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経費削減講座16 エレベーター保守費

前回、ゴミ処理費用についてご紹介しましたが、ビル管理会社から賃料と同じ請求書で請求されている、という方も多いかもしれません。そのつながりで今回からいくつか、ビル管理関連費用についてご紹介します。これらはビルを一棟借りしていたり、保有している場合でないと関係ないものもあるかもしれませんが、「なぜ、下げられるのか?」の構造には他の費用に通じる部分があると思います。

今回は、エレベーターの保守費についてご説明します。

【法定部分と任意部分】

日本にはエレベーターは40万台以上が稼働していると言われています。これらは大別して「乗客用」と「貨物用」に分かれ、法定の点検制度が微妙に異なります。ただ、双方に共通して、法定の点検は年に1回であり、その際、「年次点検報告書」が点検者から利用者に交付されます。ところが、人が乗るもの(貨物用も場合によっては積み込み時など人が乗るので)である以上、一年に1回の点検で事故が起きては大変!ということでそれ以外に月次の定期点検を行うことが適当、とエレベーター協会で定めており、これが保守費を通常年間契約で毎月払って契約する根拠になっています。

近年では、稼働状況や異常を遠隔監視できるようになったため、これらを有効活用することで、機器の老朽度などに応じて最大3か月に1回まで目視点検を間引くことができるようになりました。これが良くCMで言われている「遠隔監視」のことで、もちろん、常時異常発生を早期に発見できるというメリットの他、利用者も点検時の数時間にわたる利用停止の回数を減らせますし、保守業者も投入人員を減らせる、というメリットがあるので急速に普及しました。この遠隔監視を使える仕組みがある機種は遠隔監視を導入して、頻度を下げ、価格交渉をする、というのがまず最初の一歩です。

【余談ですが、野良エレベーター】

そもそもエレベーターやエスカレーターは、建物ができた際、「建築確認」の項目になっており、設計図面が承認され、実際の完成検査を通過したものだけが運用できる仕組みになっています。ところが、私が担当した中でも過去2例、この建築確認を受けていない「野良エレベーター」に出会ったことがあります。2例とも古い倉庫を譲り受けたケースで、最初はなかったエレベーターをあとから適当に増設したのでしょう。

そもそも非合法のものなので、必要な年次点検を受けることができません。そのため、任意の点検を受けるしかないのですが、その会社から「ちゃんと業者がやってくれない。」と苦情を言われて困ったことがあります。この場合、ちゃんとしていないのは業者ではありません。

【日本のエレベーター・エスカレーターの現状】

日本のエレベーターのうち乗客用は、三菱、東芝、日立、オーチス、フジテックの5大メーカーが大半であり、エスカレーターも同様です。貨物用はこのほかに国内メーカーも提供しています。また、高層ビルや大型商業ビルの面積の広いエレベーターは「特注」品ですが、おおむね12階以下のものは汎用製品が使われています。

エレベーターはロープでつるされ(そうでない油圧式のものもあります。)、人が乗る重い金属の箱が移動しているので、一部の駆動部品やロープは摩耗しますので、安全な運航には定期的に交換が必要です。エスカレーターも同様で、歯車が摩耗していて逆向きに滑る、というようなことが海外の事故で報道されることがありますが、国内では各社がきちんと点検体制を整えているので、めったに起こりません。

この一部の部品交換の頻度は、使用頻度が高いほど、また老朽化が進むほどに高くなります。逆にいえば、さほど人が多く使わない、新しいエレベーターは部品交換の頻度が決して高くありません。この部品代を基本的にはほとんどすべて保守代に含む契約を「フルメンテナンス契約」といいます。部品代の多くは別に費用がかかるが、その分、月額の費用は安い契約を「POG契約」といいます。

POGはパーツ(ここでは消耗部品のこと)、オイル、グリスの略で、この3つは料金に含み、その他のものは別に料金がかかる、という契約です。一般には、老朽化していない機種ではPOG契約の方が安くなる確率が高いのですが、突発的に大きな修理費用が発生するリスクを抱えます。今まで見てきた限りでは、POG契約を選ばれている方のほうが多いように見受けられます。どちらを選ぶかは契約者が選ぶことができます。ただ、古いビルは少し慎重に考えた方がよいです。また、POG契約だったものをフルメンテナンス契約に変更することは通常はできません。

