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「何を考えるべきかをまず考える」ためのツール

 たまには実用情報も掲載したいと思います。(アフィリエイトではありません)。

 お手伝い先で私がチームを率いるとメンバーにすぐ「何を考えるべきかをまず考えろ」というわけですが、もちろん、そんなことを言っても、こうした「メタ認知」の能力はそうそう簡単に習得できるものではありません。そして、全員ができる必要があるわけでもありません。
 ただし、参加するメンバーが、それぞれ取り組む課題の全体の構造を知ったうえで、自分が今やっていることがそのどの部分であるかを知ってもらうことは、自分のやることの価値・意味を知るという点でも、どのようなアウトプットが必要か?それがどんなスケジュールになっているかを理解して進める、という点でも必要なことです。

 そのため、私は、数年前からこのようなチーム運営にTrelloというツールを多く使っています。

https://trello.com/ja

Trelloには、昨年ガントチャートでの表示機能(有料機能です)が加わったように、サイト等で「スケジュール管理サービス」と紹介されている事例もありますが、それはその記事を書いた人が「仕事の仕方がわかっていない」ことを示しています。Trelloの最大の特徴は、「業務とそれを構成するタスクの構造」を表現できることです。
 ただ、私の使い方は他社で使いこなしている方の様子を見る限り、ちょっと独特かもしれません。webサイトの紹介でも、他社での利用シーンを見ても、「やるべきこと」「作業中」「終わり」をそれぞれ「リスト」(下の図で枠に囲まれて縦に項目が並んでいるもの)にして、そのそれぞれのボードに左から右へ「カード」(リストの中にある「やること」が書いてあるもの)を移動させていく、という使い方をされているようです。(下図 webサイトより引用)

それに対して、私はそういう使い方はしていません。今日はそれを少しご紹介したいと思います。

①戦略目標を実現するため(たとえば、売上10億円)のサブテーマをボードにする。

 今回の説明用にシンプルなサンプルを作ってみました。色が見づらいですが、とある事業で10億円の売り上げを達成しよう、という経営ミッションが与えられたとします。その時に、何と何を行えば10億円に達するだろうか?という大きなサブテーマがいくつかあるわけです。最初は、その主な課題、3~4個をボードにします。今回の例では、ちょっと稚拙ですが、「品揃え」「認知・広告」「オペレーション」にしてみました。
 進行するにつれ、ボードは徐々に増えていくのが普通ですし、最初に追加したものが実はクリティカルな課題ではなくて、ポイントは他のサブテーマにあったことが後から分かった、あるいは、「あるサブテーマについて実は少し焦点が違った」というようなこともあります。事業は始めてみてからわかることがたくさんあるものです。

 その場合は、リストのタイトルを変更したり、重要度の高いリストを左端にもってきたりして調整しています。(右端の方やスクロールする方はどうしてもおろそかになりがちなのです)つまり、戦略目標に対して、今解決すべき重要課題、あるいは、「ピラミッドツリーの2段目のステートメント」がリストになるようにしています。

②カードには、リストのサブテーマを具体的に記述する。

①で何をやろうとしているかを言ってしまいましたので、次にやることは推測がつくでしょう。ピラミッドツリーの次の段をカードにしていくのです。

たとえば、上の例のリストで「魅力的な品揃え」というテーマに対しては、「まず、自社のドメインを事業理念や戦略から定義」する。そのうえで、その範囲内での「市場での売れ筋」を把握します。一方で、当社の現在すでにある程度は浸透している顧客層を生かすことは当然考慮すべきでしょうから、それがどこなのかを再分析し、その2つが交わる領域を品揃え対象とするわけです。
 そのうえで、それが安いものばかりや高いものばかりでは困るわけですし、色が白ばかりでも困るわけで、どんな展開、スペクトルがあるとよいのかというあるべき姿を考えたうえで、それに該当しそうな商品を選定していくわけです。

