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心に熱源を持つ人

 このタイトルは、スポットで仕事を一緒にしたとある30代半ばの女性に心動かされた私が、その人を紹介してくれた社長さんに彼女を評して伝えた言葉です。久しぶりに「この人を自分のチームに加えたい」と心から思った人物でした。

 彼女は別に有名大卒でもないし、有名企業で実績を上げた人でもありませんで、様々な経験をしてきた一介のフリーランス。後から本人に聞けば子だくさんだそうです。どうしても緊急で人手が足りず困ってしまい、紹介者の社長にご相談したところ、拠点からお近くに住む(いや、これも社長の誤解で、実際には自転車で30分もかかっていたのです)この方をご紹介いただいたのです。

 「本日午後からご協力いただけませんでしょうか?」と彼女に連絡すると、まったくの異分野(実はそうではなかったのです。会ってから知ったのですが彼女はその分野で有名な会社で過去にアルバイトで働いた経験者だったのです。)であるにもかかわらず、彼女は、「ぜひお願いします」と言ってくれ、現地集合可と言ってくれたのでお願いしたのですが、こちらが困っているとわかると、時間を調整して約束の2時間も前に到着して着手してくれました。そして、仕事ぶりを自分も作業しながら見ていると、一つやるごとに少しずつ改良しながら、しかし、かなりのスピードで作業をこなしていました。しかも元気。声が大きい。そして、かなりの重労働でもへこたれない。

 業務が終わった後で彼女に興味を持ち、お話を聞いてみると学校に通ってプログラムを勉強したので、その学費を少しでも稼ぎたいことや、この業界(EC関連)で仕事ができるように見聞を広めたいなどのお話でした。そのあと、職務経歴書ももらったのですが、それを見て私のこの人を見る目が間違っていなかったことを確信しました。

 彼女は、一つの専門的なキャリアを磨いてきたという人ではないし、たくさんの子供を育てる過程で、キャリアという点では他の男性、女性に後れを取ってしまっています。しかし、新しいことに取り組むのに積極的に勉強し、機会を生かそうと多少異分野であっても、自転車で30分かけて飛び込んでいきます。そして、目の前の作業に、何か創意工夫を加えようとします。

 近年、人材市場では、自分の「スキル」を明確化してアピールし、企業の側もできるだけ即戦力となるような経験者、スキル保有者を求める傾向が強くなっています。しかし、「正社員」は、一度採用すると長期にわたってお付き合いする必要がある制度であり、それに対して事業環境の変化はどんどん早まっており、必要となるスキル・人材もかなりの速度で変わってしまいます。それだけでなく、同じ業務、同じ業務に用いる同じアプリであっても、やり方も変わり、操作や品質基準も変わってしまっています。その度に、「覚え直し」「学び直し」が強いられ、人は年齢を重ねると、あるいは若年期の学習習慣がないとそれに耐えられずに落伍していきます。
 それに対する日本社会の一つの回答は、「非正規雇用」による流動化であったわけです。実際、派遣社員の若い女性の方が、その部署の課長よりもその部署の専門的スキルもPCスキルもその断面だけでは上、というケースは日本中でたくさん見られます。

 しかし、彼女のような人材は、「何でも屋」ではあるかもしれませんが、その中で自らをイノベーションし、そして、目の前の仕事が何であっても、創意工夫を重ねて改善していきます。そういう「心に熱源を持つ人」こそ、どんな業種、職種でも、あるいは時代が変わっても活躍できる人材です。そして、そういう人を探し出し、見抜いて招き、そのうえで活躍できる環境を提供することこそ、HR担当の仕事のはずです。
 多分、彼女は家庭環境から社員としてフルタイムで会社で働くことは選ばないと思います。それでも、彼女のその前進力を組織に取り込む方法はいろいろあるのであり、そのために制度を調整しIT環境を用意していけるはずです。今の日本企業にそうした、成果のために現状の画一的な人事制度を変えていく、という姿勢があるだろうか?という事にも疑問を持ったできごとでした。

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