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「オヤジ 無理すんなよ」

半年ほど前から70手前のある経営者の方と時々お会いしています。何度かお会いしてお話しして、「あいつに頼みたい!」と思ってもらったら、具体的な話を始めるのが弊社の流儀です。

その方、都心でもう半世紀近く、あるビジネスをやられているのですが、その市場自体が激変してしまい先細っていて数年前からいろいろなものに手出ししては軽傷〜中傷を繰り返しておられます。私がお会いしたのもそんないくつかのビジネスが本当に大丈夫なのか?というチェックをしてほしい、と社長の右腕から言われて居酒屋ん回分でお受けしてしまったのです、というのは冗談で、その方は長く仕事をする中で多くの経営者人脈をお客様に抱えて、人柄の良さからいろんな相談事を持ち掛けられている、という魅力的な方でして、そういう方と継続的にいろんな相談ができるようにすることは自分の仕事にもメリットがある、と考えているからです。

 

今回、その社長が手を出したのは、半世紀やってこられた分野に関連するテーマの「スマホアプリ」。ただし、社長も携帯電話は使われていますが、メールでいろいろやり取りするとか、アプリを仕事に取り入れるとか、そんなこととはとんと縁がないのです。ただ、「そういう時代なのかな、そういったこともしていかないといけないのかな」「若い人を顧客にするには必要なのかな」という考えだったそうです。

昨夏に初めてそのお話を聞いたときには、私も20ページぐらいのパワーポイントで見た目のちゃんとした調査報告書を提出しまして、アプリを作ることではなく、ビジネスの仕組みを作ることが本題であること、そしてその仕組みがうまくいくかどうかは実はITとはあまり関係なく、リアルな販促や広告、あるいは確率論にまかされるインフルエンサーマーケティングなどの要素が絡むもので、小さく投資して小さく相応にリターンがある、ということが望めない世界になりつつある、大きく成功しようとすると資本の競争という要素が濃い。という報告をしたのですが、それでも社長は信ずるところがいくつか在られてその後、この事業に乗り出されました。

 

経営者のご判断でありますのでそれはそれで尊重するしかないですので、その他の件をいろいろとお話しする機会をもちつつこの件はその後数か月放置していました。ところが先週になり、再度この件を相談したい、とおっしゃるのでお伺いしてきました。私も実は、前回のような「立派な分析提案」をこの社長に提出したことを「この社長に自分ができる一番正しいことをした」のではなかった可能性がある、と反省しており、そのお話を思い切ってしてみようと思って伺いました。社長は、ここ1,2週間、私が出した当時の報告と、他の方が提出された構築予定のアプリの構想書を何度も何度も読まれたようで、以前と違って、双方の話の要点を理解されていました。

 

そのアプリがうまくいくかどうかは私にも断言できません。「どうせダメだろ」というのは簡単ですが、試行錯誤しつつも正解に近づくという努力をしようという協力者も社長にはいるのですから、それをバカにするようなことは経営の助言役としては不適切と思うのです。本当に社長がそこへ力をつぎ込む覚悟ならば、その販促に必要なネットワークを作るお手伝いをする下準備も少しはしていました。ただ、社長に申し上げたかったのは次のことです。

 

経営が芳しくないから、といって時代の最先端のものに取り組む、ということが本当にこの社長のやりたいこと、やれることなのだろうか?半世紀にわたって築き上げた信頼のネットワークに寄って立ちながら、電話でアポを取り、訪問して対面で説明する、またそのお客様からお客様を紹介してもらうという仕事の仕方が社長は一番自分で納得がいくのではないか?いつまでも私に助言を求めるのは、それは分析が欲しいのではなく、自分で納得がいっていないからではないか?

 

これは、ほぼこの通り、言ってみました。社長は、「ついつい業績が悪くなると、飛びつきたくなるんだよね」といいつつも、自分の手に負えないという本音を話されました。そして、社長に代わってこのプロジェクトを遂行し、キャッシュフローと収益に責任を持つ、という人もいない、ということも確認しました。私が社長に用意していた言葉は、「新しっぽさの時代はもう終わり。これからの数年は確からしさが光る時代」ということです。

 

もう一つ言わなければならないことがありました。

かつて(30年近く前)はこの会社は、今の20倍近い売上規模を誇っていた超好業績企業でした。その時代はこの会社にとって「楽して儲ける」ことができる時代でした。もう一回そういうことができる時が来るのではないか?と社長はずっとこの間思っていたのではないか?環境が変わっていることも、それに伴い変化速度が速まっていることも言われればわかっているのだが、それでも、楽しようとしているように私には感じられていました。それが年齢とか体力とかが原因であるならば、まずは自分で注意すべきだし、会社の在り方を、他社に譲る部分を作るとか、縮小させつつ安定させるとかも考える必要がある、ということです。

経営はどんな業種や業態であっても、とても神経と体力を消耗するものです。そして、オーナー系で後継者がいない場合、自覚しないままに「次の形」へ自分で着地させられないまま本来あるべき資産、信用まで失ってしまう、という事例を他にもいくつか見たことがあったからです。

 

年配の経営者にこの話をするのはなかなか大変です。また、一度そんな話をしたぐらいで、長く会社を支えてきた経営者の考えが変わるものでもありません。ただ、長く継続的にお話しする中で、「そういえばあいつ、金も払ってないのに、あんなこと真面目に言っていたな」ときっと思い出すときがあると思っています。

会社のデータを整理して、状況を分析し、体系だった改善策を立てて、それを遂行する。それが私たちの仕事であり、課金させていただき、成果を収める対象なので、私自身もそれが楽しくもあり、ついついEXCELやPowerPointで資料を作ることに着手しがちですが、本当に会社の方向を過たないための伴走、助太刀は実はそのかなり手前のこういうことが重要なのではないか?と帰り道に思った出来事でした。まあ、こんなやり方なので、数はあんまりこなせません。

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