と考えたら、それをカードに記載していきます。この時点では、担当者や期限はまだ、記載する必要はありません。この段階では、手順というよりも、さらに細かな課題に分割することをメインにしています。大きな課題に漠然と取り組むのではなく、細かな具体的な課題、それも重要そうなものを個別撃破していくことを積み重ねることで大きな課題に対して毎日少しずつ前進していくのです。そういう進め方ならば、「普通の人」でも十分組織に貢献できるようにできます。

③「こうやってこうやってこうやるの」はチェックリストで記載する。

 さらに、そのカードの内容を実際にやろうとするときには、その際の「手順」があるわけですが、それは、あらかじめ、カードの詳細の「チェックリスト」を用いて記載しています。

この時、「やるときに考える」「自分で考えさせる」のではなくあらかじめある程度、指示者が考えておく、というのが重要なポイントです。つまり、「こうやればできると私は思っているよ」というのを、指示する時に説明できるようにしておくわけです。また、報告させるときに「思っていたものと全然違うものができてきた」ということが起きないようにするために、レポートの表や項目のイメージをこの段階で添付ファイルで指示しておくようにします。

 そのうえで、改良や詳細化すること自体は担当者に任せることにします。逆に言えば、そうした手順が指示者にも担当者にもわかっていない状態で計画を実施し始めない、ということです。

下の例では、「対象商品の決定と調達」というカードに対して、まず良さそうな商品をセレクトし、それを実際にはバラバラのメーカーだと最低発注金額にみたなかったり、協力関係の構築に支障がでるということでメーカーをある程度まとめる方向で整理します。そのうえで、どの程度の販売数をどうやって稼ぐかの案を立て、メーカ―との商談を1位候補と2位候補に対して準備を行い、まず2位メーカーから商談し…という手順を示しています。
 これが正しいかどうかは、ケースに寄るでしょうが、その程度の「こうやったらうまくいくんじゃないか」という想定をしたうえで始めるということです。

 私は、この段階で、チェックリストの一つ一つの項目に対して、担当の割り付けと、期日の設定を行います。そのうえで担当者に個別に説明を行います。(集合会議という形態は時間の無駄が多いと思っています)そうすると、当日期日のものは担当者にアラートが表示されるわけです。説明は、対面で行う時もあるし、Slackで行う時もあります。若い担当者は、だいたいSlackの方が、きちんと伝わるケースが多いようです。

 残念ながら、昔はこのチェックリスト機能が標準で使えたのですが、今は有償機能になってしまいまして…大きなチームで共有して運用しようと思うとちょっとお高いシステムになってしまいました。

まとめ

 この方法を用いると、あるミッションに対する戦略セットの全体を俯瞰し、かつそのサブセットが誰がいつまでに実施するのか?そして、それはどのような手順と手続きが予定されているのか?をチーム内で共有できるのです。


 この方法には、一つ課題があります。それは、指示者の計画立案と、常時見直し、そしてそれをトレロに反映して全員に周知する、という工数が非常に重いということです。

ただ、管理者ってそれをやることでチームをうまく回す責任がある人なんではないですっけ?それならば、この作業が効果がある限りは最優先で対処すべき事項なのではないでしょうか?

 実は最近また、新しい組織でこれを使い初めまして、いずれはこれの運用をそのチームに移管していく必要があり、考え方を伝える準備をしたいと思い、このブログをアップすることにしました。

 トレロにはほかにもいろいろな機能があるのですが、あんまり複雑なことをやろうと思うと入力項目が増大してしまいます。トレロのいいところは、やりながら、詳細化したり、軌道修正したりすることをその場でメンバーが柔軟に反映でき、共有できることです。
 そして、管理者は間違いなく鍛えられます。

 というわけで、今日は、「戦略を可視化し、どのように進めるかを考え、つたえる」ということをトレロを使って行う、ということをご紹介しました。

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