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事業構想を具体化するコツ

 目下、事業再構築補助金の相談をいくつもいただいている(宣伝ではないので、欲しいわけではありません)。その中には、ほぼほぼ完全な事業計画を自分で建ててこられる方もいるのだが、多くは、「アイデアをいくつか挙げてこられる」というものである。

 その状態で、自分で申請書を書こうとすると、「●●を買いたい」という申請書になる。補助金というのはそういうものだと思っている人もいる。そうではなくて、きちんとしたビジネスモデルを作って、それを実行する事業計画を立てて、その中で補助対象になるものだけを申請して、他は自分で算段するのだ、という説明をすると、「面倒だな」という反応があり、そして、「それ書いてよ」という反応が来る。

 従前から月額料金などいただいて、現状と構想、それに社内リソースをきちんと把握しているケースでは、これにとことんまでフルサポートするのだが、そこまでではないケースでは、大変申し訳ないのだが、Wordベースで数ページの「具体的な事業モデルとその実現プロセスの例」をつらつらと書いて、「たたき台」として提供したりするところまでしかできない。こういう思索の時間のは嫌いではないし、感心してもらえるのでやりたい気持ちもあるのだが、時間がなくてそこまでしかできないのが実情である。
 それでも、そうした文字ベースで、ある程度分解的に説明された状態で業務を表現すると、そこから考えは前に進んでいけるというケースをいくつも見てきたので、30分でも1時間でも、なんとか時間をつくるように努力している。

 ただ、目下はそれでもやり切らない状況なので…私がどうやってそれを生み出すかには、いくつかのパターン、手法があるので、今日はそれをご紹介して、役立てていただけるようにしたい。


①対象となる商品、サービスは違うが、同じ手法を用いているもので、小規模ながらうまくいっているものを探す。

 冒頭からいきなり高尚ではない話なのだが、マネとまではいかないが、すでに世の中にある、そこそこうまくいっているモデルを対象となる商品、サービスにも適用できないかと考える。
 大抵は、参考になるものがあって、取り入れることができる。ただし、もちろん、その会社だからできることやできないことがそれぞれにあるのでそのまま真似するわけではない。

 たとえば、ゴルフスクールをオンライン化するには、資格のオンラインスクールのビジネスモデルや課金の仕組み、webの作り方などは参考になるし、多分、コンテンツの作り方も参考になる。「自分のサービスは特殊」という考えを捨てることである。

②対象をいったんできるだけ小さく絞る。その絞る箇所は、自分が得意というよりも、「市場が拡大しているところ」に絞る。

 「アイデアベース」では考えている市場よりも、うんとターゲットセグメントを絞って、考えることのピントが合いやすい状況で考えを進めるというのが重要である。何となく、大きな枠組みで大きな市場を相手にしているといつまでも散漫な状態のままである。

このことは、マーケティングの第一歩のはずなのだが、実際に自分の事業プランに有能な事業家が向き合うと、あちこちに可能性があるものを捨てきれず、なかなか絞り込めない事例が多い。特に「今そこをやっている」という場合には難しい。ただ、何も、「来た案件を断れ」と言っているのではない。営業の中心を絞って考えてみた方が、「刺さる」と言っているのである。

 こういう時には、対象マーケットをさらに分解してみる。たとえば、建物の断熱効果を考えるときには、「建築物」というセグメントを「商業ビル」「マンション等大型集合住宅」「一戸建て」ぐらいに分けてみる。そして、その中で、現在の保有能力的に可能な範囲のもので、かつ直近で市場が拡大していてかつ一定サイズ以上あるところを第一優先で考える。

 また、地域で絞るというのも効果的である。これは盲点なのだが、ネットサービスでも同様である。というのも、ネットサービスであっても、最初はやっぱり対面し、往訪し、手作業で足りない点を補うという事が必要であり、そのプロセスをサービスに追加していくプロセスが必要だ、という認識を④で述べるように持つ必要があるからである。

小さな事業だからと言って、あるいは自分が詳しくてやりたいからと言って、市場が極端に小さいところや縮小しているところは選ばないことである。それは、どんな小さな市場でも、すでに競合と代替材があることが通常であり、中小企業が1社でとれるシェアなんて、市場が大きくても小さくても、せいぜい1~5%程度であるからだ。

