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2019年は何が起きていたのか?①

早くも今年も営業最終週となりました。毎年この時期はビジネス界を振り返る記事をお送りしています。去年の記事はこちらです。振り返ってみると我ながらも白いです。


世の中は昨日と同じ今日が来るように見えて、10年も経つと大きく変化しているものです。そして、その変化は後発者が先行者を逆転するチャンスでもあり、その変化に対応をして自分の会社も変化していかなければ生き残れないという意味ではピンチでもあります。今年起きた様々なニュースはそうしたいくつかの大きな流れの中での摩擦の中で起きているのだと感じることが多くありました。そういうわけで、今年は、月別のニュース紹介ではなく、今回と次回に分けて、起きつつある社会の変化とビジネス、特に中小企業の対応という点でまとめたいと思います。

①給料は個人の稼ぎに応じて変わる時代に

既にこの流れは以前から強まっていたのですが、「終身雇用は維持できない」(経団連 中西会長)ということを財界トップが発言せざるを得なくなった、という意味ではターニングポイントとなる一年だったのでしょう。そして、45歳、50歳以上には今年一年さらに早期退職制度の運用事例が増えました。もっとも元々中小企業には、終身雇用なんてありませんでしたので、雲の上の存在の大企業が困っているのを小気味よく見ているという筋も多いことでしょう。

しかし、このことの意味は中小企業の経営者や従業員にとっても他人事ではいられません。それは、このことが本当に意味するのは、「働きに応じた給与」、男女や勤続年数や年齢は関係なく、その時期の実力だけが関係する「差別のない世界」の実現であるからです。

昔から営業職には歩合が存在していましたが、それでも年齢とともに(社齢給はだいぶ昔に採用がへりましたが、それを温存するかのように)役職が上がり、給与が上がり、一旦上がると役職定年が来るまでもう下がらない、ということが日本では当たり前だったわけですが、一方でITリテラシー、女性の社会進出や男性の育児参加などの社会の変化に対して、現代は、「過去の経験が生かせない」、むしろその経験が逆効果のことも多い社会になっています。また、45歳を過ぎると根気や抽象概念を扱う能力が減退してきます。結果として今年生まれた流行語が「働かないおじさん」です。

子供も高校大学で金はかかる、家はローンがまだ半分以上残っている、そんな中で放り出されてしまうケースがこれまでも「リストラ」の中で数多く発生してきました。しかし、そんなハードランディングをいつまでも続けていられるわけもありませんし、「景気」は人口減少の中、二度と昔のようによくなりません。その中で今から発生するのは、「働かない度合いに応じて給与が段階的に減っていく社会」です。いきなり失業とどちらが良いですか?

実はこの「働かないおじさん」現象は昔からありました。しかし、それは若年層の方が人数が多い、拡大型の組織であれば、多数の生産性の高い年齢層が少数の働ない高齢層を維持することができたのです。今よりはまだ「経験」が価値があった時代でもありました。しかし、今は、50歳以上のバブル採用期の数が一番多いという会社もあるぐらいの逆ピラミッド、あるいは寸胴型の会社がほとんどです。何しろ人口構成がそうなっているのですから。(この話は②「始まっている人口減少」で続きを)

そして、圧倒的な輸出競争力を背景に、国内競合との競争といいつつ実際には果実を分配して安定した業績を上げられていた時代から、中国だけでなく、他の国に対しても価格も開発力も投資力も比較劣位で、利益が中期的に減少する可能性が十分合理的に予測される時代になっています。(この話は③「貧しくて物価が安い国ニッポン」で続きを)

若い人はより休みがとりやすく給料が良く業績が安定した企業か魅力的な企業へと容易に転職するようになり、同じ会社に長く勤めようとは思わなくなった中で、会社は自らが生き残り、有望な若い人を引き留め、変化への対応を続けるためには、評価報酬を「稼ぎに応じた」体系に変更せざるを得ない状況になっているのです。この点は中小企業とて同じことです。

このような市場の変化に対して今の大企業は、「早期退職」という一時的な大きな調整と、「成果主義の部分的併用」という漸進的変化とを組み合わせて対応しようとしているわけですが、これは大企業の体力があるからできることであり、中小企業ではもっと抜本的な変化が必要になっているケースが多くなっています。何しろ、中小企業に発注する大企業は容易に発注の蛇口を絞ってきて、そのインパクトは中小企業により強く表れるのですから。もっとも、中小企業は昇給もなければ採用もないという状況の会社もざらであり、成果主義の余力もないというのが経営者の感想かもしれません。しかし、当期に給与分の働きをできていない社員は老若男女を問わずいることでしょう。そのお金を若い生産性の高い人を引き付け維持するのに使わざるを得ない時代になっている、といういい方ならばわかっていただけるでしょうか?

