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中小企業のための「リファラル採用」

昨年ぐらいまで4年ほど、経費削減のご提案を専門に行っておりました。最初のうちは「不景気だから、経費の見直しもしなきゃいけないねえ」と社長さんと意気投合できていたのですが、だんだんと状況が変わってきて、「採用ができない(中堅メーカー)」「バイト代が高騰(飲食チェーンさん)」という形で人件費に関連する悩みが顕著に増えてきました。中堅企業の経営課題の中心は、ここ2年程度明らかに、採用費用の高騰、そもそも採用ができない、ということに比重が大きくシフトしてきていると感じます。

 

【大手人材紹介会社は中小企業にマッチするのか?】

営業、企画などの社内の重要業務の補充では最近では多くの会社で採用メディアへの出稿を行っておられます。私自身もリクルート○○、パーソル(昔はインテリジェンス)、ビズリーチ、エンジャパン、そのほかに中堅どころの専門の人材紹介会社の何十人という方に過去20年にお会いしました。(半分以上は求職側なんですが)そして何十という求人票を記載し、面接もたくさんしてきて、メディア掲載料と採用成功フィー合わせて1千万円以上は払っていると思います。そして、実は20年にわたり、職務経歴書を作りこみ、1000以上の会社の求人票を見て面接をお願いする立場でもありました。しかし、採用する側も、される側もあまり実績が上がっていません。される側は今回は省きますが、なぜ、これらの採用メディアが中小企業の新規事業やコア業務ではあまりうまくいかないのか?は不幸な構造的問題があります。

 

まず、目を背けてはいけないのは力のある人ほど大企業、勢いのある有名新興企業を志向するという日本の現実です。

業界下位の会社、それも当たるか当たらないかわからない新規事業のポジションになんて優秀な人は応募してくれないのです。世の中の人は口では「魅力的な中小企業もある(実際ある)」「中小企業で裁量広く事業全体をグリップする経験を若いころにすることは力をつけるスピードをアップする(それもある)」と言いますが、実際、自分、あるいは自分の家族のことになれば、それが幻想といわれようが「大企業」「安定企業」を選ぶのです。「大企業が安泰」というのはたしかにそういうことが信じられる時代ではなくなりました。しかし、大企業と中小企業を平均値で比べては、それでも安定性も、営業の楽さも、賃金水準も大企業の方が遥かに上、社会の様々な評価も上というのも、みんな分かっています。

働く側の大企業信奉にはこんな現実も見ました。ある一部上場企業が事業再編に伴い、社員に連結外への転籍をお願いすることになり説明会を実施しました。中堅社員から多く出る要望があります。「住宅ローンの審査が下りるまで転籍ではなく、出向にしてほしい。審査自体や金利に響く。」

 

これに対し、いわゆる大企業や有名新興企業は、多くの会社が5名から多いときは十数名単位の中途採用を継続的にいろいろな部署で行っています。多数の求職者の登録を得ている人材紹介会社も最初に求職者側に求人票を送りそれに応募の意思があるかどうかを確認してから企業側に応募意思があるもののみが紹介が来る仕組みになっています。それでもこれら有名どころの求人ならば、求職者の応募意思も容易に得られます。そして、優秀な給与が高い人をこれらの支払い余力の高い会社に送り込むことで、雇用契約時の年収に応じた報酬が企業から彼らには支払われます。結果、優秀な求職者と大企業が順にマッチングされることになってしまい、大企業があまり手を伸ばさないような層に中小企業の求人票が送られるのです。

このように人材紹介会社経由の採用は大企業に向いた方法です。中小企業でも、掲載を申し込むともちろん喜んで掲載してくれます。ちゃんとしたエージェントの方がそれなりに求職者とのマッチングを行って求人票を求職者に送付してくれます。私も受け取る方も1000を超える数を受け取ってきました。それでも、上に述べたような理由で―もちろん彼らはそんなことは言ってくれませんがー希望するような魅力的な人材は、こちらに応募してくれないのです。この方法は中小企業はコストパフォーマンスが悪い方法です。

