昨日、そこそこの規模の経営者の方に助言したことなのですが、ご覧の経営者の方で、注文に対して「注文書」をきちんと受領している方は少ないのが実情だと思います。下請法などで締結を進めるよう政府は指導していますが、いざという時言い逃れるためなのか、2大広告代理店のように、「交付しない」と下請けに言い切るような会社もまだまだ世の中にはたくさんありますし、中小企業側も何をどうしてよいかわからないという会社も多いようです。
「注文書なんてもらったって、結局大手はやるときはぶっちぎって来るし意味ないよ。」という方もいます。それもわかります。今後の取引を考えたら訴えることもできないでしょう。それでももらってください。
「金額がきちんと確定していない。」という言い訳も発注側から言われます。その場合、少ない方の見込まれる数量でもよいので貰ってください。
交付しない理由の多くは、発注手続きに必要な稟議書類を整えて申請しチェックを受けるのが面倒だから(不備や瑕疵があるのを承知しているから)、というような担当者個人の理由であり、会社としては発注書を交付しなければならないという業務規程になっているはずです。
それでもなぜ注文書がいるのか?
中小企業の納品には、注文を受けてから先払いで海外に生産委託するなど現金が先に出てしまうような条件を余儀なくされているケースが多くあると思います。また、いわゆる「コロナ融資」は既に申請済みで結論がでて融資が実行済み、あるいは不可だった、というところもあると思います。
その次に手元資金を増やす、「今急ぐべき安全対策」は、「短期での資金需要に対する借入を積み重ねること」です。そのためには、信用力のある発注主が発注した信頼に足る証憑が必要になります。場合によっては今の非常事態にあっては交付を渋る発注主に経営者がそのような理由を述べて要請をしても良いと思います。
つまり、「このお金はちゃんと入って来る見通しのものだから、入って来るまでの間、そのために必要な制作資金を貸してください。」と銀行に相談するわけです。もちろん、これを突然言われても銀行も対応できませんので、前もって今後そのような対策を考えている、ということをコミュニケーションし、そのために必要な書類(月次の推移表や今後の資金繰り見通し表など)を共有しておくことになるでしょう。そういうものを整備できていないならば、そこから始めなくてはなりませんでして、それは弊社の出番です。
この記事を読んで「当たり前のこと」と思った経営者の方はご立派なのですが、私がお付き合いをしている先では、こうした短期資金を組み合わせて、長期借入の与信枠を必要以上に使わないとか、あるいは将来にわたる金利負担を抑制するという考え方を知っていてしかも、それを実施可能なデータ基盤やノウハウを整備しているということはあまりないのが実情です。それ以前にそのようなことを銀行にどう相談してよいか知らない、という方も少なからずおられます。これは、決して「当たり前のこと」ではなく、(あまりお金にはならないのですが)弊社がお手伝いしていくべきポイントだと思っています。
注文書はどうやって作る?
でも、注文書のフォーマットを揃えるのもおっくうという方も多いでしょう。何が要件かもわからないと思います。中小企業にとって(大企業でもほぼ同じ)、注文書の要件は、下請法と関連政令に細かく定められています。が、難しいことは後回しにして、これをまず使ってください。アフィリエイトではなく、政府の公正取引委員会が定める標準的フォーマットです。丁寧に記入の方法まで説明があります。
https://www.jftc.go.jp/shitauke/legislation/index_files/article3.pdf
もし「マネーフォワード請求書」をお使いの方でしたら、見積書を作成するとそれに対応する「注文書」フォーマットが用意されワンタッチで作成できるようになりました。その例を添付します。ただし、これは納品日と支払日、発注主の担当者や連絡先などが出力されないので、備考欄を使用してこれらを記載しないと十分ではないという不満があります。それでも全然ないよりましです。
その他にも、注文書フォーマットで検索すると世の中には汎用のフォーマットがありますので、ご利用ください。
注文書に印鑑はいるか?
そして、リモートワークを推進する中で大きな課題となっているこの問題…そもそも角印に何ら法的根拠がないとはいいつつも、相手は世の中で官僚と並んでもっとも変わることに後れを取っている銀行であるだけに、角印があった方が安全というのは言えるでしょう。ただし、注文書を発行しない理由の一部は、大企業の「角印捺印申請手続きの煩雑さ」(金額変更があった場合に再度それをやり直さなくてはならないことを含む)にあるのも事実でして、相手が発注権者であるならば、それがわかるメールを保存しておいて対策することに替えることで事前に銀行担当者と折り合っておくことも必要でしょう。
もうひとつこの上のことには重要な要素があり、発注書を受け取ると逆に「請書(確かに注文を受けましたという書類)を交付してくれ」と言われることがあります。これは当然の要求ですし、それが規程に書かれているケースも多いので、請側も対応するべきです。しかし、この請書は業務内容によっては「印紙税」の対象となります。これは通常受注側が発行・印紙代負担するので、注文書、請書をやりたがらない理由の一つになっています。しかし、メールやFAXではこの印紙税が不要なのです。(これも前時代的解釈だと思うのですが、公式にそうなっています)もちろん、最近急速に普及が進んでいる「電子契約」(クラウドサインなど)でも可能です。
ちなみに発注側の資本金が3億円超で受け手のあなたの会社が資本金3億円以下の場合、あるいは、発注側が資本金1千万円超であなたの会社の資本金が1千万円以下(1千万円を含む)の場合には、この交付は「下請け法上の発注主の義務」です。(デザイン、編集等一部業務ではこれよりも厳しい基準があります。)
これから先、大手企業は投資に対して慎重姿勢を強め、発注量を減らしそれは中小企業を苦しい立場に追い込むはずです。どの会社も自分の身を守るのに精いっぱいであり、これまでの構想や計画は「いったん白紙」ということを「自分は残念だけど会社の決定」と言ってくるケースが続出します。突然、「融資が下りない」と言われても弊社も手の打ちようがありません。その時に中小企業はどう自分の身を守るのか?ということは、製品・サービスのコスト競争力や品質・営業力だけでなく、こうした資金確保のための基本動作、当たり前のことを当たり前にやる、ということを仕組み化することがとても大事なのです。
冒頭の経営者の方はその場で営業部長に徹底を指示されていました。