 ただし、今は、フルーツサンドがプチブームであるが、これはタピオカ屋ではなく、フルーツサンド屋をやれと言っているのではない。(今、フルーツサンド屋と言っている人は、2年前は、タピオカ屋と言っていた人だろう。)そんな短い波動ではなく、法改正や社会変動、あるいは技術革新というような不可逆的なトレンドを指している。

③世間で売れているものではなく、今自社で売れているものとセットになるものを考える

 これも当たり前ではあるのだが、中小企業にとっては、「今売れている顧客」というのが、「唯一の資産」である。何か目新しいもの、たとえばフルーツサンド屋をやったとしても、それが売れるかどうかは、その場所が駅近や前面歩行者に強く依存していて、適地は非常に限られていて、多分もう、そこではフルーツサンドが売られている。

 今、自分のお店、たとえばスポーツジムが駅から遠い住宅街の中にあり、そこに来る人が40代男性中心ならば、そこで売るのは、フルーツサンドではなく、帰りにいっぱいテイクアウトしてテラスで飲むか持ち帰る地ビールである。(自動車で来訪する時はテイクアウトは危険だが)そして、地ビールといいつつ、実際には一番安い発泡酒が売れる。

 事業再構築補助金では、申請者にとっての「市場の新規性」が要求されるのだが、それは上のような例では何とか説明できるのではないかと思っている。

同様に、②で「地域も最初は絞る」ということを言った。普通に考えると、多くのサービスで東京埼玉千葉神奈川で25%~35%の市場シェアがあるので、ここに絞るのが第一案なのだが、まったく地縁も知り合いもいないところに進出しても、きっかけがつかめない。最初に手掛けるのは、「お金を払えば協力してくれるパートナーがいるところ」である。

④最初は小さく、コンテンツを作る、その次に販売トライアルを少額投資で実施する、本番の構築投資はそのあとに、それらの知見を活かして行う

 これも、数か月~数年の期間でどのように事業を進めるのかを具体的に記述するというときに、ヒントになるものである。まだ、テストもしていないうちに、いきなりシステムを大規模に発注しようとする人がいるし、補助金の申請要領もなんだかそのようになっているように見えてしまうのだが、それはやってはいけない。

 こんなことは事業戦略を立案するうえでは当たり前のことなのだが、「補助金の申請期限」を前にするとほとんどに人が忘れてしまっていて、もし採択されたら、6月、7月から購買調達を開始する気マンマンである。助言する側も、「それでは事業の成功確率を高められません」ということを言ってあげていない。

市場を分割するだけでなく、プロセスも分割して考え、そのそれぞれのプロセスで、何を行い、何を知見として得るのか?を考えると、漠然と全体を考えているよりも、その時に必要な費用や人員、ノウハウ、時間軸が明確になりやすい。補助金には、「進行スケジュール」の記述が必要なのだが、それは、こうした計画から導かれるものである。


まだまだあるが、汎用性があってわかりやすいのは、上の4点ぐらいでしょう。ご参考になれば幸いである。

 最近ことに気になるのは、補助金の申請期限が近いから、と言って「補助金申請のための事業計画」が世の中で当然視されることである。また、同様に「事業にかかる経費を補助金対象になるものだけで作る」ということも当たり前のようになっている。それが嫌なので私は、この関係のスポット業務を受けない。

 まともに事業計画を作ると、必要な外注や、設備、人員投資のうち、補助金の対象になるものなんて実はごく一部である。しかも、よくよく考えて項目を洗い出して計画しても、実際にはそれは正しいものではないことがあとから判明することなんてよくあることである。新規事業の計画は成功に近づけば近づくほど最初の形をとどめないほど変わっているものであり、それでも検証と修正の土台という意味で計画は重要である。そのことをわかってコアの部分のみを補助対象と覚悟して、さらにsその2/3程度を国がリスク負担してくれる、というのが補助金の正しい理解であり、補助の性質である。
 補助金対象外の部分や事前準備の部分に必要な資金は結局自分で何とかしなければならないし、それは事業計画と市場テストの中で金融機関を説得して借りなければならないものであり、結局そこにもきちんとした計画が必要となる。

 事業計画は、成功するための下書きであって、補助金のためにやるものではない。そして、何よりも補助金は血税である。国や地域を良くするために使うものである。

 そういう屁理屈を正道だと思い、正道を歩みたいと思う方はお手伝いしたい。


 

 

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