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経営者のための経理入門③~経営の「スピード」と「精度」~

経営者のための「経理入門」の3回目は、巷でよく言われる「経営速度」を上げるにはどうするか、というテーマです。

30人の壁

経営の基本は何ですか?と聞かれたら私は迷わず、「マーケティング」と答えます。マーケティング無き営業は不幸につながるデスマーチ、それが出来ない事業はやる価値はない。では、営業と経理どっちかを採用して2人で会社をやれと言われたら馬力のある営業を取ります。売って、お客様の声を聴けば製品を改良できるし、お金が入ればその社員を維持できます。最悪、経理なんて間違っていても、違法にならないよう税理士に相談すれば2人ぐらいの会社ならばなんとかしてくれます。経理なんて所詮そんな存在です。

でも、10人を超えて、30人、50人になって来ると様相は全く変わってきます。3人、30人、300人ぐらいのそれぞれに経営者の成長の壁があると私は思っています。(上の3つは、代表かNo2で経営したことがあるのですが、3000人はやったことがないのでわかりません。)この階段の段差に直面したとき、マーケティング、人事、営業などそれぞれの戦略面で大きな成長がないと、売らない人ばかりが増える、エラー・トラブルが多発する、何も決まらない・変わらない、という組織の病が発現し、資金繰りを傷める様を見てきました。

その個々の経営戦略の改善はそれぞれ進めなくてはならないのですが、それらを実施する際にどの場面でも問題になるのが、「変化のスピード」と「行動・情報の精度」が低くて、改善が効果を発揮する前からどんどん時代に置いて行かれる、あるいは変えたところからトラブルがまた起きてみんな疲弊してしまう、という現象です。弊社は、この「変化のスピード」と「行動の精度」を「経営の体幹」という言い方をします。ここがしっかりしていないと、どんなに個別の技術のトレーニングをしても、その精度が得られないのです。

「経営の体幹」と「レンズ効果」

では、どうすれば、その「経営の体幹」を鍛えることができるのでしょうか?

どうすれば改善できるか?は比較的簡単です。経営者や管理者が変化を積極的に起こし、それを評価に活用することや、数字や具体的成果物を定義しそれに基づき、短いサイクルで正確なチェックを行うこと、それを執念深く追及し、できる人間をあつめできない人間・サービスを排除していくしかないのです。しかし、それを実効性のあるものにするには、素早くて精度の高いデータ集計が営業でも、経理でも必要であり、さらにはそれを支えるデータの取得の基本ルールの徹底やフローの稼働速度の迅速性や判断基準の明確さなど、まさに「体幹」の強靭さが必要なのです。そして、これらは、それまで創業者の強力なリーダーシップのみで一定の事業規模まで到達した企業が直面する組織化の壁です。

ちなみにこれに関連してもう一つ私が良く言うことに、「管理者のレンズ効果」というのがあります。これは、個人の志向やそれまでの流れを、今後の重点目標に向けて「屈折」させて集中させることが管理者の役割である、ということを言っています。(弊社オリジナルで一般的呼称ではありません。)こちらも、どうすればそのパワーが生まれるのか?というと、別に権力でも人望でもなく、結局は「戦略を説明し理解させる力」と「データから取捨選択を高頻度で素早く実施する力」が源泉です。こちらは、「それはやるな」といわなければならないのでさらに難易度は高い。

つまり、言いたいことは、業務のフローを整理し、お金とデータの流れを滞留がなくスムーズにすることが、30人の壁を越えて中堅企業になっていくには重要だということです。そして、その体幹の中心にあるのは、経理=お金の流れのトラッキングの改善です。

このことは経理部にとっても、そして、事業部長にとっても苛烈な要求です。私自身がそうなのですが、金額が間違っていないかどうかを手続きの最後の最後まで確認したいし、確認するとやっぱり細かい修正する箇所がある。摘要一つにしても最後まで補充したくなる…お金を間違う、というのは本当に怖い気持ちでいっぱいで、できることなら慎重に慎重にやりたい、というのが普通の経理担当の感覚です。ところが、この経営の要求は、各アクションに対してきわめて短い時間で次に移行することを要求します。ノーチェックというわけにはいきませんが、データの精度やタイミングは出本の各事業が責任を分掌せざるを得ず、経理の責任ではない、という立場が必要になります。そのためには、事業部長は、営業部長ではなく、「数字の管理の責任者」でもあるということが要求されることになるのです。

多くの場合、最初はうまくいきません。必要なデータが欠落しますし、精度も怪しく、問い詰めると「部内の仕組みがうまく回っていない」という回答が返ってきます。そこで経営者に必要なのは、うまくいくように事業を再構築するよう事業部長に要求することであるし、そこに乗らないような仕組みの業務は最終的には会社として排除しなければならないということです。

そして、その改善を人任せにせず、不十分な間はなんとか力ずくでその不足をうめなければならない、それが成長企業の経理担当の現実なのです。そういう意味では、経理担当には強い精神的な靭性も要求されるし、コミュニケーション力も要求されます。

そのうえでいうならば、経理の改善は経理担当だけの問題ではなく、全社のデータ管理とフローの仕組みの問題です、第1回(こちら)で述べたように

「証拠」、「発生と実現」というような知識を知り、外部からの検証と信頼に耐えうる仕組みを作ることが事業部長にとっても共通の目標である必要があります。小さな会社の経理責任者はどうしても、1(自分)対多(ルールなき営業マン)の対立構造、責任の押し付け合いになり、収拾がつかない事態になりがちですが、この対立構造を併進的な進み方にするには、社長の「データ重視」姿勢を全社に明示していただく必要が欠かせません。そして、その先にあるのは、上場、あるいは大型融資などの信頼をベースにした資金提供、そして成長機会なのです。

しかし、一方で依然として、これほどまでにAI時代と言われるにもかかわらず…単純作業も膨大に発生しています。そして、セキュリティがどうの、という懸念は多少は残るものの、多くはシステムもデータストックもクラウド上に配置できることから、経理業務はオフィスでなくてもできる部分が増えつつあります。次回はこの辺を元に、どのように業務設計するか?というあたりについて触れていきたいと思います。

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