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「アフターデジタル」

元々代表の私は小売業からシステム開発、さらにそこからプロジェクトマネジメントへというキャリアパスを積んだため、「自分はITがわかる」というような思い込みがありました。自戒を込めて告白するのですが、その昔やったという過信は、進化の激しいITの世界においては危険なことです。しばらく、財務や営業、それに小さな会社の経営管理などをやっていて、今また業界をまたぎ、経営全般を俯瞰する立場になって思うのは、IT,特にインターネットがビジネスの在り方を根底から変える過程が現在進行形で進んでいることに、私もそうだったが多くの40代以上の「世の中に馴れてしまった」経営者、管理職は気づかないでいるということです。

ここ数年、RPA(ロボットによるプロセスの自動化)がIT業界ではブームとなり、弊社にもたくさんの提携依頼がありました。けれども1件もご紹介できていません。その理由は、2つあります。一つはRPAによる自動化をするほどプロセスが確立して固定されている(都度少しずつ変更するとなるとそのたびのお金がかかる)もので、かつ巨額の投資をしても短期で回収できるほどの規模の業務というのは、現代の変化が激しく、マーケットへの対応が細分化している時代においてはなかなか出会わない、ということです。これは弊社が現在はいわゆる「大企業」のお手伝いをしていないから、ということも理由でしょう。そして、もう一つの理由の方がより深刻な問題です。それは、そのプロセスを固定化することがこの先10年のその会社にとって価値があることなのか?ということを考えたときに、「本来は見直すべきである」というケースが多いからです。それはプロセスではなく、それを包含しているビジネスモデル自体がインターネット、IT技術を用いてできることを前提にすると、すでに陳腐化しているケースが多いということです。

現在、我が国にある業務プロセスの大部分は、数十年をかけて日本の商習慣や生活文化をベースとして構築されたものです。当然、買う場所は店舗であり、お金は銀行経由で送金され、人間がチェックと判断をすることを前提としています。しかし、それをすこしずつ改良をしていき、速度を数倍に上げる(が、それに見合うコストはITベンダーにとられる)だけでは会社を大きく成長させる画期的な生産性の向上や他にない商品や購買体験を実現することはできないし、今、日本の企業社会に必要とされていることはそういう逐次改良ではないということだと思うのです。

最近、「アフターデジタル」という書籍が話題になっています。これはごく簡単にいうと、「すべてがネット上で自動で完結する」ことを起点にビジネスモデルを構築しなおし、それを実現するために必要な資源を集める、ということにより高い競争力を実現する、その世界が「アフターデジタル」であるというものです。

いままで築き上げてきたものは、21世紀においてこれから生まれる新しい仕組みよりも不効率であり、ユーザーはより手軽によりリアルな体験がいながらにしてでできる、ということをゴールとすると、企業にとっては今いる要員、今ある設備や取引先との関係性、商流など今まで「強み」と認識していたものが「不要なもの」となってしまいます。その変革は、「改良は得意」だが、「捨てるのは苦手」な日本企業には避けて通りたいものでしょう。

しかし、今中国とアメリカ(が世界のユニコーンをほぼ半分ずつ生んでいて他地域はちょろちょろ)で多くのメガベンチャーが生まれているのはこの発想が起点になっているものが中心です。Uber、AirBnB、DJI,WeWork,SpaceXなどはすべて、改良からではなく、「世の中、今時こうあるべき」から入って、その機能や体験で支持者を急激に広げてきたものです。

お盆で静かなオフィスでここ数日考えていました。ここ数か月、地道な事業計画や営業支援などのお手伝いが弊社も続いていて、それが仕事になっていたような気がしています。しかし、それは今の企業の足腰を強靭化することには役立っても、世界に新しい価値を提供することにはつながりません。

「今どき、そんなビジネスモデルで本当にいいんだっけ?」

そう自分にも、お付き合い先にも問いかけることも必要だな、と休み中に考えていました。

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