 

【ハローワークは無料だけど】

一方、ハローワークは無料で求人ができます。比較的簡易な仕事、一般的な仕事で、45歳以上でもよければ、この方法は良い選択肢になります。ただし、実際にはハローワークで若い質の良い層を採用するのは難しい。あえていうならば、都市部では「失業保険」という制度がありそれを受給するために登録しているのが若い層の大半(出産後にまじめに復帰しようとしている女性をハローワークが地道に支援している、という事実はあるので大変失礼な言い方ですが)。それ以外は、魅力的な職務経歴書を記載できない(それは経歴内容的に、あるいは文書作成能力的に)人、特にこうした自己アピールのトレーニングがないまま、スペックの低下に伴い会社からリリースされてしまった40代以上が行く場所になってしまっている、と言って大きくは外れていないでしょう。それは大手人材紹介会社のキャリアシートの内容と登録者の一生懸命なアピールぶり、それに対してハローワークの比較的簡易な欄と、それすらまともに記載できているものがほぼない、選ぶほどの情報量が得られない求職票をシステム上で見れば明らかです。厚生労働省から抗議がきそうですが、これが私が求人と求職の両方で各選択肢を多数回利用した結論です。

このブログをご覧の経営者の方が補充しようとしているのが割と単純・一般的な作業・事務作業で、十分な習熟指導と期間が設けられるならばハローワークも良いと思います。しかし、新規事業の中心になるような営業担当、あるいは企画担当、できれば即戦力と思うならばこの方法は成果に乏しいと思います。理由は上に記載した通りです。

 

【中小企業が本当に欲しい人材はどうやれば見つかるのか?】

そもそもハローワークに登録されているのは、制度上何等かの理由ですでに失業されている方です。そして、人材紹介会社に紹介してもらう人、というのも中小企業に紹介される多くのケースはすでに辞めている人です。後者は多くの会社で最初に求職者側に応募の意思があるかどうかを聞いて、OKならば会社側に人材資料が送られてくる仕組みのため、まだ辞める予定ではない、「いいところがあれば考えよう」という人はよほど魅力的なポジションでない限り、名も知れぬ中小企業への応募をOKしないのです。私が会ってきた中では、例えばコンビニチェーンの本社の地域指導の社員(すごく大変)、仕事についていけない(ノルマが大変すぎます)証券会社の30代営業マンなどが在職中の面接までこぎつけた数少ない例でした。

そして、退職してしまっていろいろ応募するが書類選考すらなかなか通らない人(私も実は何百とこの20年に応募してきて、書類選考に通ったのは10程度しかありません。これは私自身が労働者として直面した問題でもあります)が、「より地域や企業規模で広く考えてはいかがでしょうか?」とアドバイザーに促されて現実に対応しなければならないと観念した人の分が回ってきているのが中小企業への求職票です。

本当にこの層は社長さんの選びたい、会いたい層ですか?違いますよね。必ずしも大手でなくてもよいが、広い世界を知っていて今他社で主力として力を発揮しているような人に来てほしいですよね?そうだとしたら、今ある人材紹介の仕組みでは、なかなかいい人に巡り合えないのです。私はこの話を大手人材紹介会社の営業マン(女性でした)にしたことがあります。その時私は「大手」の子会社の代表でした。なかなか優秀な彼女は猛然と反論しました。

「会社の大小は関係ありません。魅力的な給与水準と、訴求力の強い仕事内容を記載すれば私たちも応援します!ご利用者様の目にも留まります!

