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経費削減講座9 電気代②

前回書き忘れたことが一つあり、今回のお話の低圧の電力にも関係があるのでまず最初に一つご説明します。

【電気料金は毎年値上がりしている】
電気料金の明細を再度みてください。 低圧でも高圧でもよいです。(オーナーからの請求だと書いていないものもあります。)そこに「再生エネルギー促進賦課金」という項目があると思います。これは、国が太陽光や風力などの発電を行う事業者を支援するための費用を一般の電力会社の従量単価に上乗せして請求する仕組みで、毎年0.30.7円程度値上がりしています。これだけで電気代は実は1~3%ぐらい毎年値上がりしているのです。

 同じような仕組みは実は電気代にいくつも紛れ込まされています。例えば電源開発促進税の名目で発電所の立地エリアには巨額が交付され、広く薄く国民が負担する仕組みがあります。また、最近では東京電力の福島原発の処理費用やそれ以前の原発廃止費用を電力の託送料に上乗せし、広く国民が負担する仕組みが開始されることになりました。ここではその制度の是非は議論しませんが、ここ5年ほどの間、何もしないと電気代名目での公的負担は実は電気会社が公表している電気代単価とは関係なく、ニュースにも取り上げられないような形でどんどん増えています。 そして、あなたの会社の利益はその分どんどん減っているのです。

 【低圧といってもいろいろあります】
一般に低圧領域と呼ばれているものには2種類あり、一つが従量電灯、もう一つが動力と通称されるものです。前者はテレビで「電気代が安くなる」と言っているほとんどがこれを対象として話しているものです。一般家庭のほとんどの照明がこれに当たります。明細上は「従量電灯ABC」などの記載が多いです。後者は、法人や商店でしかないもので、例えば、業務用冷蔵庫や調理器具、業務用エアコン(天井はめ込みカセット型など)や小型の貨物用リフトなどがある場合に使う200V電源です。明細上は「低圧電力」という記載が多いです。
 法人では後者がとても大きい業種があり決して無視できないのですが、実は後者を下げるのは結構難しく、そもそも対応してもいない新電力も多くあります。低圧の電力を下げる方法は、使う量を減らす(次回予定)のほかは、現実的に多くの会社で短期で適用可能で効果が確実なのは、新電力会社の活用に限られています。

【タイプ別下げ方あれこれ】
 まず、従量電灯についてご説明します。
 一般家庭では従量電灯料金が15,000円を超えるというと相当大きな一戸建てだと思いますが(うちは平均8,000円未満です。)法人では平均3万円弱あります。実は、従量電灯は基本料金(10A,KV毎に東京電力では280.80円)に加えて、従量料金が生じますが、利用料が多くなるほど、単価が高くなる、という仕組みがあります。たとえば、東京電力の多くの方が現在使用しているプランでは、毎月120kwhまでは19.52円、120kwhを超えて300kwhまでは26.00円、300kwh以上は30.02円となっています。
従量電灯が安くなる新電力各社のプランのほとんどが、この三段階目を中心に下げるプランを採用しているため、利用量が多いほど下げ率が大きくなる仕組みになっています。そのため、法人では一般世帯よりもはるかに大きなメリットがあります。

 問題は動力です。これは実は下がるプランを持つ会社が限られていて、プランがあっても値下げが適用されるのは、一定の条件を満たすときだけ、というようなケースが多くあります。その中で制約が緩い会社がいくつかあるので、それらを中心にお勧めしています。しかし、コンビニの冷蔵庫などでは残念ながらほとんど通用しません。

 実は中小規模の工場で動力契約を持つケースは金額が大きくても5%近い規模で下げられるケースが多くあります。これは工場では大きな契約規模(大きな電力を一時的に使う機械)を保有しながら、その設備が稼働している時間はさほど大きくない、という特性があるためです。先ほどのコンビニの冷蔵庫は最大値は工場ほどではなくても、24時間ずっと動き続ける(しょっちゅう前後から開閉される)という性質があるため難しいのです。
なお、従量と動力をセットで安くする、とか動力だけだと安くならないがセットだと動力も安くなる、というプランを有する会社もあります。

