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アメーバ経営とコンサルタントの思い出

1997年~98年のこと、私がいた家電店では以前記載したPOS更新プロジェクトの進行の傍ら、私も出席する月1日の店長会議のあと、京セラ系のコンサルタント会社が訪問しての「アメーバ経営」の報告会が行われていました。

結果からすると、大失敗でした。組織崩壊を促進し、その3年後に訪れた死を促進する結果となりました。「コンサルタントってなんであんな偉そうなんだ」と普段は犬猿の仲だった白物家電出身の体格の良い二回り年上の大型店店長と(私は、PC関連のマーチャンダイザーだったので売り場の優先順位でいつも邪見にされていたのですが)意気投合してラーメン食べに行ったことだけが成果でした。

 

この仕事をしていると、「コンサルタントなんて俺信用していないから」と敵意をむき出しにする社長がかなりの割合います。「使えない書類を作ってきて、結局自分で作り直しだった」、と他社の文句を私に言う東北地方のある上場企業の社長さんになぜか謝ったこともあります。最近は、以前にもまして○○コンサルタントが世間に溢れかえっています。そして、私もその一人。どうしてこうなったのか?改めて振り返ってみました。

 

【アメーバ経営とは】

アメーバ経営は、京セラ(現名誉会長)、第二電電(現KDDIグループ)の創業者である稲森和夫氏の経営哲学を具体化したものです。5~6人の「小集団」での収益効率、そしてそれを達成するための行動についての目標と実績を明確化し、そして、そのギャップを常にグループ内で活発に討論し改善していこう、というコンセプトを中心とした一連の経営改善活動を行う会社を、単細胞生物のアメーバがそれぞれが成長しながらたくさん集まっている様子に例えてその名がついています。

 

何十人もの大きな組織になると、どうしてもおみこしにぶら下がり、自分が支えるという意識のない人が生まれてきてしまいます。それに対して、少ない人数で常に改善活動をすれば、そうした人はおたおたしてはいられない状況に置かれます。全員がおみこしを必死に担がないとおみこしは横倒しに倒れて落ちてしまいます。あるいは、人はそうした環境に置かれると自ら必死に考え成長したいと願うものであり、その結果組織も改善し、成長するはずである、という深い人間への信頼が稲盛イズムにはあります。アメーバ経営は多くの会社に取り入れられ改善を実現してきました。近いところでは、日本航空が会社更生法を申請し苦境に陥った時、稲盛氏が会長(現名誉会長)に就任し様々なことに取り組まれたその重要なパーツの一つがこの「小集団ごとの経営管理による全員参加の経営」でした。実は外部の目による経費削減という私のもう一つの専門分野もそこには重要な役割を果たしていましたので、これだけのおかげ、というわけではありませんが稲盛氏の指揮の元、見事JALは再生を果たしました。

 

稲盛氏は当時から名経営者といわれ、著作も多くありました。私もこの活動が始まったとき読みましたが、ちょうどそのころ、以前にも書いたいろいろなまずい出来事がその会社であり、「経営」というものに関心を持ち出したころで、そんな私にはとても勉強、いやむしろ感動した考え方でした。アメーバ経営については氏の信奉者を中心にあちこちで講演会、勉強会などを行われています。私が勤めていた会社の会長、社長も何かのご縁でその機会を得たようで、トップダウンである日突然導入が決まりました。

 

【コンサルタント現る】

月に1度の店長会議のあとが、その場でした。午後から夕方まで店長会議が行われた後、さらに夜9時、10時まで「指導」が行われました。その理論、コンセプトが事前に説明されたあと、3人のコンサルタントが前に座り、それを囲むように店長陣が方形に座り、我々MD陣はその後ろに控えていました。その3人のうち、40代の責任者が腕を組んで座り、それよりもだいぶ若い二人が助手役として付いている、という体制でした。

 

