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倒産は悪か?

経営者の皆さんはどう思いますか?

多くの場合、善悪以前に経営者はそうなっては困るという深刻な事情を抱えています。多くの中小企業経営者は借入に個人保証を要求されており、倒産すると持ち家を取られる状況にあります。(ローンがある場合に個人整理を用いて残すことができる場合もあるそうです。)私は20代の頃から経営職を目指していたので、これが怖くて生涯アパート住まいを通してしまいました。

この個人保証について、「ガイドラインができ、義務ではなくなった」という方がいますが、そういう方は中小企業支援の資金実務を担当していない方ですので、あまり信じない方がよいでしょう。実情は政策系金融機関のコロナ関連融資ですら、業績が良くない(たとえば前期が赤字など)場合には、融資の必須条件としています。申込書に「個人保証をはずす」という欄がありそこにチェックしても、「個人保証が条件です」と言ってきます。

そして、会社を倒産させると多くの場合は個人も自己破産に追い込まれます。そんな何千万円、何億円なんていう借入を他の順調な事業でもない限り返せるわけがありません。つまり、銀行の求める「個人保証」には実態としてはほとんど債権回収の効果はなく、個人破産に追い込み「罰」を与えているだけです。

私個人もかつて管理担当取締役をしていた会社を破綻させました。それ以前に、毎月の資金繰りに苦しみ破綻した小売業の経営管理職だったこともあります。その破綻時の社員や取引先からの侮蔑に満ちた視線に死にたくなった経験が、この仕事に対する私の「会社を潰すようなことを経営者にさせてはならない」という強い動機になっています。実際、多くの社員に解雇を告げ、寝食の心配をさせました(私自身もしばらく雇用保険もないまま失業者でした)。社員の怨嗟の声は浴びますし、経営陣の間でもお互いに不信に陥り、管理担当としては普段以上にお金の監視を強化しなければなりません。社員の身の振り先を探すと言っても、実際やってみると力のある社員は自分で何とでもできますし、そうではない多数の社員はなんともなりません、何とかなる社員ばかりならこうはなっていないわけでして。こういう経験をすると、ほんと、大きな投資とかM&Aとか勝負を賭けるのが怖く、ソフトバンクの孫社長のように勝負し続けられる人には畏怖の念をいだきます。

日本人は、倒産、そしてその原因となる借入に非常に強い「悪」の印象を持っています。しかし、こうした経営破綻は今の我が国の様に社会的に罰を与えられるようなことでしょうか?特に今のように、売上の大半が数か月にわたり消失するようなことが起きた場合に、多くの企業では耐えられるのは2,3カ月程度であり、従前の財務体質がうんと悪くない場合にはそれにコロナ対策政策融資としてあと2,3か月分の融資が可能になる、というのが目下の状況です。それ以上の現預金を手元に持っているというのは恵まれた歴史を歩んできた一部の大企業、中堅企業に限られた話です。したがって財務内容が悪い会社は3か月、いい会社でも6か月が限界値です。さらにはそれを雇用調整などを併用して費用減を早期に着手した会社はさらにもう少し延命が可能です。その辺の概要についてはこちらに先週記載したのですが、実際にオフィスを解約したり、雇用調整助成金を申請した事例が私の周辺でも増えてきました。

現在の状況はインバウンドは2月(中国の渡航禁止策が1月26日からでした)から、その他の外出を伴うサービス業は3月から急激に需要が消滅しています。ということで、2月から数えると4月末で3か月になります。その間、非対面型ビジネスへの移行を必死でチャレンジした事業者も少なからずいますが、残念ながらそれらのチャレンジのうち、元々の経費をカバーできるほどの規模で成功した事例は非常に少ないし、経費の縮小も私が言うほど思い切ってやれていないケースが多いでしょう。そのため、今月末からはもともと連続赤字計上だったり債務超過だった企業から順に経営破綻に追い込まれるケースが続出することが見込まれます。

私は評論家ではないので、この事の善悪を言うつもりはありません。もちろん、全ての企業を政策的に延命させることなどできないし、需要が変動する中で事業と雇用が流動することは、「しかたのないこと」だと思っています。そして、いつもこうした厳しいケースに出会うと、「もっと前からやっておくべきことが経営としてあっただろう」と相談者に対して腹立たしくさえ思うのですが、同時に経営者もまた不完全な人間であり、不明と躊躇をその軌跡に多く残してきていることもまた、「しかたがないこと」だとも思います。だから弊社のような存在が価値があるのだとも思っています。

先日、日ごろからお世話になっている、倒産や再生手続きを支援される弁護士さんのセミナーをwebで拝見したのですが、講師が最後に言っていたのは、「失敗しても再出発できる」ということです。この方は具体的には第二会社方式などを駆使した事業再生を多数手掛けられています。(お話し聞きたい方はご紹介しますのでお問合せください。)私としては、そのままの事業で再出発してもうまくいかないことを繰り返す恐れもあるので、再出発にあたっても改善の手を大幅に入れていかないといけないと考えるのですが、いずれにせよ再出発は可能です。

実際、倒産して個人保証が必要になっても、あるいは自己破産しても、3か月分の生活費は手元に残せますし、通常の生活用品・家財道具が差し押さえられることもありません。その点、世間では誇張して事実が伝わっています。クレジットカードは作れなくなりますが、犯罪を犯したわけではありませんので、海外渡航も可能です。地方では陰口をたたかれ村八分にされるという社会的慣習の問題は厳然とありますが、東京に来ればそんなものはほとんどありませんので、そんな地方は捨てて市場の大きい東京で再出発すればよいことです。

あなたの会社がつぶれたら、銀行の担当者は成績上困るかもしれませんが、銀行自体もあなたの会社などごくごく小さな存在で全然困りません。それに銀行や大企業はいずれ最後には国が救済してくれるのですから、彼らへの迷惑をそこまで顧みる必要もないでしょう。社員も文句はいうでしょうが、皆自分で何とかするものです。中小企業の経営者の責任感や重圧は、私自身はリスペクトし、分かち合いたいと思っていますが、実は社会のシステムの中では取るに足らないことでもあるのです。いや、そういう視点を一部には持っていて欲しいと願っています。私自身、その渦中にいる時には本当につらくて、抗うつ剤を服用しながら数か月を堪えていました。家族からも協力を得るどころか、「好き勝手やって挙句に家族に迷惑をかける」と罵倒されました。しかし、人脈と経験を生かせば旧来並みとはいきませんでしたが、暮らせる程度にはサラリーマンとして稼げもしました。実は、ある業界で徹底して戦い抜いてきた経験や人脈は同業やその業界の売り手買い手業界の他社にとってはとても価値があることでもあるのです。

弊社も、6か月以上の猶予があれば打つ手を見いだせることは少なからずあると思います。しかし、1,2か月では申し訳ありませんが打ち手は限られます。真っ先にコロナ融資対策に着手していれば1週間で結論がでましたが、今からではそれも時間がかかります。何が言いたいかというと、会社を長生きさせる治療を行うことを事業の柱とする弊社の立場からするとそれは敗北宣言でもあるのですが、もう救えないケースはこれからたくさん出てくるだろうということ、そしてそれは、「しょうがない」と言って、経営者の方はただただ、「生きてください」ということです。

今はもうそういう発信をしなければならない局面に差し掛かってきているとも感じています。もちろん、「それでも何か回復する方法はないか」というご相談にはいつでも乗ってまいりますので、お声がけください。

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