新型コロナウイルス対策をめぐって、政府の電子申請が使いづらいという指摘がたくさんありました。確かに使いづらい。しかし、情報を一元管理したら便利になることはわかっていたのに、マイナンバーカードによる強力な電子政府の実現に反対したのもまた、その文句を言っている当の国民自身です。所得、税、社会保険に福祉、教育に今回話題の登録金融機関口座などが一元管理されていれば柔軟な政策を組み立てることができたことでしょう。その方が便利なことは明らかなのに困らないと二言目には「リスク」と言って新しいことに反対するのが日本人なのです。
では、あなたの会社はどうですか?納品物、中間生成物、顧客からの預かりデータ、それに収支や勤怠や人事評価、給与などのデータなどは、サーバーのどこにあり、誰が閲覧権があり、いつまで保管しているのか?あるいはそのデータの形式や項目の定義は統一されているのか?というと、情報セキュリティマネジメントルールを敷いている会社であったとしても、実態としてはほとんどできていないでしょう。
多分、個人に貸与しているPCの記憶装置に大量のデータは保存されたままだし、バージョンも最新版がどれか自分でもわからなくなっているでしょう。ファイルサーバーに保管してあるケースでも、年月が経ち、人が入れ替わっているうちにどこに何があるかわからないし、いつの間にか同じようなフォルダが2つあり2か所に分散することも多いことでしょう。システムからダウンロードして加工する作業も毎回依頼されるごとにやっているので、項目が一定でないし、時間もまたさせることでしょう。偉そうに言っていますが、これは全部私がやってきた失敗でもあります。
リモートワークが順調にいかないという会社の理由はいろいろあり、主たる原因は業務分掌とミッション、それに期限の不明確さにあるのですが、そういう会社であいまいなのは業務定義だけではなく、データの定義も決まってあいまいです。そして、それがまたリモートワークの実現を困難にしています。普段からデータがどこにあるかを聞いて回っていて、メールで都度再送してもらっていたり、都度説明してデータの作成依頼をしていたり、あるいは必要なデータがLAN上の他のパソコンの中にあったりするのです。今回のリモートワーク推進期間にVPNで会社のPCにログインできる仕組みを初めて動かした中小企業も多いようですが(その関連の設定技術者は一時期大変な忙しさだったようです)、VPNは家庭の回線速度にも依存しますが、LANのようにはいきませんで、快適に仕事ができるわけではありません。決められた場所から朝晩データをダウンロードしたり同期したりという作業が必要です。
こうした混乱を経て、「データの保管場所を統一して整理する」という会社が今増えています。毎日の感染者数が拡大する中でリモート業務をさらに拡大する必要性が間近に迫っている状況ですので、今回問題になった現象に対処せざるを得ないのはわかります。しかし、業務を効率化するという観点ではこれは正解ではありません。VPNやクラウドドライブの緩慢さの分だけ生産性は落ちてしまうでしょう。
実は業務定義とデータ定義の問題は表裏一体です。データは通常は業務のインプットとアウトプットであるからです。逆に言えば業務がきちんと定義していれば、データのフォーマットと保管場所と保管ルール、品質基準とチェックルール、検査者はそれに伴って決まるし、そこで必要となるもの以外は、捨ててよいはず、というかセキュリティ上捨てるべきデータです。
同じようなデータを何度も手で作らなければならないことであったり(しかも体裁を整えるのにやたらと時間がかかる)、担当者によって同じ顧客の同じ業務であってもフォーマットも定義も相違していて、もちろんファイル名もルール化していないというようなことに対してやるべきことは、「業務自体の定型化」であって、データの置き場所の問題ではありません。そうすれば、自動化による時間削減や担当間の品質の安定と、データセキュリティやアベイラビリティの改善を図ることができます。急がば回れです。回り道とは言っても、慣れればばそんなに時間はかかりません。コツと最初のうち、8割方まで記述する作業は弊社でお手伝いしますのでご安心ください。