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誰が何をやるのか?~チェンジマネジメント⑥

2回ほど、「緊急事態対処」の話を挟んでいたので、間が開いてしまいましたが、こちらの記事では、経営改革のゴールをどこにするか?についてご説明しました。

ゴールを決めたら、今度はそれを社員に伝え、そして走ってもらう、という段階に入ります。今回は、その時どうするか?そして、どんな問題が起き、どのように対処するべきか?ということがテーマです。

発表のタイミング

全体を段取りよく、テンポよく進めないと機運は消散しがちです。私は、「経営の慣性」と、物理の「慣性」がわかりそうな方には言うのですが、組織には、動くまでは止まろうとし続け、一旦動き出すと(あまり考えずに)動き続けようとする性質があります。動き始めるまでは経営者が全力で後ろから押し続けないと止まってしまいます。とはいえ、準備万端整えるには1年も2年もかかってしまいますしそれでは、時代の変化に間に合いません。

いつが良いのか?というと、「部門別」「業務別」「個人別」の売上や費用が手元で集計できるようになってデータをみんなに見せられるようになったタイミングだと思います。逆に言えば、これだけは事前にできるように経営者の方で準備しておく必要があるということです。

これは難しいことではなく、たとえば過去一年の売上と経費…中小企業の場合、多くて数千行でしょう…にすべて個人と業務名、部門名を付与すればいいことですし、細かいところは多少誤差があっても良いものなので、力づくでねじ伏せられます。しかし、外部の会計事務所に依頼している場合にはそこには依頼できません。彼らは「どれが何の業務か」はわかっていないからです。このくらいの規模なら週末家でずっとやっていればできることなので、経営者が自分でおやりになればよいと覚悟を決めたうえで、まずは経理責任者に依頼してみるとよいでしょう。そこで何が見えるかは今後の試金石です。結構な確率で「それは営業さんにやってもらわないとできません」というと思います。確かにどの業務の経費なのかを正確に仕分けるのは当事者である営業の方が正確なはずですが、経理だってわかっていないわけではなく、わからないのは適当で良ければできるはずであり、しかもこの作業が、「経営改革の起点となる重要な作業」であることを言ってもそのような態度、ということは、あなたの会社が早くも老化・劣化していることを示しています。

最初はそうではなかったはずなのに、会社が出来て何年も経つと、「経理」は正しい税務と会計だけに専念し、営業は「受注金額」だけに専念し…マーケティングとか、ファイナンスとか、そもそも戦略とかは誰が考えるの?というと、「自分ではないが、誰かはわからない」という態度をみんなが取るようになります。これが1000人もいる会社ならば機能も分化し分からなくもないのですが、30人でも起きるのだから不思議なものです。ここで担当者を叱ってもあまり生産的ではありません。ただし、ここで短期間で「仮ではあるのですが…」と出してくれる人が管理部門にいれば、今後の展開はとても楽になります。

まず「部長」に話してみる

データが出来たら、打ち合わせの準備です。経営者の方が思っている「将来どうなりたい」、そして「このままではこうなってしまうという不安」をできるだけ統計、ニュース、そして社内データに基づいて腹を割って話す資料を整理してみましょう。今の段階では綺麗なパワーポイントである必要はないですが、話そうとすることと根拠、そしてやりたいことが一貫しているかを点検して、今後社員、社外の資金や事業のパートナーに同じ趣旨の話を何百回としていくための基礎資料になります。

それが出来たら、実際に話してみましょう。「部長」にホンネを話せますか?あるいは、部長に寝首を掻かれることを心配していませんか?もし、そんな状況があるならば、それを先に解決する必要があります。実は…そういうことがあるという経営者が相当割合に及びます。多くの場合、「自分は経営者としてやるべきことをやり遂げる」という意思表明がなかったり伝わっていないことが背景にあることが多いように見えますが、その会社の歴史にもよるでしょうから、それは個別にご相談に応じます。

実は経営者も準備が不十分ですが、そういう会社は部長も準備が不十分です。会議はだいたい当期の決算値の話で終わっていて、戦略とか体質改善とかの話はされていないので、ボキャブラリーがお互い貧弱です。それでもいいのです。

  • 市場や環境の変化をどうとらえていてそれが自社にどんな影響を今、そして将来及ぼすのか?
  • 競合はどうなっている。どうしているとみているのか?
  • 数年後にどういう状況を実現したいのか?

をできるだけ具体的に話してください。そして、どういう状況を実現したいのか?についてはもちろん意見があれば聞いていただきたいのですが、それでもそれを最終的に決めるのは「経営者」だけです。

どうやってそれを実現するかを考える

2年後にどういう状況を実現したいか?を決めたら、そこへ向かってどうやって走るかを決めるのは、基本的には部長の責任です。と言っても最初はうまくできません。それは当たり前のことなのです。現場の実務がそうであるように、マネジメント業務も、最初は試行錯誤で効率が悪く、うまくできないのですが、それを毎週、毎日やっているうちにある程度上達するものです。その頻度が毎日の人は四半期に一回の人よりもはるかに早く上達します。

よくある経営者や部長のミスは、目標値、たとえばわかりやすい例でいうと部門利益を2年で4000万円増やそうという目標があった時に、毎四半期に500万円づつ増やすという「目標値を分割する」立て方をすることです。これは、言って聞かせても治らない人も一定割合いまして、その人は管理者に(というか今時の仕事の仕方に)不向きです。実際にやってほしいのは、「どうやって4000万円をふやすのか?」のプロセスの分解を行い、成功確率と成功した場合の成果の大きさや波及効果などからそれを順番付けすることです。

たとえば、利益を増やすには、売り上げを増やすことと経費を減らすことが考えられ、経費には仕入原価と、人件費、直接費とその他の間接経費に分類できます。人件費はさらに、固定費用と残業代に分かれ、それぞれ対策が相違します。売上高増加対策は、単価交渉と数量増に分けられ、数量増は既存顧客対策と新規顧客対策に、単価交渉は、既存品の交渉と、高付加価値商材の開発に分ける、というような構造を考えることができます。そして、この「分け方」にこそ、その業務をよく知る人だからこそできる「核心を突いた分け方」ができるはずであり、正解は一つではないのです。これらをデータを元にどこがあたりがよさそうかを探りつつ、順番を決めて、さらに先行させるものについては、それを担当別にミッションを割り振っていくのです。その「進め方のマップ」にこそ、その会社のこれから先のノウハウが詰まっています。

と簡単に言うようですが、実はここはかなり大変です。全部門の全員分のミッション設定を妥当感がある形で作る、というのは初めてでは自力では多分できないと思います。この「プロセスデザイン」と「目標設定」自体がいくつかの基本パターンがあり、しかも職位毎に責任や設定範囲が相違するべきであり、かつ社員の適正にあったものを選んでいく必要があるからです。一度基本パターンを知ってしまうと次回からは自分で改良できる人も現れてきますので、そこは帳票導入含めてお手伝いさせていただければ、と思います。

さて、このミッションを全員が達成してくれればそれが一番なのですが、実際には、どんなにサポートしても全体の半分程度の人しか達成せず、全然ダメ、という人も2割程度発生します。それでも、全体としては達成しなくてはならない責任が経営者と部長にはあるわけですので、各個人の目標はある程度重複的でバッファがある状態である必要があります。

そこまで全体像を作って、今度は部長が部員に話す番です。日常の営業、作業に加えて、さらに改善までをも「ノルマ」化するというこの取り組みを、社員にどうわからせたらよいのでしょう?それは次回のお楽しみです。

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