 ちなみに動力には明細に「力率」という値が出てきます。低圧の場合、多くの会社では90%ですが、まれに85%や80%という会社もあり、これを改善すると基本料が安くなる、というのは高圧の場合と同じです。
これは簡単にご説明すると、送った電力が本来できるはずだった仕事量のうち、実際の仕事量に変換できる割合を示しているもので、電力会社からすると、発電の無駄をユーザー側にも協力してもらって改善するための割引制度、という意味があります。
 では、これをどう改善するか、というと工場などでは一部取り入れられている「進相コンデンサ」というものを用います。なぜ、このお話をしたかというと、世の中には「貼るだけで電気代が安くなる」とかいろいろなおまじない的なものが存在していますが、理論的・制度的根拠があるものと怪しいものがあります。それに対してこの進相コンデンサの話は適切に設定すると一定の効果があるはず、というものです。モーター類を多用する工場では検討の価値がある場合もあります。
 セラミックとかマイナスイオンとか、トルマリンとか言っている商品は、理論的根拠はありません。それでも効果があれば使えばよいのですが、継続的に効果を検証することが大変困難なため私たちはお勧めしていません。

 そもそも…ですよ。そんな簡単に実現できる方法で効果があるならば、有名メーカーの主力製品にそれが組み込まれているはずですし、政府が推奨しているはずです、よね。という反論をそうした商品の営業の方に過去数多くしてきましたが、「この人に言っても無駄だ」という顔をされるのが通例です。これは都合のいい断り文句につかえるかもしれません。

また、一時期「電子ブレーカー」と呼ばれる商品が大変流行しました。これも適切なおすすめをするちゃんとした会社と、詐欺まがいの販売をする会社が混在して商品を傷つけてしまいましたが、これは根拠がないわけではない商品です。これは、それ自体には節電効果やコスト削減効果があるわけではないことにご注意ください。また、「これを用いると、基本料金を安くできる」という説明も正しくありません。最近も弊社のお客様の飲食店に、「これを導入すると基本料が半分にできる」というような営業があり、弊社のコンサルタントに相談がありましたが、「飲食店ではそれはたぶん無理です。」と回答しました。

 これは動力を契約する法人の基本料が、「契約容量」×「基本料金単価」×「力率割引」で決まることに対して、契約容量を「使用している機器の合計値(単純合計ではありません)を基準に決める」(これを「契約負荷設備」契約といいます。)という方法のほか、平成8年から「ブレーカーの容量で決める(「契約主開閉器」契約といいます。)方式が認められたことによるものです。

後者は、複数の大きな動力機械があるが同時には稼働しないし、同時に稼働してブレーカーが落ちても入れなおせばいいよ、という場合に基本料を安くできる、という契約です。たとえば一人の工房で二つの機械があって、どちらも自動では動かないような場合でしょうか?エアコンと冷蔵庫が同時に動いて、スチームコンベクションが途中で止まると廃棄が発生する、というような飲食店には難しい方式ですし、やるとしたら、長期間の利用電流を測定して適正値を決める必要がある、ということもお分かりいただけるかと思います。
電子ブレーカーはこのブレーカーのダウンを一定範囲内の時間内だと「おまけしてくれる」というものです。したがって、ピークがごく短時間になるような場合には、これでしのげる場合があります。ただし、電子ブレーカーは結構高額な価格設定がされており、これが効果がありそうな大型の低圧動力契約というのは数や業種が限られます。根拠となる制度自体は正規のものですが、効果については検証が面倒で十分ご注意いただきたい商品です。

【その他の選択上の注意】
まず、最近は紙の郵送で請求明細をくれない(webのみ)とか別料金(それで削減効果が消えるぐらい高い)、という会社が増えています。また、コンビニ振り込みを制限するなどして管理コストを下げている会社も多いです。同じようなことは通信関連、ネット関連でも増えてきています。経理の担当の方は処理漏れが発生しないように郵送の方が安心といわれる方が多いですね。
新興勢力はネットやシステムという武器を用い、既存勢力が大きな人的固定費を抱えていることを弱点として低コスト体質で勝負する、というのが現在の競争の一つの構図です。私はそれはコストが下がるならば会社は積極的に受け入れるべき変化だと思っています。紙で保存したければwebを自分で印刷すればよいのですし、webでいつでも見られるわけですので。

 さて、ここまでご説明しましたので、次回は需要側、つまり、照明やエアコンの使い方や変え方などで節約する方法についてご紹介してまいります。

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