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できる銀行マンは会社の財産です

webを調べてもなかなか出てこないのですが、消費税率変更に伴い、新しく信用保証協会の保証付きの融資サービスが上限3000万円で始まっています。「環境変化に対応するための支援」という名目なのですが、なかなかの使い勝手が良い資金でして、お付き合い先で審査申込させてもらいました。

この情報、実は私も知らなかったのです.

9月末決算のお客様先の売上精査を終えたところで、なかなかの好業績で11月末の納税資金が心もとないことに気づき、地域金融機関のいくつかに電話でコミュニケーションを早速取ったら、そのうち一つの担当営業の方が「ちょっといいのがありまして、会ってご説明したいんですが」とおっしゃってくださって翌日お話を聞いた、という商品でした。

担当者は40歳ぐらいのベテラン営業マンの方で、翌日の商談は、信用保証協会(過去に同じお客様でやや問題があった)や行内の下地調整も済ませて話してくれている状況でした。要領が良いのはいいのですが、経営者に申し込みの説明をする際にも大変要領が良くて、金利等の条件交渉を入れ込む余地を与えない手際の良さには「一本取られた」、という感じでした。久々に見た「切れのある銀行マン」でした。

経営戦略立案や制度整備導入だけでなく、こんな財務部長的な実務も弊社では代行しております…経営と事業を理解している財務部長は貴重という話を先週金曜日の一つ前のこちらの記事でしましたが、そのうえ銀行と定期的にうまくコミュニケーションを取りつつ状況を理解してもらうことができる、というのはさらに希少なスキルです。

私は、昔から顧客同様、銀行にもきちんとこちらから足を運ぶことを基本にしています。これはメガバンクでも信金信組でも同じです。40代以上の財務経験者や経営者は、「銀行は向こうから御用聞きや提案に来てくれるもの」と思っている節がありますが、昨今、銀行も営業効率や利益率を要求される流れが続き、その上、店舗も人も減っており、その一昔前の常識は大きく様変わりして通用しなくなっています。一人が担当する件数も増えており、あなたの会社がその中で利益額上位(つまり、金利をたくさん払い、あるいは海外送金や社債等で手数料をたくさん支払っている)であるならば、来てもくれるかもしれませんが、そうでなければ、あなたのところは後回しです。その立場をよくわかっていない経営者はいまだにかなり多い。銀行もギリギリの人員で回す時代になっているのです。

しかも、貸せる貸せないも、昔のようにキチンと話を聞いて、斟酌をしてくれて…ということはメガバンクはもちろん、地銀、信金であってもなかなか難しい状況になっています。返済能力があるかどうかは、「思い」ではなく、「事実」「データ」で「蓋然性」を示さなくてはならない時代です。これも中小企業の経営者と話すともう25年もそういう流れが続いているはずなのに、いまだに分かっていない人が結構います。そのため、試算表だけ言われたら出せばよい、というのでは必要な時に新しい借り入れを行う、というような機動性は産まれません。たとえ上手に資金需要と返済可能性を説明できていなくても、新規事業やヒット商品の状況、あるいは人員増強や生産効率向上などの状況を伝えていれば、そこに「融資実施のキーワード」がありますし、あるいは今回のような「シーズンもの、時節もののチャンス」があれば、営業マンがひっかけてくれることが期待できます。

それもこれも腕のいいベテラン営業マンが担当にあってこその話です。銀行は昔から能力の高い人を採用し揃えている傾向にはありますが、実は、逆の事例も私の担当先でありました。事業の進め方というものを理解する能力が全然ないであろう2年目の若者が担当者になってしまったのです。すでに一本、前の担当者の時に支店長が無理してくれたという借入があるので、取引中止することもできずにしばらく様子を見ていましたら…3か月でまた新しい担当者に代わりました。また、0から関係構築ですが…これは商品やサービスの営業と同じです。そういう手間のかかる関係構築が必要なものです。

銀行はみんな支店間でテリトリーが決まっているので、私のようにあちこちの会社のお手伝いをしている人は、「このできる営業マンにこちらの会社も見てもらえればいいのに…」と思うのですが、なかなかそれはできないのが残念です。

とここまで書いていたら、電話がありました。「知り合いの創業した会社で資金調達のための事業計画が不十分と言われているので、手伝ってほしい。」

その創業者の方は少し前に電話の主の紹介でお会いしていて、非常に高度な技術で、しかしニッチなサービスをこれから展開しようとしている方でした。こういうのはとてもやりやすいのでお手伝いはいくらでもするんですが…ちょっと気になることがあって、電話の主のお助けマン役に聞いたのは、「資本調達の前に、創業融資や創業助成は使ったんですか?」ということです。電話の向こうでも、ああ、そういえばその辺どうなっているんだろう、という空気でした。

本件の実情はともかく、なぜこんなことを聞いたかというと…創業期のファイナンスを資本(株式の発行)で大きな額を行うことが必ずしも正しいとは限りません。これを起業家に薦める人の多くは、これによって儲ける人であり、その人たちはその正常な判断を妨げる傾向があるからです。増資、上場は本当にコストも高く面倒です。それ以外の方法があるならば、それをきちんと検討した方が良いし、それができるようなアドバイザーを見つけるべき(私です)ですし、あるいは銀行系と、証券系の両方とのリレーションをきちんと持ち情報収集して判断するべきです。

よく、「借入はいずれ返さなくてはならないが、資本は返さなくて良い」と言いますが、これは現代においては決して正しくはありません。借入は会社がゆっくりとでも成長していれば、金利だけ払って、借り換えすることは可能なことも多いですし、資本も上場か売却で十分な利益をもってEXIT出来なかったら全額返せ、あるいは「倍にして返せ」、というような契約も世の中には横行しています。そうした実情を知り、各種融資制度も知り、それで比較して合理的に決定しているのか?という点にふと疑問があったからです。VC等の資本の出し手の成長要求は一般にかなり苛烈です。そこまでの準備や覚悟はできていますか?そうでなければ、緩やかなストーリーを描く方策の方が適当ではありませんか?ということを言いたいのです。

創業支援制度に基づく融資や助成金は極めて有利なものがあります。公的金融機関だけでなく、市区町村も様々な支援を行っています。低リスクでチャレンジしたいならば、それらを組み合わせて、商品開発や初期の市場テストを行って、「価値」を他人に確信させる材料を整えて大きなチャレンジの土台を整えてから資本に踏み込んだ方が、自分も、そして実は「株屋」「上場屋」なども周りも得る果実が大きくなります。

銀行はルールの厳格化と高度な提案力の要求という時代の変化にこの25年ほど苦しんでいますが、決してその仕組みや商品自体が時代遅れというわけではありません。

世の中、なんだか創業間もないベンチャー企業が調達額を競うような風潮がありますが、それが必要な事業展開で非連続的な事業構造を描いていない会社もありますし、それがコスト安というわけでもありません。銀行に時々通って報告して、担当者に教えを乞う、ということもバランスの良い判断には大事なことだと感じた出来事が続きました。


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