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業務マニュアルをどう作るか?①

弊社の仕事の中では、業務の進め方(それは経理だけでなく、営業、人事もあります)を整理してあるべき姿に近づけそれを定着させる、という仕事が大きな位置を占めるのですが、その中では構築した手順を会社のマニュアル化する、という、当たり前のようでいて、なかなかどの会社もやり切れていない作業が膨大に発生します。

そう、当たり前であり、どの管理者も「手順をマニュアル化しろ」というのに、誰もできていないこの作業。なぜできないのでしょう、不思議ではありませんか?そして、どうすればできるのでしょう?今日と次回は、弊社ではどうしているか?そしてどんな点に気を付けているか?をご紹介したいと思います。

なお、今回は、「文書化」だけに絞っており、「フローを如何に構築するか?」は別の機会にご紹介したいと思います。

なぜ文書化できないのか?どうすれば文書化できるのか?

これは、様々な組織を見てきて、結論は明らかです。業務フローを確立し、誰でもできる形に標準化することを、組織のミッションとして定義し義務化しているかどうかにほとんど全てがかかっています。

当たり前のことを言っているようでいて、組織としてこれが「義務」として定義できている会社は大企業でも中小企業でも実はそれほど多くありません。「プラス」の成果ではなく、これは「義務」、できてようやくイーブン評価の事項として位置づけられるべきです。そして、今私がイシューにしているのは、「文書化」だけではありません。それ以前の「業務設計」自体に文書化できない原因があるのです。

私が見てきた中では、原因の8割以上は業務を誰でもできる形にして拡張性、交換性のある形にすることの価値を経営者がわかっていないことにあります。時々、このブログで紹介している「いい人がいない病」またの名を「青い鳥症候群」ですね。

そういう経営者はだいたい頭のいい人なので、やたらと難しいことを複雑にやろうとして、それができる自分とあと一人程度のための仕組みを作って、しかもいつまでも「構築中」ステータスのままなので、定型化する段階ではない、定型化する必要もない、と思っています。しかし、その割には、そのもう一人が辞めて、業務がチキンと引き継げずに大きな後退を強いられることを繰り返しています。

その業務は時間をかけても普通の人には引き継げません。その人のスキルや知識に合わせた専用業務になってしまっているからです。これも落とし穴でして、「文書化したら引き継げる。拡張できる」というのは正しくありません。文書化しても、平明で誰もができるシンプルさがないと引き継げ無いのです。

そういう場合はどうするかというと…引き継がないで0から作ります。あとからトレースしても何やっているのかわからない、ということはよくあります。誰もがわかる、を前提に作り直した方が早いしその後も助かります。そのような場合、その辞めた人が会社に貢献し遺したものは…実際には何もなかった、ということになるのです。残酷で極端な言い方をしているようですが、実際、そういうことはよく起きていませんか?

それではダメなのです。

1,2人でうまくいったら、とにかく20人採用して3拠点増やして企業を成長させよう、と思っている社長は、今自社で20人採用できるレベル、というのが、必要最小限の読み書きしか要求できないとわかっていますし、その人にやらせる方法を考えます。だから、「シンプルな方法論化」を成果として厳しく要求します。そして、成長するのは、明らかに後者のほうです。経営者が、「シンプルな標準化」を宣言し、これを行うことを義務化し人事評価基準の重要要素に加えない限り、社員はやりません。

8割が業務設計自体の失敗ならば、残りの2割は、経営者は「やれ」と言っているが、その「方法」と「時間確保」を指示していないパターンです。今回と次回、取り扱うのは、こちらのパターンです。方法については、このあとご紹介しますが、その前に時間確保についてまずご説明します。

時間の確保、優先順位指示は管理者の責任

これも、伝統的に経営者や管理者に陥りがちなミスですが、「指示はしたが、できていない」は、これまで何千回と目にして腹を立ててきたはずなのに、なぜ、それが自分の指示ミスだと認めないのでしょうか?

こういうケースは、大抵、「アレもこれも全部やり遂げろ」になっているうえに、評価の重みづけが、指示事項と一致していない。これは失敗するに決まっています。昔のように終わるまで帰らない、いくらでも残業してでもやり遂げる、それが正しいとかプラス評価の時代ではなくなっていますし、たとえそれが会社の現在の人事評価のプラス評価になったとしても、人生の中でプラスになるとは今の若い社員は思っていませんので、やりません。会社と社員が信頼し合って見捨てない時代はバブル崩壊後のリストラ、非正規化の中で終わってしまっているのです。

だからこそ、一日にやることは一つか二つ、四半期にやることは3つ程度に絞り、その代わり、それらについてはマニュアル化まで含めたミッションにしたうえで、「余計なことはするな」と言わなければ、完成しません。むしろ、終わってもいないのにミッション外の余計なことをしたことを叱るべきなのです。残業しないことが当たり前になりつつある令和では、一日の労働時間は8時間の有限な資源であり、資源配分の指示は管理者の重要な責務なのです。

これが、完成しなければ、給与を下げられる人事制度が導入され運用されていて、優先順位に紐づいた評価項目が導入されていれば、社員に結果責任を給与の形で取ってもらうことができますので、比重の大きな項目の完成度を高めることから取り組むはずです。しかし、実際には多くの日本企業はそうなっていません。責任を取らされるのは管理職だけ、経営者だけなのです。それならば、マイクロマネジメントと言われようが、やらせたいことだけをやれ、といわなければなりません。

そして、あっちこっちの作業をつまみ食いする(本人は臨機応変に即時対応していることを褒められるべきだと思っている)状況を排除し、1回2時間程度の集中作業時間を確保して作業を進捗させることも管理者の役割です。本当は、そんなことは言われなくても自分で成果のために自分をマネジメントできる大人の集団であってくれればよいのですが、実際には、日本の組織は他人の気分や目を気にして成果物(アウトプット)以外のものに惑わされています。


そして、マニュアルを作る方法の話

前置きがながくなりましたが、ようやく作る方法の話に入ります。

昔、とある家電メーカーの修理部門に伺ったら、非常に洗練された書式で、図入りの立派な修理点検マニュアルが製品ごと部位ごとに整備されていました。秘密もあってなかなか教えてもらえなかったのですが、これらのマニュアルはそのメーカーでは、設計段階で設計と共に生成されるわけではなく、修理部門で発売開始になってから、独自に作っているものだということでした。「大変な労力がかかっているでしょう?」という質問には…「いつもいつも修理品でいっぱいというわけでもなくて、時間があるときにベテランが指導して若手に作らせている」ということが葉にものが挟まったような言い方をつなぎ合わせると見えてきました。

私、その時の商談は、全国の修理の受付を2か所に集約して集中管理するためのCTI~CRM系の設計に伺ったのですが…人余ってるんだ…と思ったことを覚えています。

そんな恵まれた(いえ、その10年後には大変な目にこのメーカーは遭ってしまったのですが)会社はないわけで、きれいで立派でなくてもよいから、できるだけ短期間でわかりやすいものを作る必要があるわけです。

それにはいくつかの便利な手法があります。

肝心なところでごめんなさい。長くなったので、次回に続きます。

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