まず、会社全体を5~6人程度のグループ分けにするところから作業は始まりました。小型店だと社員は7人~10人程度、大型店では4フロア30人程度というお店が多く、フロアごとにだいたい商品群は、「白物」「AV」「情報家電」「ゲーム」などに分かれていました。そのため、大きなコーナーは2班、それ以外はそのコーナー単位で4~8人程度になればよいというように私は思っていたのですが、なぜかこの責任者が「5人」か「6人」にこだわるので、担当が一致しない班ができてしまうのです。担当商品が異なれば普段はその売り場をあまり見ることもありませんし、商品も客層も知らないので意見をいうバックグラウンドがないのです。なぜ、その「一定の大きさ」にそんなにこだわったのかはまったくもって不明でした。実際、アメーバ経営は、ある程度規模が相違しても比較できる、という特徴を持っています。

私は全然そうではないのですが、コンサルタントというのはこういう時に大勢の前で自分の正しさを信じ、大きな声でメリハリをつけながら朗々と語ることが正しいとされています。彼らもそうだったのですが、その「賢さ」はその場の店長陣にはまったく受け入れられていませんでした。むしろ逆効果だったといってもよいでしょう。しかも、時々、このコンサルタントが非常にヒステリックに「俺の言うことに黙って従え」的な威圧的な発言をするのです。

 

次に、アメーバ経営では「時間当たり利益」を最大化する、という目的関数をもって行われます。この「時間当たり」という概念を持ち込むことで、規模が相違する二つ以上の組織の収益性を比較できるようになり、効率を追求できるわけですが、当時のその会社では店舗別の収益計算は月次では行われていましたが、コーナー別、個人別では売上と粗利集計までしかされていませんでした。それでも、これを労働時間で割ることはそんなに大変なことではなさそうでした。しかし、地代家賃や電気代、あるいは伝票入力(当時はまだ仕入伝票を店舗で入力していた)するパートさんのコストのような各店の全店共通経費をこの店内の各アメーバに按分しなさい、ということを言われました。月次のだいたいの平均額を調査してそれをいったん固定してそれを人数按分し、確定額が出ればそれを置き換えする、ということをすればよいことは私にはわかりましたが、その辺から40代、50代の店長の反発が強くなってきました。

「店舗というのはそれぞれのコーナーが独立しているように見えて実はすべてつながっている。たとえば理美容用品は普段の売上は小さいのですが、ここに若い女性社員を配置しておくことは集客上必要はことであり、採算性だけで評価すべきことではない」「伸ばせというからPC関連に人員多く配置したのに、それで不採算とかいうのか?」などと反発するのですが、これは表面上のことです。実際には、「俺のシマに手を突っ込むな」だったのです。しかも、忙しいのに、そんな面倒な事させるな、といいますが、それも「そんなこと、僕できないもん」だったのです。

 

語弊がある言い方ですが、学校の数学や理科の成績がよい人はまず家電店に勤めませんし、そこで偉くなる人は粗利の多い白物家電をたくさん売って店舗の全店中の売上順位を上昇させた自分の腕でのし上がった人ですので、対人的にうまく感情を掴むことに長けている、それも主婦層に受け入れられるような人です。(本当はそれではいけないのですが)論理的思考力や集団への指導力がある人ではありません。店長は家電店勤務の最終ゴールであり、普段は最高権力者です。その人に「命令」という感じで指示するので、内容を理解しようとしないし、かりにしようとしてもできないわけです。

結果、だれも作業をやってこないので、指導責任者は今度は財務部に「指示」(依頼ではない)するのですが、財務部は3人しかおらず銀行対応を行う部署、伝票をめくる仕事は経理部だという。経理部も3人で月間数十万枚の仕入れ伝票と数十万円の売上伝票を仕分ける部署、営業経理というこの伝票を入力するパートさんばかり10人ほどいる部署もあるのですが、これらはみな短時間勤務のパンチャー、ということでプロジェクトが進まなくなってしまったのです。