ちなみに25年ぐらいたつと、メーカーも保守部品の製造、保管を終了し、修繕必要個所も増えてくるため、リニューアルを勧められます。このリニューアル費用がまたずいぶんと高く、私もお客様から本当にこんなにかかるものなのか?という相談を何回も受けたことがあります。結論からいうとこれも費用を下げられます。

 

【サードパーティでも大丈夫】

エレベーターの保守点検は、日本ではまだ8割以上のオーナーが製造メーカーの系列の保守会社に保守を依頼しています。逆にいうと2割は、メーカー系以外で点検を実施しています。このメーカー系以外で点検を実施すると、多くの場合、メーカー系に依頼するよりも大きく費用が下がります。

メーカー系以外では部品調達に時間がかかるとか、図面が入手できない、とかいうことを一部メーカー系の営業が言って切り替えを阻止しようとした事例も見られますが、そのような「部品を売ってやらない」ということは違法とする判例があります。ただし、だからと言ってどこでもよいのか?というとそういうわけではなく、トラブルになりにくい保守会社、の条件というのがあります。今後検討する際にチェックポイントとなる項目として、ご紹介します。

1 主要メーカーの部品をきちんと自社のセンターでストックしているか?どの範囲までしているか?

2 エレベーター停止時などのコール対応体制がどのように整備されているか?不在時、最寄り拠点が出動済み時にどのような体制がとられるのか?

3 古い機種の部品や修理をどの範囲まで対応するか?あるいはリニューアル費用時にどのような対応してくれるのか?

もちろん、メーカー系であろうがなかろうが限界はあります。しかし、こうした点をきちんと説明できる保守会社ならば、メーカー系以外でも任せやすい、と思います。

私がよくご紹介する保守会社は最近上場されたのですが、パーツを自社でストックされ、他の保守会社への外販もしています。また、リニューアルについても自社でかなり安価で実施でき、その際、旧部品を回収し再整備することで、メーカー系の部品供給が終了した機種でも、メーカー系よりも長く保守対応ができる場合もあります。コールセンターや技術センターは私が自分で見学に行き確かめています。

値段は最安、ではないのですがこうした会社のほうがお客様にご案内しても安心してもらいやすく、POGの場合、メーカー系の半分ぐらいになることも多いのがこれまでの経験です。

ちなみに、いくつかの保守会社はエレベーター、エスカレーターの保守を請け負った際、ついでに、立体駐車場の保守も受けてくれる場合があります。マンションの管理組合での検討の場合は、これもチェックポイントかもしれません。サードパーティーで大丈夫なのか?ということを思われるかもしれませんが、実際問題は生じていません。これは以前ご説明したプリンタトナーと同じ構図です。メーカー系が高いのは、保守にかかる費用が高いからではありません。製品の開発や宣伝、あるいは管理費用が高いことの費用を保守運用でも回収していかないといけないからです。特注品でない限り、変更することを前提に検討を進めて問題ありません。

 

【災害時の話】

東日本大震災の時にも東日本のエレベーターが一斉に停止し、点検再稼働に長い時間がかかりました。ただし、最近の機種は振動を検知し、近くの階に止まってドアが開く機能が働くものが増えているので、何時間もエレベーター内に閉じ込められる、というケースは減っています。(古い機種はこの恐れがあります。)

これについて、「自分のところはメーカー系保守会社との約束で、地域内で最初に駆け付けてもらえる約束になっている。」と言われていた社長がおられましたが、それはたぶん営業マンの営業トークです。

考えてみれば当たり前のことなのですが、災害時には、対策の指揮と情報収集と発信の中心となる官公庁、それに負傷者の受け入れや災害弱者対応に当たる病院や公共施設の復旧が最優先されます。そうしなくては逆に大きな社会的非難を浴びてしまいます。

災害時についていえば、閉じ込めを防止する、閉じ込められたらどうするか、をあらかじめ対処する、というのが適切な対応です。

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