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経営方針発表会で部長を鍛える~部長を創る④~

私は、二十何年ぶりに業績に追われない期末を迎えました。毎年毎年、最後の追い込みやら、6月の株主総会まで延々続く決算関連の作業準備、それに新年度の準備に追われていた(これはお付き合い先の準備として今年もやってはいる)この時期にそれがないことに、「起業一年目」の実感を感じています。まあ、今のところはこじんまりと営んでいて、事業が拡大していないということの裏返しでもあるのですが、とても幸せなことです。

この時期、そうした予算、決算関連や組織変更関連に交じっていつもそこそこの作業量になっていたのが、どの会社でも行っていた「経営方針発表会」です。これは、まず社長より昨年度の決算速報状況と今年度の全社経営目標の説明をおこない、そのあとで各部責任者より、当期の数値目標と改善事項、およびそれをどのように実現するかの方法論の説明を行う、というものです。それぞれに質疑応答を行うのですが、だいたい質問してくれるのは外国人メンバーか、営業分野の女性か、2年目ぐらいの若手社員で、30代以上の日本人男性は特に黙って、その時間が過ぎ去るのを待っています。説明を自分のやるべきことと紐づけて聞いている層と、何とか無難に今日と、今年一年と、そして残る会社人生を過ごそうとする層との反応の違いが見事にそこには現れます。実施されている会社の幹部の方は、そういう目で見てみると頼るべき人が誰なのか分る機会になります。

何をやっても、身の安全を大事にする社員には大して響きません。それは仕方のないことです。若いころにはそんな人じゃなかったのに、30代も何年か経ち、家族を抱えて、特別な技能もなく体力も無理が効かなくなり、チャレンジできなくなる人はたくさんいます。まだ、「自分はダメです」と自分で白状しているような態度の人は素直な方だと思います。口では「チャレンジ」といい若手にはプレシャーを掛けるくせにその実、自分は何もチャレンジできないのに、やっているフリを取り繕うベテランというのも結構いて、こういうのは悪質だなあ、と思って眺めています。

この経営方針発表会は、この一年の会社の達成すべきことと、各部での取り組み内容を周知し、各自でそれぞれの取り組みを考えるスタート点にする、ということがもちろん主目的です。集合会議にするか、オンラインにするか、あるいは文書で代替するような方法もありうるとは思いますが、一部の人にしか響かなくてもやる意味はあると思います。特に、ビジョンや中期計画に連動した(それが本来のはず)目標管理制度を導入している会社では、マイルストーンとしての期初の経営課題の公表は必須だと思います。

そのほかに、もう一つこの会議には重要な意味がある、と考えており、お付き合い先の各社にもお勧めしています。それは、今月3回ほど連載しました「部長を創る」ための訓練の場、という意味です。日本中から群雄を集められるような会社ならいざ知らず、多くの会社では部長といっても、ちょっと良く売る、あるいはちょっと頑張る人のうち、年数積んだ人が選ばれているのが日本の中小企業の現実です。しかし、部長の役割は何か?と言えば、この場でやらされる「経営課題に対して、部門としてどのようにしてそれを達成するのか?」の具体的作戦を立て、皆を率いてそれにそって目標を達成させ、できれば部下の皆を少しでも昇給させてあげるような結果を出すことです。この経営方針発表会は、まずその部長の責任を明らかにします。そして、部長がそれができる存在であるのかどうかを経営陣だけでなく、社員の前にもさらけ出します。多くの場合、部長は普段は偉そうに口では言っていますが、いざわかりやすくそれを皆に説明しようとすると実際にはできません。

安心してください。今の部長が出来なくても、代わりもなかなかいないのが中小企業の現実です。採用力の不足する中小企業では、「誰かができるようになる」しかないのです。そこで、部長(仮免)はどうやればよいのか必死に考えます。内容はもちろん、表現する方法も工夫するし、他の主要メンバーとも事前に相談するはずです。それをしない人は本当に部長から外していい人です。それを必死にやり、それが2度、3度と積み重なり、他部の発表を見て自分の改善点を知り、あるいは足りない点に気づいて、ネット上で日常の情報吸収に勤めるようになる。時にはアウトプットする訓練を次回に備えてやるようになる。そうして、少しづつ育っていく「真剣勝負の場」でもあるのです。(だから、私は年一度ではなく、2度このような場を持つことをお薦めします。)

というわけで「経営方針発表会」をお薦めします。

そして、自らを厳しいトレーニングに追い込まなければならないのは、部長(仮免)だけではないのではありませんか?

経営者であるあなた自身、社員に会社のビジョンとそれを実現するための会社の構造、そのために今年やるべき数字、変革すべき事項を生き生きと語ることができますか?

あなた自身がまず社員に協力してもらい自らを鍛え、成長しなければならないのではないでしょうか?この週末、あなたは何をしますか?

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