その通りでしょう。別に人材会社が大企業を優遇しているわけでも、中小企業を食い物にしようとしているわけでもありません。でも、そのどちらもなかなかできないのが中小企業の現実であり、経営者はその現実に対処しなければならないのです。

 

さらに不都合な真実を言えば、こうして紹介会社経由で採用した人が、期待通りの性能を発揮するかというと、その確率は低い。もともと社風や教育など様々な障壁が転職にはあり全体としてもそのようなマッチ度の期待値はさほど高く持てない上に、明らかなハイパフォーマンス層は大手に取られているため、さらに平均値は下がっているからです。

 

【「リファラル」とは?】

さんざん悲観的なことを書いてきましたが、私は中小企業が戦略的な人員を採用するには、「リファラル採用」が一番成功率が高いと考えています。リファラル、とはまたものものしい言い方ですが難しい定義はさておき、簡単にいえば、「紹介」「縁故」採用です。つまり、社員や関係者に知っている人で自社に良さそうな人を紹介してもらう、ということです。

中小企業の悪口をいうつもりはなく、私はむしろ中小企業のきらりと光る技を応援したいと思ってこの仕事をしています。そういう頑張っている中小企業の社員の方は普段はそんなことは行ってくれず愚痴も言いますが本当はその会社が好きで、自分の言葉でいい点、魅力的な点を実はちゃんと語れるのです。時には会社の悪口を言っても、やっぱり「自分は当面はこの会社で頑張っていくつもり」と思っている人はちゃんと考えてくれています。社員が真面目に紹介してくれれば、人材紹介会社の担当者よりもよい会社の採用アピールをしてくれます。

また、人材紹介会社から送られている求職者の求職票や、社長や人事部との面接の際には、決して今の仕事の不満への本音は書いてあったり言ったりしませんが、親しい知人には結構言っているのです。たとえば、「遠くて大変だし子供小さいから近くにいい勤め先ないかなあ、と思っているんだよね」とか、「実績評価が強まっているんだけど、もっと落ちついた仕事の仕方を長期的な視点でしたいんだよね」ということです。その時、自分の会社が求人していること、そして紹介を制度として歓迎している、と分かっていれば、「うち、そのうち一部は結構当てはまっているけど会ってみます?」と言ってくれると、結構フィットしている状況が得られます。

もちろん、紹介の場合、紹介者は相手の仕事の実力、あるいは学力や体力の実情をかなりリアルに知っているわけです。飲み仲間としていい人でも仕事の同僚だと足引っ張るなあ、という人はもちろんいるわけですが、美辞麗句ばかりの職務経歴書とは違い、彼ら自身がそこでフィルタリングしてくれ、自社にプラスになるかどうかの基準をもって判断してくれますので、失敗確率も下げられます。

あるいは、親しい出入りの業者さんは、業界のことをよく知っているし、御社のいいところも(そして悪いところも)よく知っているはずです。「あの人がうちに来てくれたらいいのに」というのが実は取引業者さん、というケースは中小企業では多くあります。その人に「いい人を探しているんだ」と要件を伝えると、意外に「あそこに辞めたがっている人がいるんですよ」とか「人員削減とかがあって、辞めちゃったけどいい人いたんですよ。」という情報を知っていたりします。

もう一つ、社長さんご自身は、関心をもって話を聴いてくれる人がいたらその人を口説けるという自信が結構あるのではないでしょうか?自分の人生と資産を賭けて経営している社長が全力で話せば相当の迫力と説得力です。ならば紹介会社経由で説明してもらうとか、webサイトで掲載するとか、ではなく、ほしい人材に社長が直接会って「うちに来て」と食事でもしながら頼めばいいのではないでしょうか?

 

こういうことを組織的に、制度的にキチンと実施する。それがリファラル採用です。リファラルとは、縁故といえば、実力とは関係なく採用する悪いイメージがあるので、違う呼び名をしているだけです。でもこの方法は、あらかじめ中を知っている人がマッチしそうかどうかをフィルタリングしている、そして仕事の魅力を一番知っている人がそれを伝える、という点で人材紹介会社の中小企業の使い勝手の悪さを十分補うことができる方法です。

実はアメリカでは、ある大手IT企業では半数以上がリファラル採用、IT業界全体でも1/4程度がこの方法だそうです。優秀なエンジニアは自分と同程度の技量の持ち主を社交の中で知っていて、しかも必要な技術要素もわかっているので、マッチングしやすいのがその背景だと言われています。

