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採用してはいけない50代

最近は、40代50代でも採用の引く手あまた、という広告をよく見かけます。私がその年代なのでターゲティングされているだけで若い方には見えていないのかもしれません。実力のある人はチャンスがある時代になった、それは事実です。昔よりも年齢にかかわらず人を求めている会社は確実に増えています。しかし、まず、言っておきますがあなたが会社勤めの40代以降でネットメディアで有名な実績あるマネージャーなどでないなら、これを信じて会社を辞めてはいけません。その理由はこの続きを読めばわかります。

最近は45歳以上で市場に放出される人材も多いため、様々な人がフリーランス、転職、あるいは顧問的な形で企業とのマッチングのステージに上がります。マッチングのサービスを提供する会社も増えてきました。しかし、これも玉石混交です。いや、自分のことを棚に上げるわけではありませんが実情は、玉より石が多いです。その理由は明らかです。玉は、元居た企業で執行役員や部長になり、あるいは三顧の礼をもって別の企業に迎えられているので、中小企業経営者のあなたのところに情報が届かないからです。

ただ、それでも社長の足りないパーツを埋めるコマとして十分使える人はたくさんいます。例えば、あなたが必要としているネットワークを持っている人、あるいはこれからやろうと思っているがやったことがないことをやったことのある人がいるだけで、事業の推進はぐっと楽になります。私は、最初は期限の定めのある雇用か業務委託契約で、ただし、それなりの費用をきちんと出す形でこうした「シニアのスキルや知恵」を吸収することはやっていく方が今の時代はよいと思っています。私もご契約先には、自分の人脈を惜しみなく開示し提供し、移植しています。

ただし、「こういう人は辞めておいた方がよい」という人があります。そして、それは少なくない数います。そして、知っていれば事前に見極められることが多いです。しかし、若い経営者は、「シニア」になったことがありませんから、どんな問題がそこに潜んでいるかを知らずにその穴に落ち、「年寄りはダメだ」とキレています。それは、年寄りがダメなのではありません。あなたがまだまだ「人の一生」への理解がうわべなだけです。

というわけで前置きが長くなりましたが、今回は、「採用してはいけない50代はこんな人5題」です。(なお、想定しているのはいつもと同じく中小企業です。)

①ITツールに弱い

今だにメールすら使わない、という職場は意外にあります。SNS禁止は大企業中心にかなり多いです。そんな中で生きてきた50代の中には、驚くほどに「パソコンが苦手」という人がいます。EXCELすらよう使わん、要領よくGoogleで調べるなんて実はできない、それでも部長、あるいは元役員という人も現実にいます。そういう人がどうやって会社内で生きてきたのか?というと、それが必要になったときにはすでに管理職になっていて、「賢い部下にやらせていた」のです。大企業は、こうした「面倒ごとは若手に押し付けることの順送り」が常態化しています。

こういう人を採用すると、役に立つ以上に社内の若手のリソースを消費します。そして、若手の反感を食います。本人はしょうがないとしても採用した経営者まで反感を食います。

基本的に中途で採用するシニアは「部品になる」という事よりは、「全体を把握しており、一人で完結した動きをする傭兵的動き」を期待されることが多いはずです。しかし、大企業しかしらないシニアの多くは、「部品」としての働き方しか知らない人が多く、しかもその部品としては性能が低下しているために放出されてしまっているわけです。ここに、大企業人材を中小企業で活用する本質的難しさがあります。つまり、「売上を上げるために必要なことすべてが自分の仕事」というマインドセットが大企業慣れすると失われているのです。

そのうえ、「終身雇用」の名の元にITスキルが低いことを周囲がカバーすることが当たり前になっていました。その「古い当たり前」が「生産性向上」の旗印の下、もはや認められなくなったことも45歳以上大放出セールの一因となっているわけです。

これが20年ぐらい前まででしたら、「ITスキルが低くても使える人はいる」と言う余地があったのですが、今はこれは「必要条件」であり、低い人は採用してはいけません。今はまだそれが御社ではできていなくてもこの先生き残るために必要な情報による経営武装、柔軟なチーム編成や働き方改革の足を大きく引っ張るお荷物になります。

こういう人を見分けるのは、問題を意識すれば簡単です。一つは②にも関連するのですが、メールのやり取りです。要領よく短時間で返信できているかどうかは何度かやり取りすればわかります。もう一つは目の前である課題についてディスカッションしてみて、その際にその場でお互いに調べてみる、というテストをしてみることです。実は、「うまく検索する」能力というのは、ITスキルだけでなく、課題の分解、基礎的な常識の有無など現代の仕事能力と非常に大きな相関性があります。それを、ノートPCか、スマホで見てみればよいのです。

ちなみに他の項目でもその傾向がありますが、「業務委託」<「顧問」<「契約でもいい」<「正社員」<「正社員前職並み給与」 の順に実力を疑う必要があります。自分で稼げる力がある、つてがあると思っている人は、正社員を選ぶ必要性があまり高くはないからです。ですから、この順(前から)に探していく方が正解に近づけます。

②文章化速度が遅い、言語化能力が低い。

これは、一般には大企業の方が中小企業よりも優秀な傾向があるのですが、全員がそうとは限りません。それと気を付けないといけないのは、歳を取ってアウトプット力が低下しているケースがあるということです。リスト化する。マニュアル化する。レジュメを作り商談議事録を作り資料を作って送る、といった一連の流れの核になってもらうには、今いる社員よりもアウトプット力が高いことが必要です。