その次の会議、たしか3か月目ぐらいの夜遅く、見かねてオブザーバー席にいた20代の私が、「各アメーバの粗利を所属人数で割った値でも評価はできるのではありませんか?どちみち電気代もパート代も地代も変えられないのですから」と言ったら、そのコンサルタントリーダーが今でいうところの「ぶち切れ」状態になり怒り怒鳴り、会議は終了しました。何に怒っているのかがよくわからないのですが、プラスかマイナスかを気にしないことよりもむしろ、「自分の言ったことに従わないことに怒っている」というだけ、とみなには受け取られていました。冒頭のラーメン屋の話は、この後の話です。

 

その翌月にもアメーバ会議は開かれていたのですが、私は出入り禁止になりました。毎日18時間勤務だったので、本当に助かりました。地下での会議が終わった後、先輩バイヤーが「ふうっ」と1階の商品部に戻ってきて、「終わった。来月以降ないっ」と多少の怒りをたたえて言いました。そして、月額1500万円のコンサルタント料を支払っていたアメーバ経営コンサルティングは年商200億円を超えながら数億円の赤字に転落していたその会社にさらに1億円近い赤字を増やし打ち切られました。その本来経営者しかしらない機密情報が財務部から商品部に流れているほど、このプロジェクトは社内で総すかんをくっていたということです。

 

【コンサルタントの問題】

この事例では、明らかにコンサルタントの能力に問題がありました。アメーバ経営のコンセプト自体に問題があったわけではなく、その多くの責任はこの40代の責任者のプロジェクト運営スキルの低さ、さらに言えばタバコが切れるとイライラしてきて受講者である顧客に当たり散らすような中毒患者であったことがそのほとんどの原因でした。

当時はそこまでわかっていませんでしたが、私も多くの会社の経営者に助言する立場となり、当時のその責任者と同じぐらいの年齢になり今では彼の動機と問題点がよくわかります。アメーバ経営はアメーバ別の収支採算の計算を行い、それを店内、各店間で比較し、優れたアメーバのやっていることを学び、あるいは計画との差異がどこに生じたのかを検討する、ということを行うわけですので、その収支採算表を早く作って、その次の検討会議を教えるところに進もう、としたのです。おそらく標準カリキュラムがそうなっていたのでしょう。しかし、彼が行き当たったのは、管理職の経営そのものに対する理解が不足していることや、計数情報が社内に不足していること、そして社内に計数をもとに行動を是正するという文化がない、皆がそれは私の仕事ではないという態度をとるということでした。でも、これって私も多くの会社の経営を見てきましたが、当たり前のようにあちこちにある現実だと思うのです。

内幕はわかりませんが、彼は直接か上司を通じてかはわかりませんが、その会社の経営者に「あなたが計数管理と予実管理の全社導入を宣言してください。」と訴えたことでしょう。でも、そんなことをする人だったら、こんな店長を選んでいないし、こんな財務部、経理部ではないでしょう。経営者は「稲盛イズム」に感動しただけで、アメーバ経営の実務を理解していたわけではないのです。

そのコンサルタント会社が最初にお金をとってやるべきことは、教科書通りのアメーバ採算表の作成を急ぐことではなく、数値管理のできる管理体制の整理と部門別生産性の比較によって何が得られるのか?を店長にイメージとして理解させることだったし、それをやると利益が伸びることを実感として分からせることだったと思うのです。当時の私もアメーバ経営が何かは理解していましたが、それをこの家電店に適用して成果が得られる、という感覚は全然ありませんでした。

 

【経営者の問題】

稲盛イズムに感動した家電店20店の経営者が、よく理解しないまま、総額2億円の発注を行いアメーバ経営を導入しようとした、というこの事件。経営者の自社への考え方がとても色濃く表れた行為でした。以前も記載しましたが、彼はよく「きちんとした接客を徹底すれば、店舗の周囲半径500メートルでシェア20%を獲得できる。そうすれば、年商400億は自然に実現できる」と言っていました。彼はきっと、アメーバの活動の中で、社員一人一人が「接客品質の向上」を謳ってくれることを期待していたのでしょう。