私の言っていることは、今までの日本社会からすると、「非道徳的」なことですが、日本の何倍もの経済規模の(この感覚も「アメリカに迫る世界No2経済大国」の時代の印象が強い50代以上にはわからないのかもしれませんが、もはや中国は日本の3倍の規模を有しています)中国、アメリカでは当たり前のことですし、現に日本でもそうした出血に耐えた企業が新しいリーダーを中心に再生する事例が増えています。

そもそも同じ仕事の成果でも、女性の給与水準が男性より低いという不正義が温存されるのはこの「既得権益」が障害となっていて、その背景には、「知識・経験のストックが会社の資産」という古い常識があるのです。しかし、そのストックこそが、世間から非難を浴びる会計不正やセクハラ、パワハラを生み、変化への抵抗を生む巣窟です。

おそらくは、この先数年で「働かないおじさん」ニュースのメインは、今の「リストラ」ニュースから、「成果主義で年齢と給与の逆転現象」へと移っていくでしょう。これを実現することはとても大変なことで時間がかかります。一気に移行することはできません。成果の定義、成果の可視化、評価制度の変更などを社内に味方を作りながら進めていくことが必要であり、ぜひ経営者の方には考えていただきたいことです。

②始まっている人口減少

日本の人口は、2006年をピークに減少し始めています。というのはよく言われるニュースですが、それを実感することが増えています。というと東京にいる方は実感がわからないと思います。実際には、一年間で首都圏一都三県は3600万人の人口に対して、14.5万人増加し、その他の43道府県は、8900万人の人口に対して40万人減少しています。秋田、山形、高知のように年間の減少率が1%を超えている県もあります。これらの県の内訳をさらに見ると、県庁所在地の多くは微減ですが、周辺市町村では、年間2%を超える減少の市町村が沢山あります。

もう一つ、東京都の平成30年の人口は、13822千人、秋田県は981千人と約14倍の開きがあるのですが、20歳~34歳人口は、東京都は2739千人、秋田県は105千人と26倍の開きがあります。(いずれも平成30年人口推計より)働く層、子供を産む層は地方からいなくなりつつあります。

政治にとってはこれは「政治課題」かもしれませんが、企業経営者はその現実に対してどこで何をするのが効率的かを考えることが任務です。たとえば、全国にたくさん拠点を持つことがかつては重要だった企業にとって、今はそれが重荷になっています。その最たる事例が最近かんぽや年賀状の自爆営業で話題になった日本郵政です。

たまに地方へ出かけると、かつての「シャッター商店街」問題から、今は、その後に中核となった大型ショッピングセンターやコンビニすら不振にあえぎ閉店していっている今現在の地方の現実を目にします。かつては岩盤と思われた地銀の店舗網も急激に縮小し始めています。しかし、そうした街の住宅街に留まる宅配便の車を見ると、ドライバーさんが持って降りているのは、複数個の有名ECサイトの包装箱であり、冷蔵冷凍での食品の配送です。あるいは小型トラックによる出張スーパーなどの新ビジネスも拡大してきています。

一方で大資本スーパー各社による生鮮宅配は思うような伸びを見せていません。生鮮品は依然として目で見て選ぶという選好が強い一方で、地方にはすでにインターネットをもちいた「代替手段」が浸透してきているのです。

地銀の店舗が閉まるとおつりや現金収受に不便と地元は反発しますが、今年は、消費税率変更に伴い「キャッシュレス決済普及元年」でもありました。
もちろん、街のおばあちゃんがこれを使いこなせるのか?という問題は残りますがQR決済は従来のクレジットカード決済よりも手数料も一般に低く、導入障壁が売り手にとっては低いものです。変化に対応し、市場を開拓するチャンスは実はちゃんと与えられています。

こういう言い方をすると、高齢者を中心にそこから漏れた人をどうするのか?ということを言う人がいますが、それは一旦政治に任せればよく、あなたの役割は効率的で収益性の高い事業構造の実現のはずです。それを実現するには、長く続いた拠点の見直し、さらには市場の見直し、市場へのアクセス方法の見直しが必要になっており、それは場合によっては、売上規模の縮小を一旦は伴うものになります。

