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「オタク」経済の内側

ある投資家さんが「オタク」を集めている、という話を伺いお会いしてきました。

私自身は平凡な事務屋ですが、過去にいろいろなことをやってくる中で、いろいろレアな関心を強く持っている方にもだいぶ知己を得てきたからでした。その投資家さんの意図は明白でして、「尖った関心事への情熱が、量は少なくても高い支払い意思の需要を引き起こす」ことに着目して、それを事業化することを応援したい、ということでした。今の世の中、昔のように、「大量の需要を広告費を投下し、価格浸透戦略をとって獲得する」ということがもう通用しなくなってかなりの期間が経ちます。これを良く「嗜好・趣味が多様化した」と言いますが、衣食住の消費量の絶対量が減っているわけではなく(これから先人口減に伴い減少しますが)、所得は多少なりとも向上しているが、一般の食料や消費財の価格はそれよりも上がっていない(だから、消費者物価指数がマイナスのデフレとなる)中、家計の貯蓄率も低下している。残りの所得はどこに向かっているか?というと「それぞれの特定の趣味」というのが一つの答えに見えます。

もちろん、これは大雑把な言い方でして、実際には所得が偏在していること、そして大多数のさほど所得の多くない世帯において子供にかかる費用がかなり大きい、というのも共働きが前提の社会構造になり、「共働きのためのコスト」(保育園等)があることなど他の要素もあるのですが、ここではその議論はおいておきましょう。

 

■「オタク」とは何か?

私は以前は取締役をしていた会社の関係でアニメコンテンツやアイドル、自動車などのライセンスを活用するビジネスにいくつか携わっていたことがあります。正直私は全くと言っていいほどこれらのビジネスに愛着、というか関心がありませんで、私の知識は子供の頃大好きだった「宇宙戦艦ヤマト」から更新されていないに近い状態でしたし、その時も業績に追われて、どちらかというと「仕方なく」やっている面がありました。そこでこれらのビジネスに携わっている方とも多く知り合ったのですが、半分ぐらいは私と同じで「ビジネス」の素材として割り切っている人、いわば「EXCELのセルの一つに入力された名称」でしかない人。残りの半分は、これらのコンテンツをとても大事に思う人=オタクでした。世間では、アニメ好きやアイドル好きを異常な性愛趣味と混同している傾向がありますが、これはひどい誤解でして、多くの人は普通に真面目に仕事をしながら「ファンタジー」としてこれらを自分にとって大切にしています。私には趣味らしい趣味はないのですが、私が小さい頃、父がたまの日曜日に大事にしていたオーディオで、隣の家まで聞こえるような大きな音でクラシック、それもなぜか行進曲系のレコードを聴くのを家での唯一の楽しみにしていたのと同じことです。蓼食う虫も好き好きと昔からいうではありませんか。

もう一つ、思ったのは特にアニメ系コンテンツが好きな人、あるいはこれを仕事にしている人は、とても優しい、温和な人が多い。アイドル好きも割とその傾向が強いように感じました。これは、自動車のライセンスを管理している人が割にマッチョな傾向があるのとはだいぶ差があるように思い、その辺は「男は男らしく強がるのが正しい姿」というような思い込みがある層からは拒否感があるのでしょう。が、こうした傾向は社会的には「いいこと」ですし、彼ら自身は何かを拒否しているわけではありません。実際、当時の私には彼らに対し、「自分の持っていないものへの尊敬」はありましたが、私に対して「コンテンツへの愛情はないな」と感じていたはずです。でも、独立して起業した、という案内を各方面にした際に、「また会いましょうよ」と進んで先方から声をかけてくださった層が一番多かったのは、このころにお会いしたコンテンツ系ビジネスの好きな方たちでした。

 

■オタクは起業に向いている

高い社会的意義と情熱を頭上に掲げて起業し、すごい勢いで社員と資金を集めるばかりが起業家ではありません。いや、むしろ自分も起業してわかったのですが、会社の中で業績なのか人間関係なのか、あるいは仕事の進め方なのかに生きづらさを感じて、「自分の居場所」を創る必要があって起業している人、というのは実はたくさんいます。そういう人は割と小さく、しかし、業界ではきちんと信頼されて日々の仕事をしているケースが多いようです。こうした方々は、趣味ではあってもきちんとしたビジネスセンス、たとえばライセンスを分割して価値を最大化する工夫であるとか、メディア露出の仕方とかをきちんと考えることができる方たちです。(そうでない、ただの趣味人の方は起業はせず、本業の傍ら楽しんでいるので)

どうしても少ない人数でこじんまりとやっていると下請けとか部分請負という形が多くなるため、形としては「不安定なフリーランス」的な仕事の仕方になりがちです。しかし、実は、彼らはその業界内でのネットワークがすごいものがあります。本当にすごいコンテンツを生み出すクリエーターは一般のメディアではなかなか会ってくれません。興味本位的な記事しか書かず、彼らが本当に大事にしているものを分かろう、伝えようとはしてくれないからです。それが、彼らのことを理解している「オタク」に同席する形ならば会って話を聴けたりするのです。そして、お金が欲しくないわけではないのですが、お金第一というわけでもなく、「面白さ」「仮想的な世界観」を追求している仕事の仕方をしている傾向があります。それは製品化の際の監修の厳しさにもつながり、部外者からは面倒がられもするのですが、結局、量産性や低コストよりも再現性を追求しその結果結構な高価格が必要になっても、それが、ファンにとってはまた、支払価値が高いものになっているのです。

 

力のあるコンテンツを採用できれば、売り上げを大きく伸ばすことができるキャンペーンができるのも事実です。しかし、そういうものは限られています。冒頭の投資家さんと話すのは、「30万人になんとなくではなく、1万人にきちんと支持してもらえるもの」を集めようということです。それはアニメだけではなく、様々な尖った「好き」を集めて、それを丁寧に事業化する事業計画の立案や遂行のお手伝いを私がして投資家さんに資金を借りることを具体的にはしていこうと思っています。 

私もどちらかというと「変わった奴」扱いされて、同調圧力に不快感を持ち、社会との不適合感を感じながら生きてきたので、彼らが生きやすい社会を少しでもこんな活動を通じて実現できればいいな、と思っています。

 

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