しかし、店舗の中のコーナー別の採算性はそもそも白物家電と情報家電では雲泥の差がありますし、経費を削ろうにも経費の大半が人件費とチラシでありシフトを維持する前提ではコントロール可能な経費は非常に限られていました。営業時間を短縮したり定休日を増やさないと経費は減らせないし、売り上げは短期的には、「チラシ回数」に依存し、長期的には、競合との距離、数によって大枠が決まっていました。

売上については、はっきりいうと、店舗は一度出店してしまうと、その場所でいくら売れるかは、ある程度のちゃんとした責任者、店員を配置するならば誰がやっても同じなのです。(もちろん、店を放置して訪販するような方法は考えられますし、一部の店長はその前からチャレンジしていました。)周辺人口と前面交通量と競合の位置と面積、価格水準、それにその会社が地域にどの程度の安さ、品ぞろえと思われているかでほとんど決まってしまいます。

私は、その時点でこの会社が1億円かけて入れるべき外部コンサルは、たとえちゃんとしたコンサルタントがアサインされていたとしてもアメーバ経営ではなく、むしろ広告アドバイザー的なものだったと思っています。あるいは何をやるべきかを分析し経営者と店長に説明するコンサルだったと思います。ただ、思い込んだオーナー経営者には何を言っても無駄だったのです。「アメーバ経営の指導」を代表が発注したのだから、依頼されたコンサルタントが(そもそもその会社はそれしか営業メニューがなかったわけですし)それをやらせることに必死になったのは仕方がなかったことかもしれません。

 

【成功事例】

この出来事から15年後ぐらいのち、この「小集団での利益追求の自律的活動」という理念が見事に実現している会社に出会いました。株式会社光通信です。光通信では通常10名以下(多くのオペレーターを抱えるような部門ではそれより多い場合もある)の比較的小さな収益単位部門で、かなりリアルな部門別の管理会計を行っています。これを毎週、あるいは2週に一度、実績と今後数か月(基本的には当期全部)の見通しを各部門の責任者が更新しています。この予算実績管理は、ただ単に、金額が上から売上、売上原価、人件費、その他経費…と並んでいるだけでなく、人数、それからそれらがどう動き、どのような確率で獲得がされるのか、といったKPIに分解された値などが組み込まれており、いわば、事業のシミュレーションの形となり、「事業のモデル化」が数値で落とされているものです。そして、それをベースに各部門内でもミーティングが行われ、部長、役員への報告も毎週~2週に1回程度行われ、その場で実施する内容が決まる、あるいは事業自体を継続するかどといううかもその場で即決される、という仕組みをすべての事業単位が行っています。その数数百。これを全社で運用しているのです。私も、この報告の準備にずっと緊張した日々を送っていました。同社では、「アメーバ経営」という言葉は一切使われていませんが、私が知る限り、アメーバ経営が最も高いレベルで実現している会社なのではないかと思います。

 

もちろん同社とて、そんな計数管理能力の高い人ばかりではない中で、これがどのような過程を経て実現を知るに至り、20年前の潰れた会社と年々最高益を更新し続ける会社との差がどこにあったのか?を痛感させ、忘れかけていたこの「事件」を思い出させてくれました。

詳細はお目に掛かった時にお話しするために取っておきたいと思いますが、一言でいえば、このような活動を実現するために必要なスキル、人的資源、教育や資格制度を総合的に整備することをいとわずやる経営者がいた、そしてそれをやる人材を重要視してきた、という「歴史」に尽きます。そういってしまうと身もふたもないのですが、こうした「企業文化」は、決して1年やそこらで高まる、あるいは変わるものではなく、経営者の強い意志と徹底する時間が必要である。そして、その意思と導入手法は一貫性がなければならないというのがこの二つの事例からわかることです。

 

私が、あの時点でもし、今のようなフリーな立場で請け負っていたら、「社長、オタクに必要なのこれじゃないと思いますよ」「今スグこれに着手する前にやらなくてはならないことがたくさんありますよ」と失注をものともせずに言わなければならない、ということをこれを書きながら改めて思った次第です。

 

 

 

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