少し前に掲載したこの記事で、中小企業の人材難は普通に募集していても、充足できない時代である、ということをご説明しました。
その最後に「副業人材」を人材難の解決策とすることについて、「一工夫も二工夫もいる」というお話をしましたが、今週は2回に分けて、その件について具体的な方法をご説明します。
①なぜ、社員採用よりも副業人材なのか?
弊社でお客様の状況を把握し、次にやるべきことを決める時、社内の技術や顧客というところはもちろん、前提にするわけですが、社内の「リソース」という点は制約条件としては原則考慮しないことにしています。中小企業で、これを制約条件としていては、やれることは今やっているの近傍に限られてしまいます。それではイノベーションにはなりません。その代わり、「やるべきこと」を決める時には、「どうやるか」を用意するだけでなく、「誰がやるか」の担い手も用意しなければならないことになります。
その時、少なくとも初期は、社員の新規採用という手は使わないことにしています。これは、「なかなかいい人が取れない」中で妥協して中途半端な人材を採用しても「業務の仕組み」が構築できないからです。むしろ、副業でいい人を採用して、仕組みを作ってもらってから、人材を入れて平時の運用と改良を行う、という方法をとらないと、その会社にとってのイノベーションは起こせません。(それでは、イノベーションは一時的という懸念はごもっともです。ごもっともではありますが、いつだって、イノベーションは外部とのトランザクションから生まれます。これはまた、別の機会に)
だいたい、新規事業の場合、「どんな人をどう探せばよいか?」や「人材の見極め力」もその分野に関しては社内に知見がありませんので、面接・採用をしても誤った判断をしてしまう可能性があります。それならば、実績がある副業人材とともに、事業を推進しながらその目を養いつつ、副業人材でベースを構築する方が、失敗の確立を下げられます。
②副業人材の調査と選定
弊社の場合、副業人材を探してくるのに特異な能力を持つビジネスパートナーがおりまして、彼に会社の課題と必要スキルや経験、評価方法などを説明すると、大抵の場合、そこそこフィット感のある、一流どころを探してきてくれるということで、弊社が副業人材を用いた業務改善を推進できるのは、そのパートナーのおかげでもあります。(知りたければ、ご紹介しますので、ご連絡ください。)
そうでなくても、副業人材の紹介業、データベースは充実してきています。ただし気を付けなくてはいけないことも増えてきました。
一番重要なのは、本当に必要としている分野の知識や経験を持っている人なのかを見極める(しかし、その分野の知識は社内にない)ことです。人員を採用する時に、担当領域の実務能力ではなく、「賢そう・利発そう」や「誠実そう」で決めている会社が多いのが日本の実情ですが、そんなものは全く関係なくて、(現職の機密保持に触れない範囲で)、すぐ使える知見や人脈、スキルを持っているかどうか「だけ」が大事です。
その意味では、自分では手を動かさない「管理職」は避ける必要があります。必要なのは、「実際に作業してもらい、アウトプットを作ってもらう」ことであり、社員に作業させることではないからです。(役職が部長でも、自分でバリバリ物事を動かしている人もいますので、形式上の役職を言っているのではありません。)今、現にそういう仕事をやっている人を探してください。「昔やっていた」ではだめです。副業でよいのであれば、この会社のこういう仕事の人、という具体的リクエストから探し出すことも可能です。
また、副業人材は、活用が社会的に話題になった当初は出てくる人材がみな、相当スキルが高い人や有名な人が多い傾向があったのですが、現在は、はっきり言って「玉石混交」です。「石」の方にあたると、業務遅延が頻発したり、アウトプットがいい加減だったりしてストレスが溜まります。ただし、それでも中小企業にとっては「トップクラス人材」の協力を得ることが可能な貴重な機会ではあります。
そういう玉石を見分けるのは、面接すればなんとなくわかりますが、その中で判断するポイントは2つあります。一つは、「過去に複数の会社でそこそこ活躍した(できれば、そのうち一部は中小企業やスタートアップ)ことがある」という点です。大企業の一部門でずっと働いていた、と言う人は中小企業に参加して活躍する可能性はかなり低いです。文化的な適応能力やスピード感、それに事業全体を見渡す力が不足していることが多く、さらに複数の会社で通用するという点から導かれる「一般化する力」の重要性を知らず、自分の経験だけを押し付ける傾向にあります。
もう一つのポイントは、「すでに副業の経験がいくつかある」ということです。副業できちんと成果を出すには、本業や家庭との時間配分、それにストイックな自己管理が必要ですし、情報収集も必要です。それの経験があり、かつ、2社以上で実績があり、今も成果をあげているような人は「ひっぱりだこ」な力のある人です。
逆にこうした使える人材を見つけたとき、相手を見ないで、社内の給与水準を参考に、「1時間あたりいくら」と決めることはしてはいけません。短時間であるからこそ、単価は高くても総額は抑えられるのですから、高くても使える人材を取るべきです。そして、単価を高くした方が使える人材を探しやすいです。他社で引っ張りだこの人材を2,3か月待って参加してもらった方が良い、という事もあります。業務スピードが速い人材は、日本の今までの正社員制度では、早くても遅くても同じ給与なので、業務当たりの単価が安かったわけですが、副業人材については、単価が高くなります。そして、そういうことを望んで、副業市場に自分を売り出している人材こそが「使える人材」ということになります。
③契約形態や契約内容
副業人材を社員と同様の契約にするというケースも徐々に増えているようですが、基本的には「請負」か「準委任(委託)」契約で、初回の契約期間は比較的短期にしておくことが失敗に備える意味では適当です。逆に言えば、「一定の事前通知で契約を双方から終了できる」契約にしておくことは重要です。
また、「何をやるのか?」を明確にしておくことも重要です。「やること」と「アウトプット」を事前にきちんと定義して、これを安易に変えないという事が必要です。
日本では、社員には、上司は何でも頼んでいいことになっていますが、副業人材の場合は、短期間の限られた時間、限られた情報で成果を出すことが必要になりますので、逆に依頼する側も、最初に決めたゴールは変えるべきではないし、攪乱要素をそこに投入するべきではありません。
こうしてみていくと、副業人材の仕事の進め方は、「成果主義」「実力主義」であり、「ジョブ型の業務参加」とならざるを得ないわけです。日本の職場の変革は、このような箇所から始まっていきますし、そこを理解して経営者もチームメンバーもプロジェクトのマネジメントに当たらないと、なんだか何も成果が出ないまま終わってしまいます。
また、出された結果に対して、「これを社内でどう使うんだっけ?」とできた後で考える、というのが副業に限らず外部の知見を導入する際のありがちな失敗なのですが、そうならないよう、「これに使うものだから、使えるように作ってください」という依頼方法をする必要があります。
それでは、副業人材をもちいた新規事業や業務改善プロジェクトでは実際にどのように進めればよいのでしょうか?昼間は彼らはいないですし…その辺の実務については、次回の②でご説明したいと思います。