一年ほど前に、経営者の健康についてこんな記事をご紹介し、私が見てきた、仕えてきた経営者のうち、一部は非常に克己心が強く、その自己確認の意味もあって厳しい持久走的スポーツをしている、ということを述べました。
最近になって、同年代ぐらいのお世話になった方(経営者ではなく士業なんですが)が、2人アル中で仕事ができなくなっているという話を相次いで聞いて少しショックをうけました。私が昔お世話になっていた時には、そんな素振りや酒臭さは全然ない方だったのですが、言われてみれば…依存的な性質はあったように思います。振り返ってみると、お世話になってきた方の中でも古い営業管理職を中心に、酒でダメになった、という方はそこそこの割合でいました。一方でたばこで迷惑した人はいても、たばこで自分が全然だめになったという人は記憶にありません。(集中力に欠ける人というのはいましたが)。これは世の中の不都合な真実なのでしょうが、酒による経済的損失というのはタバコよりもはるかに大きいのでしょう。でも、酒はたばこほど排斥されてはいません。政治的影響の大きいテーマなのでしょう。
振り返って、前線で活躍するトップ経営者たちとの酒席を思い出すと、彼らは実は話すこと、演じることに集中していてあまり量は飲まないようにしていました。よく見ると、「酒を飲ませて酔わせて口を割らせてホンネを聞き出し」自分はそれをしらふで聞いてインプットして対策しているかのようです。話しているようで話させていたのです。
そんな彼らが酒に強いふりを演じつつ、実際には上手いこと酒を躱すのは当たり前です。一晩に2席をかけ持つこともざらで、しかも帰ってレポートを読み、朝はまたトレーニングしてから会社に来るような人たちです。ある時、そんなハイパーな経営者の一人、いくつか年上のスーパーマンに私はおでん屋のカウンター席で直球で質問したことがあります。彼は普段の私を含めた少人数の酒席では、「〇〇ちゃん、のみがたんねーよ」と結構強引に進めてくるような、あまり素を見せないハードラッシュなタイプです。
「あまり飲まないように上手に工夫していますが、何かポリシーがあるのですか?」
彼はこう言いました。
「酒でリラックスできるとか、気がまぎれるとか…そんなんは一時的にそんな気分になるだけで、結局カラダも休まらないし、却って寝られないし、翌日のコンディションも良くなることはないね。それでも酒の席に行くには、別の目的あるからだよ。」「会食は仲間を増やして絆を強くする場であって、酔う場とは思っていないね」そして、「酒は人に飲ませて利用するもので、自分で自分に使う薬ではないね」「俺はリラックスとか気分転換とかはトレーニングを利用している(それがまた競技レベルなのですが)」
経営者の従業員との視座の違いというのはいろいろな箇所に現れますが、これもそんなものの一つです。やんちゃなようで常に冷静。楽しんでいるようで楽しませている。話しているようで話させている。そんなセルフコントロールに優れた経営者は、健康、体力維持に努力する層と概ね一致しているように思います。