全員がそう、というわけではありませんが営業系の出身者には口は達者だが手は動かない、というタイプが少なくありませんので、面接では気を付ける必要があります。

また、一般にビジネスで用いる言語化能力は、語彙力に依存し、語彙力はインプット量に依存します。一般の言語能力は中学・高校時代の読書量に依存する部分が多いのですが、ビジネスに関しては用いる語彙が20年前と今とではかなり差があります。したがって、経営者であるあなたが今の経営課題について、中小部分と具体部分を交えて話し、それに対応する力があるかどうかで一部は図れます。これが先ほど述べた「メールのやり取り」です。

③集中力が続かない

これは若い経営者には理解できないと思いますが、歳をとると集中力が衰えます。個人差はあるとはいえ皆そうです。乱暴に聞こえるかもしれませんが、肥満の人、ヘビースモーカー、それにアルコール依存者は集中力が低いです。アルコール依存というと特殊に聞こえるかもしれませんが、本人が自覚していないケースも含め(むしろ自覚し通院している方がまだ改善余地がある)実は50代以降では決して少なくありません。昔はアルコールとたばこは併発的だったように思うのですが、最近はアルコールだけという人も見かけた(それも士業の有資格者)ので油断なりません。

これも気を付けないといけないのは、一部の大企業人は、「仕事をしているフリ」をして目を盗むのがうまいのです。意味のない調査や整理をパソコンに向かってして時間を過ごしていて、それで自分が仕事をしたように人も自分もごまかしている、そういうことが習慣になってしまっているような人もいます。

ただ、1時間の面談でずっと考え続けるようなことをして、後半の様子を見ていれば、「あれ?」と思うようなことがあるはずです。それから、この点と、実は①②も含めてなのですが、中途採用向けの適性検査をすると結構きちんと現れます。シニア採用にSPIとはあまり聞いたことがないのですが、考えてみた方が良いことも多いと思います。

④言葉の中、態度に男尊女卑の傾向が見える

これもリスク要因ですので、どんなに仕事ができても回避した方が良いと思います。まず、今の50代が仕事に就いたバブル崩壊前は、今とは職場の女性の地位が全く異なっていました。その中で彼らは常識を植え付けられてきていますし、一部の大企業はそうした体質がかなり最近まで温存されてきました。たとえば、「お茶くみ、コピーは女の仕事」「寿退社」「子育ては女の役割」というような今では一般に通用しない常識が、狭いコミュニティでは通用してきてしまい、その中での成功体験が自分の中での正となっている人が少なからずいます。

こういう人も一枚皮をはがせば実は家庭内ではいろいろな悩みを抱えていたりする現実が最近の「エリートの息子事件」でも垣間見えましたが、それでも鉄の仮面で仕事の鬼であることが彼らの中では正しいことであり、それが時代の中でひずみを生んでいたのだとも思います。

これを見分けるには、女性リーダーと1対1でミーティングさせればすぐわかります。ただ、気を付けているし、丁寧にしようとしているが、言葉が時代とずれる、という人もいますが、内面的な傲岸さがなければ、これは世代の違いとして一笑に付していただきたいとも思います。

⑤対象業務の実務ができない

最後にこれなんですが、実はこれは深刻です。自分で企画書を作る、プロトタイプの構築作業をする、電話をする、会いに行く、話をまとめて、報告する。あるいは会食のセッティングをする、会議のレジュメをつくるなど、組織を改善するために参加してもらおうとすると、自分でやらなければならないことがとてもたくさんあります。そして、これらは実務をきちんと知っていて自分自身でやれないとできないことです。もちろん、あるところから先は社内外の専門家に任せればよいのですが、問題はそこではなく、「なんとなく方向性を言うことはできるが、実施は自分でできない」という人が大企業出身のシニアには多いということです。

これは一つには優秀な部下がいる前提でしか仕事をしてこなかったからもうずいぶん実務から離れていたから。もう一つは、同じ組織の中で共通の暗黙知の中で育ったので適当な指示で自分も動くように指導されてきたし、部下にもそう指導してきたからです。しかし、中小企業にはそんな資源もありませんし、文化も異なります。ここに大きな軋轢が生まれ、お互いが相手に不満を持つ原因となります。よく、「実務は部下に任せていましたが、チェックはちゃんとしていたのでわかっています」という方がいますが、これも疑った方がよいです。大企業の「チェック」なんてその多くが形式的なものであり、自分で全部0ベースでチェックしているわけがありません。その意味をなさないが形式だけある「チェック」こそが日本のホワイトカラーの生産性低下の元凶でもあります。自分で個人で最近作っている、という人でなければできないとおもってよいでしょう。

そして、実務から長く離れてしまい知識も実は失っている、古くなっているし、実務を地道にこなすだけのバイタリティもない、それを「そんなものは自分の仕事ではない」という態度でごまかしている、そういう人はかなりいて、それがシニア就職の難しさの結構大きな理由になっているように思います。

もし、今であったシニアが、実務経験もあり、それを文章や表、ルールや運用帳票にさっと落として運用指導もしてくれ、そしてそれに用いるシステム設定作業までしてくれるような人であれば、その人の経験を吸収する価値はあるでしょう。そういう若々しくてパワフルな人もいます。シニアが全部だめということはありません。

今回書いたような「現象」に注意してシニアの方と会うと、次第にその、「若々しさ」「素直さ」がある「開放的な」人と、「頑迷」「消極的」で縮小思考、リスク回避型行動の人との差がわかって来るはずです。そして、前者のような人を味方につけることができればその人はあなたの知らない「未来」を知っているかのような効果をあなたの会社にもたらすでしょう。でも、そうではない人の方が多いのは冒頭に書いたとおりです。

そういう私も49で一部上場企業を辞めて起業して自分の息子のような社員たちの下請け作業をし、営業代行する日々です。口だけではダメ、というのは自分に対しても、でもあります。



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