「東京以外はどんどん人口が減っていき高齢化していく」という事実は政治がどんなに頑張っても、もう変わりません。しかも、10年で1~2割の人口減、生産人口や若年人口はそれ以上のスピードで減っていくことに対応していかなければならない、「自然に対応できる」「どうにかなる」というスピードや幅ではない、今行動を起こさなければならない状況なのです。私は非難ごうごうの中、支店網の大規模縮小を決断した地銀経営者は立派であり、それに難癖をつけるばかりでデジタルトランスフォーメーションによる市民生活の改善を顧みない地方自治体首長は滅びの引き金を引いていると思っています。

③貧しくて物価が安い国ニッポン

一方で、今年も訪日外国人は昨年の3100万人をうわまわるペースで増加しており、消費額も昨年を上回る見通しとなっています。韓国との関係悪化に伴い一部懸念もありましたが、今年は中国と並び一人当たり消費額の多いヨーロッパ諸国からの訪日が増加する傾向がみられました。これを、「日本の魅力が世界に知られて人気がある」と宣伝している筋もありますが、それは実際来ている中国人中流層の話を聞けばだいぶ異なります。今、訪日客と訪日消費が増えている理由は、「商品やサービスの品質の割に、物価が安いから」という側面が強くあります。つまり、90年代から2000年代前半にかけて、タイをはじめとするアジア諸国への旅行客が日本で増えた逆の現象が起きている、ということです。

確かに、日本の100円ショップで売っているような商品と同じデザイン性や品質のものを中国で買おうと思うとずっと高いですし(特にプラスチック製品は日本は安い)、食パンや食用油すら中国の大都市部よりも日本の方が安いケースが多くなっています。また、500円で清潔な店舗でサービスのよいセットメニューが外食で食べられる国など今、アジアの大都市にもなかなかありません。

しかし、これはヨーロッパはもちろん、中国やアジアの中流層から見ても、日本は貧しい国になった、ということを意味しています。

そして、多くの人は、こうした国には歴然たる社会階層が存在しているが、日本は平等で皆が豊かな暮らしができる国だと主張しますが、過去はともかく、今現実に都内のコンビニや飲食店にある現実はそうでしょうか?そこには、厳然たる社会階層が出現しています。その市場の現実を正確に見て、そして商品・サービスという形で対応を取っていくのは、経営者の務めです。

実はこうした相対的貧困ということは歴史上何度も起きています。近世においては、スペインがイギリス、オランダ、フランスに、イギリスがアメリカ、日本に対してこのような状況が発生しました。これが何が原因だったのか?については見方が分かれるところかもしれませんが、基本的には、外部(植民地、外国)から富をもって来る力を牽引力とした所得水準の上昇速度が停滞したからであり、その原因は、植民地まで含めた資源、人口、そして生産性による商品力、わかりやすく言えば「利幅」と「販売量」の近隣との競争での敗北だったと私は理解しています。

実はきぼうパートナーは中国の現地組織のマネジメントというのを当初は主要なドメインにおいて活動していたのですが、この分野のブログを書いても、書き手の自信とは裏腹に、他の国内の組織運営関連の記事の1/3程度のアクセスしか集まらず、掲載回数を減らした経緯があります。どうやったら中国に負けないか?は中国の強さを見習い、中国の弱点を狙うことによって実現するわけですが、多くの日本の中堅層は、「そんなことは考えたくもない」という態度を取っているように私には見えます。そもそも中国との競争関係にあることすら見ないふりをしていることすらあります。

私は、経営者はもっと利益に貪欲になり、弱いものを国内外を問わず倒し、収益力を高め、そして社員と株主に利益をどんどん配分し、最終的には納税額を増やすことに執着するべきで、それこそが経営者の最大の社会貢献だと考えています。縮小し貧困化する日本社会で、負けを当然視するような今の風潮は結果として貧困化のスピードを速めると思います。そして、最終的には、中国をはじめとする巨大なアジア市場に打って出て売り上げと利益を稼ぎ、それを従業員(これには力になった外国人従業員も当然含む)に貢献に応じて配分するという正常な利己的経営を実現する手助けをしていきたいと思っています。

次回は、今年起きたその他の流れをもう少し取り上げたいと思います。

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