今週は2回に分けて、財務と人事で、新型コロナウイルスの影響で変えなければならない経営者の方針についてご説明しています。前回の財務についてはこちら。「まず、非常の手段で黒字化を」と言うことを述べました。
今回は、このコロナウイルス禍によって、どのような人材が必要になるのか?という点でも大きな変化がみられる、という点をご説明します。
「非対面」型ビジネスは定着するか?
さすがに最近お会いする経営者の方はみな、今の非常事態宣言の期限である5月6日を過ぎると、元の全員出勤体制が戻って来るとは思っていない方が多くなってきました。見たくない現実ではあるかもしれませんが、この先当面、全国規模で「自粛」は続きます。当面東京に満員電車は戻ってきませんし、リアルイベントは開かれません。夜の店は開けません。
そして、その間に非対面型でのビジネスプロセスを上手にやって、従来の方法よりも費用対効果を向上させる企業があらゆるビジネスで現れます。そういう会社はシェアを拡大するために、非対面型の特徴である低コスト体質を生かして価格浸透戦略を取り、リモートワーク型の雇用を拡大します。「オーソドックスな対面型」営業は、高コストを引きづったまま、価格は追随せざるを得えないのはインターネット黎明期以降に何度も繰り返されてきたパターンです。
提供される商品やサービスの価値が同じならば対面であることにはそれほどの付加価値はないことがほとんどです。それではなぜECではなく、リアル店舗で全小売平均で8割の売り上げが上がるのか?というと、それは、人には「習慣を変える心理的障壁」が存在するからです。その「障壁」は今回、多くのお店が閉店を余儀なくされる中で無理やり越えさせられることとなりました。一度経験してしまうと、「なーんだ。別にこれで問題ないじゃないか!」と思う人が相当割合出てくるものです。
もう一つ怖いのは、「オーソドックスな対面型」に勤務するが、こんなやり方に将来性はないと思って自分を変えられる(主として若い)人は、「非対面型」に転職してしまうということです。非対面型には仕事があり、対面型には仕事がないのですから仕方がありません。そして、商品・サービスの魅力をうまく伝え、顧客のニーズを的確に把握しそれにフィットしていることを説明することは、どちらでも同じことです。ここ数週間で、「ライブコマース」にチャレンジする企業が急増しているのもうなづけます。結果として、「オーソドックスな対面型」には、「オーソドックスな人材」しか残らず、しかも収益が頭打ちになっていきます。そうした企業では売り上げが落ち込むので、人員を補充することもできません。
それがこれから1年の間に進んでいくことです。
「非対面」ビジネスをやれる人、やれない人
このテーマはこのブログでも何回かにわたって書いてきました。Slackベースでの業務指示とレポーティング、ZOOMベースの会議、スピーチに変わって、「生き生きしている人」と「生きているのかいないのかわからない人」に分かれていませんか?この差は、「文字(言語)や数字でのドキュメントを作る力」から来ています。会議、スピーチでも同様で、「言語化する力」の差が表れているのです。
より具体化していうと、一つには、課題に対して素早く問題を理解して定義し、それを解決する調査を行い、ドキュメントとしてアウトプットすることを独力で素早くできる人が、「仕事をしているように見え」ているのです。会議の場でもその内容を言語化できているので、そのように見えます。
そうではない人は、「指示を受けて補助的な作業はできても独力でまとめることができない人」か「出来上がったものをチェックするだけの役割(と自任している)の人」です。
一つ申し上げておきたいのは、「仕事ができる」とは小ぎれいなドキュメントを作れる人ではありません。その意味では、Slack上の動きもまた、フェイクです。仕事ができる人とは、「最終的にお金を会社にもってくる人」です。だから、呑んだくれようが、パソコンが下手だろうが、顧客から信頼され、日中ふらっと訪問したらそこで注文書をもらって帰ってこられるならばそれは紛れもなく「仕事ができる人」です。経営者としては、それで全く構わないですよね。
ところが、今は訪問する相手もリモートワークですし、連絡手段もメールであって電話ですらありません。社内の報告も原則文書で口頭ではなく、申請や承認もすべてクラウドアプリでスマホかPCから電子で行うようになりました。
席のエンドに座っていればなんとなく気を使って上司よりも先に発言するのを遠慮していたでしょうし、上司は自分が苦手な文書化を部下に指示することもできたでしょう。空気感でいいタイミングの声掛けをできたでしょうし、商談にも若い部下を同席させて、事後の資料提出や社内処理をその人にやらせることもできたでしょうが、今は一人一人がそれぞれ機能をある程度完結しなくてはならなくなりましたし、ルールベースで進捗チェックが必要になっています。そして、それをパソコン上でドキュメントと文字で社内外の相手に伝えることが必要になりました。
整理すると変わったのは次の点です。
そして、それぞれの必要なスキルは決して訓練で速成できるものではなく、その人の長年培ってきた「自力」、もっとわかりやすい言い方をすると「頭の良さ」に依存するものとなってきており、従来の社内の採用方針やその結果としてのスキル構成を変える必要があるということです。
実は、こうしたスキルが必要であることは、「ホワイトカラーの生産性向上」という観点でずっと昔から言われていました。しかし、ピラミッド型の組織と年功序列型で追い抜きができない人事評価が、この変化を阻害していたのです。それが、この未曽有の災害により、重しが取れつつあるということなのだと理解しています。
ありていな言い方をすると、40代、50代も手が動かせる人でないと、何もできない時代になった、と言うことなのだと思います。
「非対面型適性人材」はどこにいる?
では、そういう人はどこにいるのか?それはどうやって探せばいいのか?というと、リクルートやパーソルにはそういうデータベースはありません。端的には、web上、特にSNS上でビジネスや社会についてきちんとした発信が比較的高い頻度で、ある程度の論理性と文章力で発信できている人です。ただし、こういう人はいままでの大手企業が忌み嫌ってきた人材でもあり、それは容易に変わらないでしょう。しかし、それこそが、この混乱期に恐竜が滅び、ネズミのような小動物が生き残る兆候でもあるのです。
もう一つ言えば、それは今の状況で「社員」である必要があるでしょうか?フリーランスの業務委託でも十分なはずです。業務委託では労務管理の義務からも解放されますし、うまくいかなければ短期で契約を終了するような契約も可能です。これも多くの大企業が苦手としていることです。
今は非常時です。いままでの常識にとらわれずに変えてみるチャンスです。