営者や管理者がいますが、それはとんだ勘違いです。地位が上の人がしゃべっているのに対して形は同調しているだけです。もちろん聞いている人はちゃんと聞いていますが、その人たちは、文書でもちゃんと読んでいます。そして、文書で読まない人は会議でも聞いていません。もし、会議で口頭ではちゃんと頭に入るが、Slackでは入らないという方が本当にいたら…その人は効率化の障壁になる「時代に合わない人」です。

「名誉・賞賛の場」とか「不正等への怒りを伝える」とか目的があるならばいいのですが、そうでなければ、朝、Slackで3回にわたって繰り返して社長の言葉で伝えた方がはるかにコスト安で、しかも管理者経由よりも全員にきちんと伝わるでしょう。そういう時代なのです。

「自動化」はなぜ5つのポイントに入らないのか?

以上が、小難しいことをしなくても簡単に改善できる私が良く着目するポイントのうち、主要なものです。皆さんは、改善方法の見つけ方の中に「自動化」という項目が当然入ると思われたと思います。これは、webを見ればシステム構築やRPAなどの自動化が効果があったという記事にあふれていますし、パソコンを使えば自動化できるはずだという「信心」もあると思います。しかし、前者の多くは「広告」であったり、「実は人減らしをして改善したのにそうは言えないから、別の言い方をしている」ものです。

たしかに大きな作業、あちこちでたくさんある作業は自動化することは有力な選択肢です。しかし、同じ業務がたくさんの支店で行われているような大企業ならば、こうした対象業務が見つかり、一つのシステム開発で大きな改善が得られることが期待できるのですが、1拠点や2拠点しかない中小企業で素人がSIerに普通にシステム発注しようとすると、たいていは金額が効果に見合わないし、本当のニーズと異なるものができてしまい、それを改修しようとするとまた大金を請求されるということになりがちです。

私は、中小企業は、「システム開発」ではなく、「安価な既存製品の機能を使うように業務の方を変える」ことの方が現実的なことが多いと考えています。

さらに本当に、その「実作業に毎日何時間もかかっていてそれが短縮すると効率アップする」というようなことがあるか?というと実はあまりない(一つ一つの作業は実は30分未満)ことが多いのです。そして、その人の一日の動きを見ていると、作業自体を早めるよりも、その「つながり方」を改善し、アイドルタイムなのにそうではないふりをしている時間を削除した方が改善できることがはるかに多いのです。まず、「アイドルタイムはアイドルタイムと認めてそれがどれだけあるかを認識する」ことがとても重要なのです。

なぜ、我々はこんなにも古いしきたりに縛られるのか?

こうしてみると、それぞれ「確かにそうだな」と思っていただけたはずです。

しかし、そう思いつつも実行できない障壁になっているのは、「昭和からの慣習」です。実は、パソコンが一人一台、会社で使えるようになったのは、この20年ぐらいの話ですし、メールアドレスがいきわたったのはさらにその数年後です。業務にweb調査を社員個人が活用してよいというルールも2000年代半ばまでは決して多数派ではありませんでしたし(いまだにダメな会社もありますが)、安価に各種業務サービスがSaaSという形で使えるようになったのはこの5年ぐらいの話です。その「新しく使えるようになった資源」をそれぞれの局面で最大限に活用して仕組みを変えていく、という「技術」(というほどのものでもないのですが)の視点が日本の中小企業には決定的に欠けています。

先日もある中小企業のお客様に勘定元帳のデータの提供を依頼したら「1週間かかる」というのでびっくりして、「税理士にはどうしてるんですか?」と聞いたら、「紙でしかやったことがないので、いろいろ初めてのことを試さないといけないみたい」と言っている状態でした。(実際には3日でご提供いただいたのですが、そのデータには部門コードが出力されていませんでした)

そして、その背景には「変えなくても何とかなる」という需要が拡大していた時代の思い込みがあり、「利益が低くても存続できる」という誤った経営認識と、「社員の働き心地を犠牲にしてはいけない」という日本中が引き止め競争をしていた時代の思い込みがあります。社員を犠牲にしてはいけないのは、「雇用」においてであり、そのためには、「利益の改善」はずっと継続して必要です。その話を繰り返し多くの経営者の方にするのですが、「道徳感」を理由に採用されない、というのが弊社の一番多い失注理由です。

というわけで今日は、前回の「9 プロセスのうち、時間がかかっているもの、品質が悪いもの(ボトルネック)を洗い出し、そこの改善を集中的に取り組む。その間、他の個所は気にしなくてよい。これにはソフトウエアによる自動化を含むが、5~8の過程で自動化の対象や内容は明確になっている。」の「改善」のポイントの見つけ方を補足説明させていただきました。

次回は、「10 改善した各プロセスに対して手順と品質基準を明らかにし、それができる人材がどのような人材なのかを定義する。これが「職務定義書」となる。また、ドリルやテストでトレーニングと習熟度を確認できるようにする。また、現状の組織ではなく、責任者(利益と品質の)とメンバーという2階層の組織に各業務を組織変更する。ただし、10人を超える業務(中小企業ではこれは意外に少ない)の場合は、途中階層を置く場合がある。」からご説明を再開したいと思います。だんだん核心に迫ってきている感がありますでしょ?

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