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番外編~中年起業の真実③日本はまだまだ(中年)起業者に厳しい

土曜の朝6時、妻にあることを言われて事務室に引きこもって予定外だった第3編を書いています。何を言われたかというと、もうすぐ借家(アパートですが)が入居して10年になるのですが、そのあと住める家がない、という不安・不満です。勤め先が変わったら家主に告知する義務が賃貸契約書には記載されているのですが、もちろん不履行のまま過ごしています。履行したら退去リスクが一気に顕在化します。

日本では、会社員として「定職がある」ことを前提とした与信システムが依然として強固に存在しています。逆に言うと、「起業家」は社会的信用がありません。

大きいところでは、住宅や自動車のローンは上場企業であれば、審査も有利ですし、金利も提携等で優遇されますが、そうではないと現金一括で買う話しかできません。また、携帯電話でもiPhoneのような高額商品の割賦型購入には実は審査が存在していて、私は次回はもう現金一括でしか買えません。

妻のいうように賃貸住宅は、企業勤めと保証人がいることが前提のシステムであり、今のアパートは定職のある人の人的保証(だから年金暮らしの親ではダメ)が必須で保証会社すら受け付けてくれません。また、今年義母が入院したのですが、日本中にチェーン展開する普通の大型病院だったのですが、入院時に「定職のある保証人が二人必要」という条件があり、妻の兄は立派な定職があるのですが、妻は無職ですし、私も保証人になれないという事態が発生しました。この時、どうしたかというと…お付き合い先の企業名を勝手に記載しました。詐欺ですね。

少し前までメガバンク2行が預金高から盛んに金融商品の営業電話をかけてきていたのですが、私が起業したという話をするとパタリと掛かってこなくなりました。依然そこそこの預金額はあるんですがね。一部上場企業管理職(子会社代表)と起業家は、彼らからするとこのくらい扱いが違います。

すでに終身雇用が崩壊し、世の中では、「ローンが払えなくなっての転居」という引っ越し事例は実はかなりの数発生しています。この「大企業安心論」はかなりの部分成り立たなくなっていて、「個人としての稼ぐ力」を評価しないとすでに与信できない時代になりつつあるのですが、それでもなお、日本では、「自分で考えずに人の作った事例に乗っかり責任を逃れる」ということが認められてしまい、新しい制度を作り出そうという動きは弱いのが実情です。先の賃貸住宅の例でいえば、私は6か月分のデポジットを無金利で預けても良いと思っているのですが、そんな先例のないことを家主に通そうという業者もなかなかいません。

同様の話で、クレジットカードが作れませんし、ショッピングクレジット(分割払い)も通りません。起業マニュアル的な記事には、「独立前にクレジットカードは作って限度額を上げておこう」と書いてありますが、これはその通りです。この点では、信用力はフリーターや新聞販売店並み(けなしているわけではないのですが、実際、クレジット会社は零細新聞販売店にはほとんど与信しません。)信用力しかない状況に、いい歳して放りだされます。

本人はそれすらもわかって腹を決めて0からスタートするつもりでも、奥さんからしたら、「そんな夢や理想なんてどうてもいいから、安全に生活費をいれてくれ」と言い、「いい年してこんな目にあわされて、情けなくない」と言われてしまいます。ここで奥さんに定職があり生活力があればまだ別れてしまうという選択肢があるわけですが、この年代は基本は女性は専業主婦という世代のため、その選択肢すらありません。

ここまでは起業家の暮らしという側面の話でしたが、実際のビジネスという面でも様々な課題があります。もちろん、そのかなりの部分は財務的、あるいは組織的に脆弱であり、サービスの持続性や継続的改善に対して見通しが持てない、というベンチャーならではの事実に起因するものであり、迷信や差別というわけではありません。しかし、考えていただきたい。電話や電気、あるいは銀行などのサービスは確かに持続性が確保されることが必要でしょうが、それ以外の一般サービスでそれほどまでに「持続的」「安定的」であることが本当に必要でしょうか?実は、サービス提供者は収支や技術的に継続できなければやめても良いし、利用者は乗り換えれば何の問題もないことが大半であり、そこに変な思い込みで「供給責任」とか「消費者の信頼」とかを背負い込むことは、安価で革新的なサービスの普及を妨げる社会的障壁となっています。

このことは、昔暮らした中国を見ているとつくづく感じることです。ろくでもない見様見真似のサービスや店舗もたくさんあちこちにできては廃業していますが、その活力の中で非常に優れたサービスが次々に現れ、この15年であっという間に日本を抜き去ってIT活用の進んだ社会構造が実現していきました。私が机を並べた同僚たちも、その日系(一部上場連結子)会社を辞め、どんどん起業していきました。ある人は布団の訪販から財をなし、またある人は中国で最初の漫画喫茶を開いたのですが、なんだかすぐに資金ショートしていました。これを「政府主導の強さ」と誤解している筋も多いようですが、それは違います。明らかに「国民性の違い」です。高齢層が数も多く新しいことに不勉強で保守的、現在の資産を守ることをそれを増やすことよりも優先する日本の敗北です。

起業に対しては、創業の助成(雇用や事務所、設備)や創業融資を中心に政府も新たな経済の原動力を生むことにここのところ力を入れてきています。ホンダもソニーも、70年前は偏執的な情熱家が始めたベンチャー起業だったのです。50年後に日本発で世界に名だたる企業は今のベンチャーの中から生まれていくのです。

しかし、本当の問題は政府の支援ではなく、老若男女を問わずチャレンジャーを排除し、組織に属することが信用に足ることであるとする日本社会の保守性にあります。もっともその保守性を担保している、あるいはそれを強化しているのは、高齢化を背景とした国家財政の悪化と生産性の低い中小企業が票田となることを生んでいる政治への無関心を背景とした低金利という面もあります。金利が正常に機能していれば、経済は全体として収益追求のための革新と新陳代謝の方向に向かうと思うのです。

と天下国家を論じてみたところで、目下の中年起業の問題は実はそこではなく、「家で仕事なんて世間に恥ずかしい」と貶める家族の存在が、収益よりもリスクよりもそれが日々の一番の重荷です。

起業家でも借りられる賃貸物件、その他情報お待ちしています。責められています。

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