 

【リファラル採用の実務】

リファラル採用は、人事担当が独自にやれるようなものではなく全社的な取り組みが必要です。具体的には社員紹介については次のような準備を行います。

  • 後ろめたい「縁故」ではなく、メリットをキチンと説明し面接審査を正規に行う「会社の制度」であり、社員の協力を得たいことをまず説明する。
  • 募集要項を社内公開し、またその狙い(補充なのか、戦略的拡大なのか?)を説明する。
  • 紹介してくれた方への採用後の謝礼を制度として決める。こうしなければ、人材紹介会社に数十万~百数十万円を払うのですから、社員にそれを一部還元してもよいはずです。(ある大手企業は役職者を採用した場合には最大50万円の謝礼を紹介者に支払っています。)
  • 内容に誤解がないように、そして「縁故」ではなく公開募集の一貫という立場を取るため(そのほうが社員もやりやすい)できれば、webに同じ内容を掲載する。そのほうが社員も説明しやすい。
  • 紹介後の面接、採用決定は縁故に関係なく、人事担当と採用予定部署の管理者の面接や適性検査など普通の採用選考であることを明確化する。(お断りする場合も、紹介者経由ではなく、人事担当経由できちんとお断りする。そのことを応募者にもキチンと面接の際に説明し、紹介者には結果のみ報告する)

付き合いのある業者さんの紹介については、その個人にお金を払うことは相手にも迷惑になる可能性があることですが、先ほどの社員の例でも数十万円の経費節減と同じ効果があるわけですので、それに見合う発注でお返しできれば一番よいわけです。

 

この方法には、もう一つ良い特徴があります。それは、紹介してくれた人が(紹介されて入った人よりも先に)辞めにくい、ということです。実はこれは中小企業にとってはとても大きいことです。おそらく「会社のために、この人がいたらいいな」と考えて、それを行動に移して、社長や人事担当に「こんな人いるんですけど」と言ってきてくれる人、というのはその会社にとって重要な役割を果たす可能性のある「会社のことを自分の問題として考えてくれる人」です。きちんとした説明、報酬があり、社内が正常である限り紹介してくれた人のロイヤリティもこの方法は高めてくれるのです。

 

【いい人を探している、と発信し続ける】

採用メディアや人材紹介会社は、掲載期間が決まっています。よくネットで検索すると「この会社の求人は掲載期間が終了しています。」という検索結果が出る会社がありますが、これは補充できたわけではなく、予算が少ししかなく途中で利用を終了したケースもたくさん含まれています。たぶん、中小企業に関してはそちらの方が多い。しかし、多くの中小企業では、営業や経営企画部門については数年単位でいい人がいたら補充する、という考えのところが多いと思います。これも期間でお金が決まる既存人材メディアがマッチしない理由の一つです。

中小企業に関しては、こうしたメディアにお金を払うことは「特定の魅力的なプロジェクトでの急ぎの採用」などに限定し、実は一番の営業マンである社長さんが、行く先々で「いい人いたら紹介してほしい」と(愚痴ではなく本気だとわかる形で)言い続ける。あるいは何かに露出する機会に、「いい人募集中」ということを入れる、というようなことをする方がよほど効果的だと思います。多くの中小企業は、一般の人には知られていなくても、地域や業界ではしっかりとしたネットワークを有しています。そのネットワークに発信し続ける方がよほど効果的だと私は考えています。

私も人材紹介会社の方からお付き合い先へのあっせんを依頼されることが多くありますが、このような考えから、それが適したプロジェクトだとクライアント様と合意できない限りは、まずはリファラルをやってみませんか?とクライアントにお話ししているケースが多くなっています。

 

それから…

リファラル採用で一番大事なのは、既存社員が会社を好き、給与はいまいちでも働きやすいいい会社、大きくないけどそれなりにしっかりした会社、と思ってくれている、ということです。

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