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経費削減講座22 印刷物

毎週1回ぐらい、経費の減らし方、それもできる限り自社でまず取り組める、取り組めないまでも氾濫する情報のうち何を信じてよいのか、何を気を付けなくてはいけないのか?をお知らせしています。そんな本連載も、もう22回目!になりました。

今回は印刷物の費用についてです。会社案内のようなパンフレットや商品カタログ以外にも、複写式のその会社専用の伝票がある会社があったり、あるいは大量の請求書を圧着はがきで印刷発送していたり、小売業ですと新聞折込チラシやDMと大雑把に言って日本の企業では売上高の1~2%が印刷物に費用を費やしていると言われています。チラシは早くから価格競争が進んでおりましたが、企業内の印刷物はつい最近までなかなか下がりにくい状況が続いていました。これは、この講座のほかの項目でもでてきましたが、受注する印刷会社側に比べて発注する側が原価に対する情報をあまりに知らない「情報の非対称性」が顕著だったことが影響しています。たとえば、紙の原価、版の制作原価を印刷会社の営業マンは当然理解しているわけですが、発注する側は知らないわけです。しかも、紙の原価は我々がアスクルのカタログで見ている価格よりもずっと安い(紙は輸送費のコストに占める割合が大きく、ロットが大きくなると価格が下がる)のです。

 

【ネットプリントよ、ありがとう】

ところが、この状況が大きく変わったのがこの5年程度の「ネットプリント」の普及です。実名を挙げると、プリントパック、追随するラクスルが、比較的小さなロットでも安価に印刷してくれる、しかもその価格がネットできちんと表示されている、という状況が生まれたため、印刷の費用自体は、それが発注側も受注側も一応の基準値になりました。今では、小さな印刷会社もこうしたネットプリントに印刷を依頼しているのが当たり前になりつつあります。印刷物は製品により機械がそれぞれ異なるため、いろいろな設備を保有して大ロットでの印刷に対応している印刷会社が少数ある一方で、多くの中小企業は、小ロット用の「簡易オフセット」といわれるコピー機の立派なもののような姿をした印刷機を用いて自社で小ロットの簡易な印刷物を請け負う一方、自社にない設備を用いるものは他社に依頼するのですが、それが場合によってはこうしたネット印刷の方が早くて安いということが起きているのです。実はプリントパック、もともとはこうした印刷物の外注下請けをうける専門工場としてスタートし、その受注方法を標準化し公開して今に至っているそうです。

ネットプリントも過当競争の時代になり、上記大手2社に対して、値段で大きくくぐって頑張るところも出てきました。特に名刺類はもっと安いところが出てきており、実は当社もそういうところで名刺印刷しています。また、ある結婚式場会社は、印刷会社から、高品位の印刷物を得意とするネットプリント会社に発注先を変えて、1億円のパンフレット費用を3割近く減らしました。こうした高品位を売り物にする会社は、ネットプリントであってもある程度高レベルなサポートを提供してくれてもいるようです。ともあれ、従来型の印刷会社は受難の時代です。

 

ネットプリントは、指定されたデータ形式で完全入稿することが条件です。Word,Excelで入稿できる会社もありますが、結局高品位なものを作成しようとおもうと、illustrator、Photoshopでのデータ作成にならざるを得ないところです。これが自社でできないところは(できないところが大半でしょうが)、従来、制作から印刷、納品までを全部まとめて外注していたのだと思いますが、先ほど申し上げたように通常の印刷物ですと、結局そういう会社も印刷しているのはプリントパックだったりします。それならば、版のみを依頼し、印刷は受け取ったデータを自分で一番安いネットプリントに出した方が安くなることもあります。そうなると今度は、版は印刷会社に依頼しなくても、これもクラウドワークスなどのクラウド型の仕事依頼先に依頼するとずいぶん安くなります。

また、日本独特の文化、「複写伝票」はロットが大きくないとなかなか安くならないということもあり、ネットプリントでも扱っているところがありません。複写伝票を下げるのは難易度が高いです。ただ、もう複写伝票、辞めてはどうでしょうか?

 

【大量の印刷物がある場合】

電機メーカーや旅行会社、あるいは金融機関のようにパンフレットがたくさん種類があり、しかも大量にある場合、一個一個を相見積もりを取り個別に交渉している余裕はありません。このような場合は、その会社の印刷コストを版数やページ数をベースに標準単価化し、「単価テーブル」を作り、それをもとに印刷会社と一定期間発注契約を行う、という方法をとります。ただ、この方法を社内でやるには、印刷会社出身の詳しい方がいない限り難しいということで、専門のコンサルタントを起用して実施することになります。

印刷費用を相談していると、経営者のつながりで会社の変更が困難というケースが多くあります。その場合でも、既存の会社を用いながら、テーブルの標準化下げることもできます。また、印刷物の場合、工程が非常にひっ迫していて社内がぐちゃぐちゃ、というケースが印刷物が多い会社ではよくみられますが、その辺もメスを入れて整理することもできます。要は、プロの目でいったん単価と工程を整理してみましょう、ということでこの方法はかなり規模が大きい場合には効果があります。

印刷物の場合、そのほかにも発送、保管の手間やコストがかかったりします。また、欠品して営業から文句を言われるといやなのでついつい多めに印刷して廃棄がたくさんでる、ということも起きがちです。そのためには、初回ロットを抑制し、2回目以降の印刷リードタイムを最大翌日発送を可能にして欠品リスクを抑え、工場から全国直送する仕組みを構築する、というようなサプライチェーン全体を見直すこともあります。

印刷物の場合、請求伝票を見ても解決できません。詳細見積もり書のほか、実物、利用シーン、どのくらい継続使用するのか?原稿作成方法などいろいろなことを教えていただいて、そのうえで印刷会社ではない、貴社の側に立った専門家が改善するということが大規模ユーザーの場合には一般的です。欧米では、こうしたプリントマネジメントのコンサルタント会社というのはかなりあるのですが、日本でも最近現れ始めていて、私も時々協力をいただいています。印刷会社がこの「プリントマネジメント」という言葉を用いて営業していることもありますが、基本的立場が相違しますので、ご注意ください。

 

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