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そんな人、市場にいません。

頭が良かったり、かつては大企業で活躍したりしたベンチャー経営者の方とお話ししていると、大抵、「人材の力不足」という話になります。ベテラン経営者だとその辺は酸いも甘いも知り尽くしていてそういう話にはならないので、彼らに特有の課題意識であるような気がします。

その症状は2つあります。

 一つ目の症状は、「高スペック人材を採用しようとあちこちを当たる」ことです。ソフトウエア技術系の会社では特にこれが顕著です。自分が優秀だからなのかもしれませんが、要求がとにかく高い。しかも、そんな手元資金で大丈夫かよ、というぐらいの高給提示を平気でする傾向にあります。それで出来上がっているものが見たこともないすごいものならばよいのですが、素人から見ると差がわかりません。そして、買うのは素人です。

 でも、どんな人材紹介会社に依頼しても、お眼鏡にかなう人材は集まりません。そういう人材は、「日本にいない」とまでは言いませんが、一部のごく狭いコミュニティに踏み込まない限りは見つかりません。ましてや「人材登録」などするわけがありませんし、名も知れぬベンチャーに来てくれる確率も、一時期の深層学習のように時代の最先端技術というわけでもないと、非常に低くなります。世界的に有名な大企業と仕事をした方が、金銭的にも、業務のエキサイティングさでも上ですからね。

 普通に集まる人の中からセレクションを行い、その人たちでできることを業務とせざるを得ない、という事を認めない限り永遠にあなたは一人のままですよ、と経営者の方にはよくお話ししています。仮にそういう人が一人見つかったとしても、二人目が見つかる確率はまた低いわけで、結局そこが成長の限界を決めてしまっている、その事業構想自体、お金を集められるものではない、と外部の人間は評価するわけです。
 けれども、それをなかなか認められないようです。

 二つ目は、せっかく得た人材が、「経営者の意図をわかって動いてくれない」というものです。具体的には、「事業の全体像をとらえて動いていない」ですとか、「サービスの可能性をきちんと把握し説明できていない」などの不満です。

 これも経営者が優秀で、自分ならば相手のニーズに、その場で柔軟に提案できる力があるからこその不満です。初期のベンチャーでは、創業社長がこのようニエヴァンゲリスト(伝道者)であることは多くみられるケースですが、それを他人にも望むことには無理があります。このような創業社長は、あまり「人を使う」ということを理解していないのだと思います。

 人は自分の理解した範囲でしか行動しないし、営業は、自分の売りたいようにしか売らないものです。そして、同じものを見ていても、それぞれの理解は人によって大きく相違します。それを研修やパンフレットなどのツールを用いて、一定の品質、一定の範囲に収束させる工夫は必要ですが、人というものは「自分と同じように」理解し、「自分と同じように」やってくれはしないものなのです。
 乱暴にいえば、独自の理解と方法でも、嘘を伝えたりしなければどんな方法でもいいから数字さえ作ってくれればいい、と言う方がむしろ、任される方は、自分の力があると思っていればいるほどやりやすいのです。だいたい、「研修が必要」「ロープレが必要」と自分から言うような人は「力がない人」で、危なっかしいなと多少不満を抱きつつも、なんだか自分でどんどん営業先を見つけてやってくれるような人の方が力がある人です。

 しかも、そのノウハウが拡大再生産が可能であるためには、ある程度の単純性が必要です。小難しい、抽象的なことを立て板に水で喋る人は創業者一人で十分で、具体的にどうするかは、「別にいい大学は出ていないが、数字を作れる現場の人」のやり方を基準にして、その内容の浅さや応用力の無さは口には出さず、任せておけばよいのです。欲しいのは、賢さではなく、売上であり、ユーザーとの契約のはずです。

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